私がガチなのは内緒である

ありきた

文字の大きさ
上 下
117 / 121
4章 高校最初の夏休み

30話 パジャマパーティー

しおりを挟む
 最寄りのバス停に着く頃には、すっかり陽が落ちていた。
 爽やかなそよ風を浴びながら、街灯に照らされた道を歩く。
 家に着いて手洗いうがいを済ませたら、ひとまずリビングに腰を下ろす。

「お風呂は二人ずつでいいよね?」

 先ほど給湯ボタンを押したので、しばらくしたら入浴できる。
 私と萌恵ちゃんはここに越して来てから――付き合う前から一緒に入っていたけど、美咲ちゃんと芽衣ちゃんは違う。
 だから念のため、事前に確かめておくことにした。

「い、いいわよね、美咲?」

「は、はい、大丈夫です」

 二人は互いを一瞥してから、コクリとうなずく。
 恋人との入浴を強く意識していることが明白で、初々しい反応が非常にかわいい。
 写真を見ながら話しているうちに給湯が完了し、まずは私たちが先に入ることになった。
 着替えとして持って行くのは普段のベビードールではなく、以前に愛用していたパジャマ。いくら仲のいい友達とはいえ、あんなスケスケの服を着た姿を晒すわけにはいかない。
 おそろいのベビードールを身にまとうのは、萌恵ちゃんと二人きりのときだけだ。

「明日は筋肉痛かなぁ」

「そうなったら、またマッサージしてあげるよ~」

 前にマッサージしてもらったときは、二重の意味で気持ちよかった。
筋肉痛になるのも悪くないかもしれない。

「ありがとう。お返しに、私もマッサージしてあげるね」

「やった~!」

 私の技量は粗末なものだけど、萌恵ちゃんは純粋に喜んでくれている。それがたまらなく嬉しい。
 脱衣を済ませてタオルを持ち、浴室へ移る。
 扉を閉めるや否や、タオルを風呂蓋に置いて向き合い、唇を重ねた。
 今日はおはようのキスを含めても十数回しかキスしていないので、何気に欲求不満だったりする。
 お互いに相手の背中に手を回してギュッと抱きしめ、肌の温もりを伝え合う。

「萌恵ちゃん、萌恵ちゃんっ」

「んっ、真菜っ、真菜ぁ」

 短めで終わらせるつもりだったけど、いざ始めてしまうと止められない。
 口の端からだらしなく唾液が垂れるのも気にせず、一心不乱にキスをする。
 キスのわずかな合間に、愛情を込めて名前を呼ぶ。
 胸を押し付け、脚を絡め、可能な限り密着する。
 満足するまで楽しんだ後も、髪や体を洗いっこしたり、湯船の中で触り合ったり、ひたすらイチャイチャを堪能した。

「お待たせ。二人もゆっくり愛し合っ――じゃなくて、温まってきてね」

 リビングに戻って二人に声をかけたら、思わず口を滑らせてしまった。
 美咲ちゃんと芽衣ちゃんにも、お風呂でのイチャイチャをぜひとも楽しんでほしい。
 二人が脱衣所に入るのを見届けてから、萌恵ちゃんと一緒に晩ごはんの支度をするためキッチンへ。
 とは言っても、私にできるのはサポートぐらいだけども。

***

 約一時間後。テーブルの上には、炊き立てのご飯、熱々のお味噌汁、ピーマンの肉詰め、野菜炒め、ほうれんそうのお浸しが居並び、食欲を思いっきり刺激してくる。
「いただきます」と声を合わせ、萌恵ちゃんお手製の品々に舌鼓を打つ。
 萌恵ちゃんの手料理を初めて味わった二人は、あまりのおいしさに驚いてグルメ漫画のようなリアクションを披露してくれた。
 食べ終わった後はみんなで分担して片付けを行い、リビングで談笑したりトランプやゲームをして盛り上がる。
 夜が更けてきたところで、いつも私たちが使っている布団と予備の布団を並べて敷く。
 順番に歯を磨いたら、電気を消して布団に潜る。
 仲よしグループでのお泊りで、カップルが二組。話題が恋愛方面に偏るのは、必然と言っても過言ではない。
 ちょっとしたのろけ話から始まり、徐々に踏み込んだ内容へと移っていった。
 朝まで続いてもおかしくないほどに恋バナが弾んだものの、思いのほか疲れが溜まっていたらしく、日付が変わって少しした辺りで美咲ちゃんと芽衣ちゃんが寝息を立て始める。
 私もそろそろ、意識がぼんやりしてきた。
 大きなあくびを漏らすと、それにつられて萌恵ちゃんもあくびをする。

「萌恵ちゃん、おやすみ」

「おやすみ~」

 ちゅっ、ちゅっと何度かキスをしてから、私たちも眠りに就いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...