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24話 謎の討論会
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先日の葵先輩とアリス先輩の口論に着想を得たという姫歌先輩の提案により、今日は創作部の全員で討論会を繰り広げることになった。
私はどこからか運び込まれたホワイトボードの前に立ち、出された意見を書き込んでいく係を務める。
上の方に葵先輩の文字で『悠理にしてほしいことを話し合おう!』と大きく記されていて、なんとも恥ずかしい。
先輩たちは四人とも苗字に四季が入っているので、その順番で意見を出していくことに。
「寝袋の中で添い寝なんていいと思うの❤ ちょっと苦しいかもしれないけど、普通に隣で寝るより密着できていいんじゃないかしらぁ❤」
一番手である姫歌先輩が嬉々として語り、周りの三人が興味深そうにうなずく。
私は当事者でありながら他人事のように相槌を打ち、ホワイトボードに『寝袋の中で添い寝』と書いた。
大きめのサイズなら不可能ではないだろうけど、まず間違いなく一睡もできない。
普段声に出していないだけで、私は先輩たちが思っている以上に彼女たちのことを意識しているのだから。
四人のうち誰が相手であれ、興奮しすぎて鼻血が出てもおかしくはない。
「一緒にお風呂とかよくない? 向き合って触るのもいいし、自分の上に座ってもらうのも絶対気持ちいいよ~!」
一緒にお風呂、と。
想像しただけで胸が高鳴る。
「ゆ、悠理が脱いだ、服とか下着を集めて、その上に、ね、寝転がる」
みんな『その手があったか!』って感心してるけど、こればかりは共感できない。
でも、逆に先輩たちが脱いだ衣類の上に寝転がると考えれば……理性崩壊は確実といったところだろう。
「裸になってもらって、顔の上に座ってほしいわね」
申し訳なさすぎる。
心底不思議なことに、周りからは熱烈な支持を得ているようだけども。
***
次から次へと意見が出され、ホワイトボードの表面はすべて文字で埋まってしまった。
内容は私としても実現してほしいようなことから、正気を疑うほど特殊すぎることまで、まさに多種多様と言える。
信じられないことに四人ともまだまだ言い足りないらしく、ホワイトボードを裏返す。
「悠理の方からも、わたしたちにしてほしいことがあれば言ってほしいわぁ❤」
「え、いいんですか?」
不意に話を振られて問い返すと、四人とも快くうなずいてくれた。
ふむ、先輩たちにしてほしいこと、か……。
「そうですね、まずは――」
あまりに多すぎて全部言ったらドン引きされそうだから、控え目に述べさせてもらうとしよう。
十数分ぐらいなら、語り続けても大丈夫かな。
***
「――してもらいつつ頭を撫でてもらいたいですね。後ろからそっと抱きしめてもらうのも素敵ですし、勢いよく飛びつかれるのも捨てがたいです。ほっぺたをツンツンしてもらったり、あとは――」
***
「――から、腰に手を回してもらえれば言うことなしです。ご飯を食べるときに『あーん』ってしてもらうのはやっぱり憧れますよね。食事つながりでデザートの――」
***
「――ですし、どうしてもというわけではないですけどせっかくならお願いしたいところです。猫耳とかウサ耳を付けた姿も見たいですね。ただ拝めるだけでも充分に嬉しいんですけど、できれば撮影させ――んぇ?」
機材の故障だろうか。不意にチャイムが鳴り、中断を余儀なくされる。
まだ話したいことの一割にも達していないので、ムッとしてしまう。
最終下校時間まで優に二時間はあったはず……。
そう思って時計に目をやると、チャイムがきっちりと仕事していたのが分かった。
さっきまで真っ白だったホワイトボードの裏面は、私が発言と同時進行で書き記した文字で隅々まで埋め尽くされている。
なるほど、気付かないうちに相当熱中してしまっていたようだ。
まだまだ語り足りないけど、こればかりは仕方がない。
よく見ると先輩たちは少し驚いた様子なので、ドン引きされる前に終了できてよかったと考えるべきだろう。
「うふふ❤ 今日は参考になる意見もたくさん聞けたし、なにより悠理の本心を知れてすごく嬉しかったわぁ❤」
「うんうん! たまにはこうやって話し合うのもいいかもね~!」
「あ、アリスも、ま、また、やりたい」
