私がガチなのは内緒である

ありきた

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4章 高校最初の夏休み

6話 今日も朝から幸せ

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 今日、先に目を覚ましたのは私だった。

「萌恵ちゃん、おはよう」

 まずは隣で眠る恋人に、言葉でのあいさつを投げかける。
 すぐさま顔を寄せ、ぷるんとした桜色の唇に優しくキスを落とす。

「ん……まにゃ」

 うっすらとまぶたを上げた萌恵ちゃんが、呂律の回らない状態で私の名前を呼んでくれた。
 なにも特別なことじゃないはずなのに、好きな人から名前を呼ばれるというのは、それだけで心が満たされる。

「おはよ~」

 萌恵ちゃんは寝ぼけながらも私の体を抱き寄せ、流れるように本日二度目のキスが行われた。
 夏用の薄い掛布団の内側から、萌恵ちゃんの匂いがふわっと漂う。鼻孔を通り抜けて脳へと伝わり、天然の媚薬として私の体を発情させる。

「大好き、愛してるよ」

 私の方からも背中に腕を回して抱きしめつつ、これまで数え切れないほど伝えた愛の言葉を口にする。

「んふふっ、あたしも~。真菜大好きっ」

 好きな人に面と向かって好きだと言えるばかりか、相手からも同様の気持ちをぶつけてもらえる。これほど嬉しいことはない。

「いつも思うけど、真菜ってすごくいい匂いだよね~」

 萌恵ちゃんが私の首筋に鼻を近付け、軽く息を吸いながら明るく言い放った。

「あ、ありがとう。でも、萌恵ちゃんの方が何兆倍もいい匂いだよ」

「いやいや、それを言うなら真菜の方が――」

「ううん、萌恵ちゃんの方が――」

 以降、十数分に渡って同じやり取りが繰り返された。白熱するあまり滲んだ汗が雫となって布団に滴り落ちたあたりで、このままだと永遠に終わらないと気付く。

「そろそろ起きようか」

「うん、そうしよ~」

 意見が一致したことで、額の汗を拭いつつ上体を起こす。
 布団を片付けて諸々の支度を済ませ、散歩に出かける。
 現時点ですでに汗をかいているので、歩き始める前からシャワーを浴びるのが待ち遠しい。
 大好きな萌恵ちゃんと一緒に迎える、平和な朝。
 今日も朝から幸せだ。
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