甘美な百合には裏がある

ありきた

文字の大きさ
上 下
58 / 124

57話 お腹を触られているだけなのに

しおりを挟む
 最近、ちょっと太ってきたかもしれない。
 入学時の写真と鏡に映る自分を見比べても特に違いはないけど、お腹周りのぷにぷに感が増した気がする。
 これが幸せ太りというものなのか、はたまた真里亜先輩の作る料理やお菓子をバクバク食べた結果なのか。
 毎朝ジョギングしたり寝る前に軽めの筋トレをしたり、体型維持には最低限気を遣っているつもりだったんだけど……。
 一人で悩んでいても仕方がない。ここは一つ、部活の先輩であり恋人でもある四人に意見を求めてみよう。

「あの……私って最近太ってきたと思います?」

 視線をテーブルに落としつつ、みんなに問いかける。

「そんなことはないと思うけど……あ、いいことを思い付いたわ❤ 実際に見て確かめればいいんじゃないかしらぁ❤」

「一理あるね! 制服越しだとハッキリとは分からないし、生で見れば文字通り一目瞭然だもん!」

「あ、アリスも、そ、それがいいと、思う」

「あたしも同意見よ。というわけで悠理、その場でいいから立ってお腹を見せなさい」

 ちょっと訊ねただけなのに、流れるように話が進んでしまった。
 テーブルの下にいたアリス先輩も自分の席に戻り、四人とも私に注目している。
 先輩たちの時間を無駄に奪うのも申し訳ないので、言われるがままに立ち上がり、ブラウスのボタンに手をかける。

「ちょっと待って❤ ボタンを外すんじゃなくて、ブラウスをたくし上げるようにして見せてほしいわ❤」

「え? あ、はい」

 よく分からないけど、断る理由もない。
 ブラウスの裾を掴み、ブラがかろうじて隠れるぐらいの位置までめくる。
 周りが着席している中で一人だけ立ち上がり、服をたくし上げてお腹を露出。太っているかどうかの確認に過ぎないはずなのに、まるで自ら望んで肌を見せ付けているかのようだ。

「触ってもいいかしらぁ❤」

「は、はい、どうぞ」

 いつも問答無用でボディタッチされているせいか、こうして承認を求められると逆にいろいろと意識してしまう。
 四人が一斉に手を伸ばし、私のお腹をぺたぺたと触る。
 と、ここまではよかった。
 最初は手のひらでポンポンと優しく叩いて感触を確かめるような触り方だったのに、指先でなぞるような動きに変わる。
 姫歌先輩の白魚のように美しい指が、胸の真ん中からおへそ辺りまでをつつーっと這う。
 葵先輩たちも一ヶ所に留まらず、様々なところを突いたりなぞったりする。

「んぁっ」

 お腹を触られているだけなのに、変な声が漏れる。

「うふふ❤ これはもう少し触る必要がありそうねぇ❤」

「うんうん、ちゃんと確かめないとね!」

「こ、こことか、どう、かな」

「こっちもいいんじゃないかしら?」

太ったかどうかの確認作業だと自分に言い聞かせ、唇をキュッと噛み、連続して襲い来る電流にも似た快感に耐える。

「んっ、くぅ、ぅぁっ」

 平常心を保とうとしても無駄だと言うかのように、私の体は正直に反応する。
 この行為には卑猥な意味など微塵もない。気持ちよくなるなんて有り得ない。
 苦し紛れの自己暗示は、先輩たちがほんのちょっと指を動かすだけで効力を失う。
 胸がドキドキする。体の奥が熱い。
 これ以上は、もう――

「うん❤ 悠理は太ってないわ❤」

 姫歌先輩がそう言うと、みんなそろって指を離した。

「もっと触りたいけど、あんまりお腹を冷やしちゃダメだからね~」

 なるほど、確かに。気温が高いとはいえ、体を冷やしてはいけない。
 先輩たちの優しさに感謝しつつ、たくし上げていたブラウスを元に戻す。
 醜態を晒さずに済み、太っていないという太鼓判をもらえた。
 にもかかわらず、ちょっと残念というか、惜しい気持ちになってしまうのはなぜだろう。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...