甘美な百合には裏がある

ありきた

文字の大きさ
上 下
100 / 124

99話 先輩たちに甘えてもらいたい④

しおりを挟む
「入院が必要なぐらい痛めつけてもらえるかしら?」

「ごめんなさい、無理です」

 真里亜先輩からの要望を、私はすぐさま断った。

「残念だけど、仕方ないわね。悠理は慈愛と優しさの化身だから、断られる気がしてたわ」

 いや、過大評価にもほどがある。
 あの内容なら断って当然。たとえ愛する先輩の頼みだろうと、一考の余地すらない。

「あんまり困らせるのも悪いし、そうね……手加減をせず、背骨を砕くつもりで抱きしめてほしいわ」

「分かりました。全力で抱きしめさせてもらいます」

 私の腕力なら、たとえ本気を出してもたかが知れている。
 真里亜先輩の期待に応えられないかもしれないけど、万が一の事態を避けられるのなら、落胆された方がいくらかマシだ。
 私が了承すると、真里亜先輩は正座したまま自分の太ももをポンポンと叩く。ここに座って、という意味だろう。
閉じられた太ももをまたぐように立ち、ゆっくりと腰を落とす。

「お、重くないですか?」

「平気よ。もっと重い方が、あたし的には嬉しいわね」

 真里亜先輩の返答に、ホッと安堵する。

「それじゃあ、始めますね」

「改めて言うけど、手加減はダメよ。もし手加減したら、罰として胃の中身を全部吐き出すまで腹パンしてもらうわ」

 私が殴られるならともかく、真里亜先輩のお腹を殴るなんて絶対に嫌だ。
 要求通り、全力で抱きしめるとしよう。
 背中に腕を回して、ギュッと力を込める。

「んっ、はぁぁっ……この締め付けられる感覚……最っ、高っ……っ!」

 この体勢だと表情は見えないけど、言動と声色から、喜んでもらえていることは分かった。
 ぎゅうぅぅぅぅぅっ。
 力の限り、自分の中に取り込むぐらいの勢いで抱きしめる。
 真里亜先輩の温もりを鮮明に感じ、息をすれば彼女の放つ甘い芳香が脳へと届く。
 押し潰されて形を歪めるほどに密着した胸から、真里亜先輩の鼓動が伝わってくる。

「真里亜先輩、すごくドキドキしてますね。そんなに興奮してるんですか?」

「ふふっ、そうね。気持ちよすぎて下着がもう水浸しになってるわ」

 Sっ気を意識した言葉を投げてみたら、予想を遥かに上回る過激な発言が返ってきた。

***

 あれから数分ほど経過したあたりで、真里亜先輩は盛大に絶ちょ――もとい乙女の事情により、一旦退室した。
 ハプニングと言えばハプニングだけど、満足してもらえた証だと前向きに捉えよう。
 下着を穿き替えた真里亜先輩は和室に顔を出すや否や、紅茶を淹れると言ってキッチンへ向かった。
 残る私たちは座布団を片付けてから、リビングへと移る。

「うふふ❤ 悠理の耳掃除、本当に素晴らしかったわぁ❤」

「お尻枕も、すっごく癒されたよ~!」

「み、耳元で、好きって言ってもらうの、こ、心が温かくなった」

「全力の抱擁も最高によかったわよ。あれはドМじゃなくても満足できるわね」

 嬉々として感想を語る先輩たちを見て、私も自然と頬が緩む。

「喜んでもらえて嬉しいです。他にも私にしてほしいことがあったら、遠慮なく言ってくださいね」

「あらあら❤ それじゃあ、まずは今日みんながしてもらったことを一通りお願いしようかしら❤」

 姫歌先輩がそう言うと、葵先輩たちも意気揚々と賛成の声を上げた。
 もちろん、私としても望むところだ。
 少なからず時間を要するだろうけど、なにも問題ない。
 同じ家に住んでるんだし、いまは夏休み。時間ならたっぷりある。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...