「確かに、なかなか有意義な討論会だったわね」
「私も賛成です」
みんなの意見が一致して、今日の感想を楽しく話しながら部室を後にする。
私はどこからか運び込まれたホワイトボードの前に立ち、出された意見を書き込んでいく係を務める。
上の方に葵先輩の文字で『悠理にしてほしいことを話し合おう!』と大きく記されていて、なんとも恥ずかしい。
先輩たちは四人とも苗字に四季が入っているので、その順番で意見を出していくことに。
「寝袋の中で添い寝なんていいと思うの❤ ちょっと苦しいかもしれないけど、普通に隣で寝るより密着できていいんじゃないかしらぁ❤」
一番手である姫歌先輩が嬉々として語り、周りの三人が興味深そうにうなずく。
私は当事者でありながら他人事のように相槌を打ち、ホワイトボードに『寝袋の中で添い寝』と書いた。
大きめのサイズなら不可能ではないだろうけど、まず間違いなく一睡もできない。
普段声に出していないだけで、私は先輩たちが思っている以上に彼女たちのことを意識しているのだから。
四人のうち誰が相手であれ、興奮しすぎて鼻血が出てもおかしくはない。
「一緒にお風呂とかよくない? 向き合って触るのもいいし、自分の上に座ってもらうのも絶対気持ちいいよ~!」
一緒にお風呂、と。
想像しただけで胸が高鳴る。
「ゆ、悠理が脱いだ、服とか下着を集めて、その上に、ね、寝転がる」
みんな『その手があったか!』って感心してるけど、こればかりは共感できない。
でも、逆に先輩たちが脱いだ衣類の上に寝転がると考えれば……理性崩壊は確実といったところだろう。
「裸になってもらって、顔の上に座ってほしいわね」
申し訳なさすぎる。
心底不思議なことに、周りからは熱烈な支持を得ているようだけども。
***
次から次へと意見が出され、ホワイトボードの表面はすべて文字で埋まってしまった。
内容は私としても実現してほしいようなことから、正気を疑うほど特殊すぎることまで、まさに多種多様と言える。
信じられないことに四人ともまだまだ言い足りないらしく、ホワイトボードを裏返す。
「悠理の方からも、わたしたちにしてほしいことがあれば言ってほしいわぁ❤」
「え、いいんですか?」
不意に話を振られて問い返すと、四人とも快くうなずいてくれた。
ふむ、先輩たちにしてほしいこと、か……。
「そうですね、まずは――」
あまりに多すぎて全部言ったらドン引きされそうだから、控え目に述べさせてもらうとしよう。
十数分ぐらいなら、語り続けても大丈夫かな。
***
「――してもらいつつ頭を撫でてもらいたいですね。後ろからそっと抱きしめてもらうのも素敵ですし、勢いよく飛びつかれるのも捨てがたいです。ほっぺたをツンツンしてもらったり、あとは――」
***
「――から、腰に手を回してもらえれば言うことなしです。ご飯を食べるときに『あーん』ってしてもらうのはやっぱり憧れますよね。食事つながりでデザートの――」
***
「――ですし、どうしてもというわけではないですけどせっかくならお願いしたいところです。猫耳とかウサ耳を付けた姿も見たいですね。ただ拝めるだけでも充分に嬉しいんですけど、できれば撮影させ――んぇ?」
機材の故障だろうか。不意にチャイムが鳴り、中断を余儀なくされる。
まだ話したいことの一割にも達していないので、ムッとしてしまう。
最終下校時間まで優に二時間はあったはず……。
そう思って時計に目をやると、チャイムがきっちりと仕事していたのが分かった。
さっきまで真っ白だったホワイトボードの裏面は、私が発言と同時進行で書き記した文字で隅々まで埋め尽くされている。
なるほど、気付かないうちに相当熱中してしまっていたようだ。
まだまだ語り足りないけど、こればかりは仕方がない。
よく見ると先輩たちは少し驚いた様子なので、ドン引きされる前に終了できてよかったと考えるべきだろう。
「うふふ❤ 今日は参考になる意見もたくさん聞けたし、なにより悠理の本心を知れてすごく嬉しかったわぁ❤」
「うんうん! たまにはこうやって話し合うのもいいかもね~!」
「あ、アリスも、ま、また、やりたい」
「確かに、なかなか有意義な討論会だったわね」
「私も賛成です」
みんなの意見が一致して、今日の感想を楽しく話しながら部室を後にする。
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