甘美な百合には裏がある

ありきた

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15話 下ネタについて

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「ふと思ったんですけど、先輩たちって意外と下ネタを言わないですよね」

 部活中、不意に浮かんだことを口にする。
 部外者には知られていないとはいえ、創作部の面々が生粋の変態であることは明白。
 変態さの度合いに対して、下ネタが控え目な気がする。
 思い立ったらすぐ行動しているから、言葉に出す必要がないのだろうか。

「し、下ネタって、は、恥ずかしい」

 テーブルの下から、弱々しい返答が聞こえてくる。
 確かにアリス先輩の雰囲気や見た目の印象を考えれば違和感のない意見だけど、スカートの中で鼻息を荒くしながら言われると説得力の欠片もない。

「たまにポロッと出ちゃうぐらいがちょうどいいよね~。悠理のおっぱいも、同じぐらいの頻度でポロッと出しちゃってよ!」

 明朗闊達な性格によって紛れがちだけど、下ネタを発する頻度が最も高いのは葵先輩かもしれない。

「制服を着てるんですから、ポロッと出ることはまずありえませんよ」

 わざと見せようとしない限り、偶発的に胸が晒されるようなことは起こり得ないはずだ。

「悠理に下品な言葉で罵られながら首を絞められるのも気持ちよさそうね。ちょっと試しにやってみなさいよ」

「嫌ですよ。テレビで見た裏ワザ感覚でとんでもないこと頼まないでください」

 真里亜先輩の言動は下ネタとはまた違う気がするけど、それ以上の危険性を孕んでいる。
 ちなみに、今日彼女が持参してくれた自家製のぬか漬けは熱いお茶によく合う。女子高生らしくないと言われようとも、味わい深く食感のいいきゅうりに向かう箸は誰にも止められない。

「そもそも、下ネタって定義が曖昧よねぇ❤」

「言われてみれば、そうですね」

 姫歌先輩は息遣いが艶めかしすぎてどんな言葉もエッチな感じに聞こえてしまう……なんてことは、失礼なのでとても口には出せない。
 なまじ声質が幼めでかわいらしいから、色っぽさとのギャップがなんとも言えず蠱惑的だ。
 あまり広げる話題でもないため、下ネタについての話はこれで終わった。

***

 最終下校時間が迫り、帰り支度をしているときのこと。
 これはちょっとした懺悔。
 下ネタの件、実は個人的な趣味嗜好で話を切り出した。
 とても人に言えることじゃないから誰にも口外してないけど、私はかわいい女の子がエッチな言葉を発することに尋常じゃない魅力を感じてしまう。
 性癖というほど強いこだわりがあるわけでもなく、その場に居合わせられればラッキー程度のことなんだけど。
 先輩たちが下ネタを口にするのを、密かに期待していたりする。
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