甘美な百合には裏がある

ありきた

文字の大きさ
上 下
46 / 124

45話 徹夜明けの姿

しおりを挟む
 部活に顔を出すと、姫歌先輩がいつもの瞬間移動じみた登場ではなく、緩やかな動きで席を離れて私の元に歩み寄る。

「ゆうり、だいしゅきぃ❤」

 普段通りのかわいい声と色っぽい息遣いに、舌足らずな発音が追加されていた。
 よく見ると、表情もどこかおかしい。顔色からして熱はなさそうだけど、やたらと眠そうな目をしている。

「私も大好きですよ、姫歌先輩」

「えへへ、うれしぃ❤」

 んぐっ!?
 なにこのかわいい生き物!
 ふにゃっとした笑顔に心を鷲掴みにされ、心臓が激しく脈を打つ。
 気付けば無意識のうちに、姫歌先輩を思いっきり抱きしめていた。

***

 しばらくして、カバンを置いて席に着く。姫歌先輩も少し名残惜しそうにしながら、自席に腰を下ろした。
 大きく息をして心拍を整え、思考を落ち着ける。

「いや~、姫歌って徹夜明けに悠理と会ったらこうなるんだね~」

 私の胸を揉みながら、葵先輩が言う。
 なるほど、やけに眠そうだと思ったら徹夜明けだったのか。
 
「んぅ、ゆうりぃ❤」

 姫歌先輩は再びゆっくりとした動きで立ち上がり、私の背後に回る。
 そして、覆い被さるようにして抱き着き、肩にあごを乗せた。
 少し左を向けば、文字通り目と鼻の先に姫歌先輩の顔がある。
 きめ細かい肌や長い睫毛、大きく円い瞳にかわいらしい鼻、ぷるんっとした唇。顔を構成するすべての要素が可憐で美しい。

「にゅふふ❤」

 姫歌先輩はニコッと微笑み、私の頬に頬ずりをした。
 ハッキリ言って、この状況で理性を保てているのは我ながら称賛に値する。

「ぁむっ❤」

「っ!?」

 ほっぺた噛まれた!
 ちょっとムズムズするけど、甘噛みだから痛みはない。
 痛みはない、けど……。
 それ以上に、刺激が強すぎる!

「あむあむ❤ ちゅう~っ❤」

 歯を立てずに唇で挟むように頬をついばみ、不意打ち気味に吸引される。
 私は歯を食いしばり、太ももに乗せた拳を固く握った。幸福感と快楽が強すぎて、気を張り詰めていないと正気を失ってしまいそうだ。

「す、すごいわね、見てるだけでドキドキしてきたわ」

 真里亜先輩が顔を赤くしてつぶやく。
 さっきまで私の股間に顔を埋めていたアリス先輩も様子が気になったらしく、テーブルの下から出て来た。
 葵先輩は私と姫歌先輩を観察し、目にも留まらぬ速さでタブレットにペンを走らせる。相変わらず服は描いていない。
 先輩たちが見守る中、私は必死に己の本能を相手に死闘を繰り広げるのだった。

***

 姫歌先輩は始終あの調子で、私はひたすらドキドキさせられ続けた。昇天しそうなほど幸せだったけど、刺激が強すぎて心臓に悪い。
 みんなで姫歌先輩を家まで送り届けた後も、胸の高鳴りはしばらく収まらなかった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...