私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

29話 無自覚な誘惑

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 休み時間が始まると、教室内の人口はあっという間に半減する。
 私は自席を離れず、前の席の萌恵ちゃんと談笑を楽しむ。イスごと後ろを向いてもらうだけで簡単に対面して話せるので、この席順を実現してくれる自分たちの苗字には感謝せずにいられない。
 萌恵ちゃんは谷間が見えるぐらい胸元を開けて手で風を送っているので、ついつい視線がそちらに向いてしまう。
 目を見て話すよう心がけていても、気を抜けば谷間を凝視している。失礼だと分かっているのに、本能に抗えない。
 もちろん本人に誘惑する意思はなく、単に蒸し暑さを和らげているだけ。頭では分かってるんだけど、萌恵ちゃんが不意に見せる無防備な姿は私の理性への破壊力が強すぎる。
 少し前屈みになって萌恵ちゃんとの距離を縮めると、うっすらと汗ばんでいるにもかかわらず甘い匂いが鼻孔をくすぐった。

「窓から入ってくる風って気持ちいいよね~」

 教室も廊下も窓が開け放たれているので、吹き込む風が夏の熱気を少し和らげてくれる。
 萌恵ちゃんの谷間に一粒の雫となった汗が滑り落ちるのが見え、思わずゴクリとのどを鳴らす。
 二人きりだったら、すぐにでも服を脱がせて汗を舐め――じゃなくて、タオルで拭いてあげるのに。
 一人で勝手に欲情しているのが恥ずかしくなって、ごまかすように咳払いを挟む。

「うん、扇風機とかクーラーの方が涼しいけど、自然の風の方が好きかも」

 そう返すと、萌恵ちゃんはニッと笑って「だよね!」と声を弾ませた。
 アパートにもクーラーはあるけど、よほどの猛暑でなければ使わないと決めている。
 場合によっては、涼むために下着姿で過ごしたりすることもあるかもしれない。
 そしてそのまま、熱く激しく布団で愛の営みに励んだりして。
 健康に過ごすために清潔感を保つよう気を付けてはいるものの、汗だくのまま肌を重ねるのも私は大好きだ。
 ……断じてそんな話題じゃなかったのに、当然のごとくえっちなことを考えてしまう。

***

 始業時間が近付くにつれて、退室していたクラスメイトが続々と戻ってくる。
 萌恵ちゃんの胸元はすでに制服によって隠されているものの、大玉スイカのような爆乳は服越しに見ても迫力が凄まじい。
 それはそれとして、さすがに暑いから髪を結んでおこう。
 横に置いているバッグを漁り、ヘアゴムを取り出して口に咥え、両手で髪を持ち上げる。
 長時間続けると頭が痛くなるけど、ポニーテールにするだけで多少なりとも蒸し暑さが和らぐ。
 正面に向き直ると、萌恵ちゃんが顔を真っ赤にして唇をキュッと結んでいた。
 休み時間はまだ少し残っているから後ろを向いたままなのはいいとして、この短時間でなにか起きたのだろうか。

「萌恵ちゃん、どうしたの?」

「え……あっ、ううん、なんでもない!」

「本当に? 顔赤いけど、具合悪いなら我慢せず保健室に行った方がいいよ?」

 真剣に心配していると、萌恵ちゃんは若干言いよどんだ後、気まずそうに口を開いた。

「実は、その……真菜の横顔とか、髪を結んでる仕草とか、なんでもないことのはずなのに、ドキッとしちゃって……つい、見惚れちゃった」

 照れ臭さを隠すように口元を手で覆い、珍しく気弱な声を漏らす。
 それに反し、私は願ってもない最高の感想を貰って大いに心を躍らせた。
 始業のチャイムが鳴って会話は中断されてしまったけど、いつになく上機嫌で授業に臨める。
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