甘美な百合には裏がある

ありきた

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87話 荷解き、そして再戦

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 刺激的な出来事によって、朝から予定されていた荷解きは数時間ほど遅れて始まった。
 真里亜先輩と姫歌先輩が作ってくれた昼食のおかげで、元気が無尽蔵に湧いてくる。
 みんなで二階に赴き、それぞれ実家から持ち込んだ段ボール箱を開封する。
 衣類は八畳部屋のクローゼットやタンスに仕舞い、勉強道具も同室の大きな本棚へ。
 勉強や各種作業は主にリビングで行うことになった。
 六畳部屋の片方は空っぽの状態だったので、軽く清掃してから防音材を取り付け、アリス先輩が収録を行える環境を整える。
 残った一室には棚がいくつかあったので、ぬいぐるみを飾ったり小物を収納したりといった用途で使う。
 しりとりや雑談をしながらも手を動かし続け、窓の外に見える景色を夕焼けが染め始めた頃に、荷解きが完了した。
 畳まれた段ボールが積み重なっているのを見て、そこはかとない達成感を覚える。

「思ったより早く片付いたわねぇ❤」

「そうだねっ、持って来る物を厳選して正解だったよ~」

「じ、時間もあるし、リビングでトランプとか、ど、どうかな?」

「いいじゃない。罰ゲームが楽しみだわ」

「今日は全勝させてもらいますよ」

 五人でぞろぞろとリビングに移動し、麦茶を飲んで一息つく。
 話し合いの結果、本日の種目は七並べに決まった。
 手軽かつ五人で遊べるので、私たちにとってトランプはスマホやパソコンに次ぐ必需品かもしれない。
 罰ゲームの内容は以前に部活でやったときと同じく、一位が最下位に好きなことを命令できる。

「うふふ❤ わたしが勝ったら、悠理に濃厚なキスをお願いしようかしら❤」

「それじゃ、あーしは悠理におっぱい揉んでもらおうかな~」

「あ、アリスは、悠理のおへそ、ぺ、ぺろぺろしたい」

「あたしは罵詈雑言を浴びせてほしいわ」

 提示された罰ゲームのうち四分の三がご褒美でしかない。
 まだ勝負の最中だけど、負けても悔しさより喜びの方が大きそうだ。
 真里亜先輩に関しては、要求が暴力じゃないだけマシと思うべきだろうか。

「まぁ、勝つのは私ですけどね。先輩たちには今朝のお返しとして、恥ずかしい目に遭ってもらいますよ」

 朝方に立てた誓いを思い出したのは、罰ゲームを四人から三回ずつ受け終わった後だった。
 それにしても、全勝すると宣言したのに、まさか一勝もできないとは……。
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