私がガチなのは内緒である

ありきた

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4章 高校最初の夏休み

29話 ビーチでのんびり③

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 日焼け止めを塗ってすぐ、四人で波打ち際に移動する。
 近くにクラゲがいないのを確認してから、足首から下を海に浸けてみた。
 砂浜で熱された足が冷やされて気持ちいい。
 海に入らずとも全身がずぶ濡れになるぐらい水をかけ合った後は、レンタルしたビーチボールを使って遊ぶ。
 日射病に気を付けて休憩を小まめに挟み、水分補給も欠かさない。
 昼過ぎまで遊んでいるとさすがにお腹が空いてきたので、そろそろお昼ごはんにしようということに。
 貴重品を入れたポーチを持って、海の家へ向かう。

「う~ん、どれにしよう。焼きそばもいいし、カレーとラーメンも食べたいな~」

 萌恵ちゃんがメニュー表を見ながら悩ましそうに唸っている。
 ちなみに、美咲ちゃんと芽衣ちゃんは焼きそばに即決していた。二人とも海の家で食事するのは初めてで、一度海の家の焼きそばを食べてみたかったらしい。

「萌恵ちゃん、よかったら私と半分こする?」

「いいのっ? 真菜ありがと~! それじゃあ、焼きそばとカレーにする!」

「あれ? ラーメンは?」

「食べすぎて動けなくなるのも嫌だし、ラーメンは我慢するよ~」

 確かに、半分ことはいえ二人で三品は多いかもしれない。
 というわけで、私たちは焼きそばとカレーを注文してから席に着く。

「想像以上においしいわねっ」

「いままで食べた焼きそばの中で一番おいしいですっ」

 隣同士に座る美咲ちゃんと芽衣ちゃんが、顔を見合わせて感激の声を漏らす。
 友達が喜んでいる姿を見ていると、私が作ったわけじゃないのに嬉しくなる。

「萌恵ちゃん、あーん」

「あ~んっ」

 スプーンでカレーとライスをほどよい配分ですくい、萌恵ちゃんの口に運ぶ。

「ん~っ、おいしい! 真菜もはい、あ~んっ」

 萌恵ちゃんの笑顔を眺めつつ、私も「あーん」とカレーを一口いただく。
 海の家の料理は当たり外れが激しいという話をよく耳にするけど、このお店は間違いなく大当たりだ。
 続いて食べた焼きそばも、濃厚なソースが麺によく絡み、シャキシャキした野菜の食感が素晴らしい。芽衣ちゃんと美咲ちゃんが感激するのも納得のおいしさ。
 食器を返却するついでに、氷水で満たされたクーラーボックスに浸かる瓶ラムネを購入。
 海の家で潮風に吹かれながら、キンキンに冷えたラムネを飲む。私の語彙力ではこの感動を的確に言い表すことはできないけど、ただ一言、最高だと叫びたい。
 昼食後は砂浜をのんびりと散歩したり、砂でお城を作ろうとしたのに山ができたり。汗だくになるほど動き回った午前中とは打って変わって、穏やかな時間を過ごした。
 夕焼けでオレンジに染まる海を眺めながら帰り支度をして、パラソルを返却するついでにシャワーを浴びて更衣室で着替える。
 駅までバスに揺られ、電車に乗って地元へと帰る。

「泳げなくても充分に楽しめたね」

「うんっ、すっごく楽しかった~!」

「写真もたくさん撮ったし、いい思い出になったわ」

「本当に、来てよかったです」

 一生記憶に残ると断言できるぐらい、素敵な一日になった。
 とはいえ、まだ終わりではない。
 今日はこの後、美咲ちゃんと芽衣ちゃんがうちに泊まる予定だ。
 ひたすら遊び倒したことによる体の疲労感はもちろんあるけど、パジャマパーティーへの期待と高揚感が私たちを元気にしてくれる。
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