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51話 体操服を借りた
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五限目に体育があることをすっかり失念していて、昼休みが始まってすぐ二年生の教室に行き、葵先輩に借り受ける。
四限目に使った直後らしく、「汗臭くてごめんね~」と謝られてしまった。こちらとしては持ち主より先に体操服を使うという引け目を感じなくて済むので、なにも問題はない。
それに、葵先輩の汗だったら喜んで――っと、さすがにそれ以上はダメだ。
「あ、夏見先輩に借りたんだ」
更衣室で着替えている最中。クラスで一番仲のいい友人が、胸に『夏見』と書かれた体操服に気付く。
「うん、昼休みの間にね。まだ他のクラスに友達いないから」
平然と受け答えしているように思えるけれど、私の心中はまるで穏やかじゃない。
昼休みを挟んだとはいえ、葵先輩がこれを脱いでからそれほど時間は経っていない。今日も変わらず蒸し暑く、汗をたっぷりと染み込んだ体操服はまだほんのり湿っている。
にもかかわらず、まったくもって嫌な気はしない。もちろん、汗臭いとも思わない。アリス先輩じゃないけど、体操服に残る香りに興奮すら覚えてしまう。
体操服を忘れたから、先輩に借りた。事実としては、ただそれだけ。なにもおかしなことはない。
「悠理、なんか顔赤くない? 保健室行く?」
「だ、大丈夫だよ、体育が楽しみすぎて興奮を隠し切れないだけだから。心配してくれてありがとう」
先輩の汗が染み込んだ体操服を着て興奮してる、なんて口が裂けても言えない。
……。
…………くんくん。
胸元を少し引っ張り、鼻を当てて大きく息を吸い込む。
ほんの出来心だった。特別な下心があったわけではなく、ちょっとした興味本位で嗅いだだけ。
その結果、私は授業に遅刻することとなる。
とても品のない話になってしまうけれど――トイレで発散しておかないと正気を保っていられないぐらい、ムラムラしてしまったわけだ。
反省はしているけど、後悔はしていない。
四限目に使った直後らしく、「汗臭くてごめんね~」と謝られてしまった。こちらとしては持ち主より先に体操服を使うという引け目を感じなくて済むので、なにも問題はない。
それに、葵先輩の汗だったら喜んで――っと、さすがにそれ以上はダメだ。
「あ、夏見先輩に借りたんだ」
更衣室で着替えている最中。クラスで一番仲のいい友人が、胸に『夏見』と書かれた体操服に気付く。
「うん、昼休みの間にね。まだ他のクラスに友達いないから」
平然と受け答えしているように思えるけれど、私の心中はまるで穏やかじゃない。
昼休みを挟んだとはいえ、葵先輩がこれを脱いでからそれほど時間は経っていない。今日も変わらず蒸し暑く、汗をたっぷりと染み込んだ体操服はまだほんのり湿っている。
にもかかわらず、まったくもって嫌な気はしない。もちろん、汗臭いとも思わない。アリス先輩じゃないけど、体操服に残る香りに興奮すら覚えてしまう。
体操服を忘れたから、先輩に借りた。事実としては、ただそれだけ。なにもおかしなことはない。
「悠理、なんか顔赤くない? 保健室行く?」
「だ、大丈夫だよ、体育が楽しみすぎて興奮を隠し切れないだけだから。心配してくれてありがとう」
先輩の汗が染み込んだ体操服を着て興奮してる、なんて口が裂けても言えない。
……。
…………くんくん。
胸元を少し引っ張り、鼻を当てて大きく息を吸い込む。
ほんの出来心だった。特別な下心があったわけではなく、ちょっとした興味本位で嗅いだだけ。
その結果、私は授業に遅刻することとなる。
とても品のない話になってしまうけれど――トイレで発散しておかないと正気を保っていられないぐらい、ムラムラしてしまったわけだ。
反省はしているけど、後悔はしていない。
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