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61話 みんなと同時にする方法②
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名案が浮かんだと声高々に宣言した私に、先輩たちの視線が集まる。
「あらあら❤ これは期待できそう❤」
「お手並み拝見だね~」
「ゆ、悠理の、名案」
「気になるわね」
期待に満ちた眼差しに若干の緊張を覚えつつ、説明を始める。
「まず、私が辛い物を食べて唇をパンパンに腫らすんです」
第一段階を告げると、先輩たちの頭に疑問符が浮かんだ。
一見キスとは無関係なので、不思議に思うのも無理はない。
「そして、上唇の左右、下唇の左右に分かれて、四人同時にキスをしてもらうんです。かなり変則的ですけど、これなら一切の不平等なく、全員と同時にキスできます」
軽くドヤ顔になりつつ、反応を待つ。
いや、ちょっと待って。
冷静に考えてみると、恋人同士のキス――それもファーストキスという神聖な行為に対する冒涜なのでは?
それに、上下左右に分かれると言っても、角度や姿勢的に可能なのかどうか……。
自信を持って提案していい内容だったのか、いまさら不安になってきた。
先輩たちは驚きの表情で顔を見合わせ、なにやらアイコンタクトを交わしている。
「悠理、感服したわ❤ 場所を四分割してのキス……それなら確かに、全員が同時かつ平等に悠理とキスできるわねぇ❤」
姫歌先輩の言葉は先輩たちの総意であるらしく、葵先輩たちも深くうなずく。
加えて、敬意のこもった視線を向けられた。
崩れかけていた自信が復活したものの、ここまで好感触だと照れ臭くなってしまう。我ながら面倒な性分だ。
「ただ、一つだけ絶対に許せないところがあるの❤」
「ゆ、許せないところ、ですか?」
もしかすると、唇が触れ合う面積だろうか。
辛い物を食べるだけじゃなく、なんらかの刺激物で強制的に唇を腫れ上がらせる覚悟はできている。
それでも足りないと言われれば、別の解決策を探さなければならない。
四人全員を幸せにすると誓った以上、不可能を可能にするぐらいのことはやってのけないと。
「辛い物を食べて唇を腫らすなんて、そんなの認められないわ❤」
「……え?」
「うんうん! 悠理の気遣いは嬉しいけど、自分の体をもっと大事にしないとダメだよ!」
「だ、誰か一人を選ばなくていいって、言ったのは、あ、アリスたち、だから」
「細かいことは気にせず、キスの方法を閃いたことを誇りなさい」
先輩たちが口々に優しい言葉をかけてくれた。
ここで泣くと心配させてしまう。深く息をして、気持ちを落ち着かせる。
「あとは、相談しておくべき要素もあるわねぇ❤ 方法は悠理の案を採用させてもらうとして……」
「体勢を工夫する必要がありますよね」
「普通に立ったままでもやれないことはないだろうけど、ちょっと難しそうだよね~」
「ゆ、悠理に寝転んでもらって、四方から顔を寄せて、き、キスするのは、どうかな?」
「場所も大事よね。あたしは悠理の部屋がベストだと思うんだけど」
三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったもの。五人全員で話し合っていると、滞ることなく順調に話が進んでいく。
キスについてここまで綿密に相談するカップルは、滅多にいないんじゃないだろうか。
「うふふ❤ これで下準備は整ったわ❤」
「タイミングは運命に委ねるって感じだね~」
「た、楽しみ」
「一生忘れられないキスにするわよ」
「いまからもうドキドキしてきました」
方法から始まり、体勢や場所も決定した。
気持ちが大切ということで、時期に関しては特に触れていない。
私を含め全員が、初めてのキスを心待ちにしている。
待ち望んだその日は、そう遠くないうちに訪れるだろう。
「あらあら❤ これは期待できそう❤」
「お手並み拝見だね~」
「ゆ、悠理の、名案」
「気になるわね」
期待に満ちた眼差しに若干の緊張を覚えつつ、説明を始める。
「まず、私が辛い物を食べて唇をパンパンに腫らすんです」
第一段階を告げると、先輩たちの頭に疑問符が浮かんだ。
一見キスとは無関係なので、不思議に思うのも無理はない。
「そして、上唇の左右、下唇の左右に分かれて、四人同時にキスをしてもらうんです。かなり変則的ですけど、これなら一切の不平等なく、全員と同時にキスできます」
軽くドヤ顔になりつつ、反応を待つ。
いや、ちょっと待って。
冷静に考えてみると、恋人同士のキス――それもファーストキスという神聖な行為に対する冒涜なのでは?
それに、上下左右に分かれると言っても、角度や姿勢的に可能なのかどうか……。
自信を持って提案していい内容だったのか、いまさら不安になってきた。
先輩たちは驚きの表情で顔を見合わせ、なにやらアイコンタクトを交わしている。
「悠理、感服したわ❤ 場所を四分割してのキス……それなら確かに、全員が同時かつ平等に悠理とキスできるわねぇ❤」
姫歌先輩の言葉は先輩たちの総意であるらしく、葵先輩たちも深くうなずく。
加えて、敬意のこもった視線を向けられた。
崩れかけていた自信が復活したものの、ここまで好感触だと照れ臭くなってしまう。我ながら面倒な性分だ。
「ただ、一つだけ絶対に許せないところがあるの❤」
「ゆ、許せないところ、ですか?」
もしかすると、唇が触れ合う面積だろうか。
辛い物を食べるだけじゃなく、なんらかの刺激物で強制的に唇を腫れ上がらせる覚悟はできている。
それでも足りないと言われれば、別の解決策を探さなければならない。
四人全員を幸せにすると誓った以上、不可能を可能にするぐらいのことはやってのけないと。
「辛い物を食べて唇を腫らすなんて、そんなの認められないわ❤」
「……え?」
「うんうん! 悠理の気遣いは嬉しいけど、自分の体をもっと大事にしないとダメだよ!」
「だ、誰か一人を選ばなくていいって、言ったのは、あ、アリスたち、だから」
「細かいことは気にせず、キスの方法を閃いたことを誇りなさい」
先輩たちが口々に優しい言葉をかけてくれた。
ここで泣くと心配させてしまう。深く息をして、気持ちを落ち着かせる。
「あとは、相談しておくべき要素もあるわねぇ❤ 方法は悠理の案を採用させてもらうとして……」
「体勢を工夫する必要がありますよね」
「普通に立ったままでもやれないことはないだろうけど、ちょっと難しそうだよね~」
「ゆ、悠理に寝転んでもらって、四方から顔を寄せて、き、キスするのは、どうかな?」
「場所も大事よね。あたしは悠理の部屋がベストだと思うんだけど」
三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったもの。五人全員で話し合っていると、滞ることなく順調に話が進んでいく。
キスについてここまで綿密に相談するカップルは、滅多にいないんじゃないだろうか。
「うふふ❤ これで下準備は整ったわ❤」
「タイミングは運命に委ねるって感じだね~」
「た、楽しみ」
「一生忘れられないキスにするわよ」
「いまからもうドキドキしてきました」
方法から始まり、体勢や場所も決定した。
気持ちが大切ということで、時期に関しては特に触れていない。
私を含め全員が、初めてのキスを心待ちにしている。
待ち望んだその日は、そう遠くないうちに訪れるだろう。
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