私がガチなのは内緒である

ありきた

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4章 高校最初の夏休み

20話 Wデート①

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 今日は待ちに待ったWデート。
 バスで隣町まで移動し、待ち合わせ場所である駅前に向かう。

「水族館、楽しみだね~!」

 バスから降りてすぐ、萌恵ちゃんが私の腕にそっと自分の腕を絡めてきた。
 付き合う前から慣れ親しんだ行為なのに、キスと同じく色褪せない高揚感を与えてくれる。
 満面の笑みを浮かべる萌恵ちゃんに、私も笑顔でうなずき返す。
 できることなら横顔だけじゃなく正面からも眺めたいけど、歩きながらだと危ないし周囲への迷惑にもなるので我慢しよう。

「はぐれると大変だから、今日はずっと腕を組んでいようね」

 食事やトイレは別として、可能な限り萌恵ちゃんと密着していたい。

「うんっ、賛成! もし離れちゃったら、罰として思いっきりぎゅ~って抱きしめちゃうよ!」

「それはご褒美以外の何物でもないよ」

 なんてことを話しつつ歩いていると、別の方向から駅前に近付く美咲ちゃんと芽衣ちゃんの姿を捉えた。
 二人も私たちに気付き、あいさつ代わりに手を振る。
 待ち合わせ場所にまったく同じタイミングで着いたので、合流すると同時に駅前を後にする。
 今回の目的地は、市営の小さな水族館。ここから道路沿いに半時間ほど歩いた場所にあり、実家からそう遠くないこともあって小さい頃はよく連れて行ってもらった。

「真菜と萌恵って、本当にお似合いのカップルよね。一緒にいるのが様になってるというか、特別な関係なんだって一目で分かるわ」

「んふふっ、そんなに褒められると照れちゃうよ~」

「お、お似合い……特別な関係……うぇへへ」

 芽衣ちゃんが何気なく発した言葉に、萌恵ちゃんと私は喜びを露にする。
 筆舌に尽くしがたいほどの喜びが抑えきれず、自分でも分かるほど声も表情も緩んでしまう。
 私と萌恵ちゃんは世界一ラブラブなカップルであると自負して――というより私の中ではすでに常識なんだけど、誰かにお似合いだと言ってもらえるのは、やっぱり嬉しい。

「芽衣ちゃんと美咲ちゃんもお似合いだよ。遠くから見ても、まさに絵になるって感じだったもん」

 お世辞ではなく、素直にそう思った。
 仲睦まじく手をつなぐ姿からは、恋人同士にしか出せない雰囲気が溢れ出ている。

「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいですっ」

 美咲ちゃんは明るく声を弾ませ、芽衣ちゃんにそっと寄り添った。
 二人の柔らかな笑顔を見て、幸せのお裾分けをしてもらったような気分になる。
 水族館に着く前から、すでに満足感で胸がいっぱいだ。
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