私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

23話 キスが彩る一日

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 朝のふとした閃きから、今日は一日中ひたすらキスすることになった。
 休日だからこそ実行できる試みだけど、予想では日没を待つことなく終わる。
 さすがの私たちでも、キスだけで何時間も続くわけがない。

「ん、ちゅ……」

 おはようのキスをしてから萌恵ちゃんに提案を告げ、布団を出る前にさっそく本日二度目のキス。
 ちなみに、萌恵ちゃんの反応は嬉々とした快諾。内容が内容なだけに断れるかもと思ったけど、天才の発想とまで絶賛されてしまった。
 休日の日課である散歩を控えているので、短めに済ませて布団を出る。
 着替えたり顔を洗ったりする際にも、隙を見付けては唇を重ねた。

***

 散歩を終えて家に着くと、玄関で靴を脱ぐ前に抱き合いながらキス。
 外にいた時間は決して長くなく、家を出る前にも散々したはずなのに、お互いに我慢の限界とばかりに熱中する。
 思い返せば、雲一つない快晴の下で爽やかな汗を流しながらも、心の中では常に萌恵ちゃんとのキスを意識していた。
 靴を脱いで家に上がった後は水分補給をして、シャワーでサッと汗を流す。
 冷蔵庫から飲み物を取り出すときも、脱衣所で服を脱ぐ前も、浴室に入る前も、シャワーを浴びる最中も、体を拭くときでさえ、キスのチャンスを見逃さない。
 運動してシャワーも浴びてすっかり体が目覚めたところで、私は洗濯、萌恵ちゃんは朝食の準備を始める。
 すでに合計一時間以上も萌恵ちゃんの唇を味わっておいて欲張りだとは思うけど、一人で作業していると切なさで胸が苦しくなり、余韻を確かめるように指で唇をなぞってしまう。
 いざ食事が始まると、「いただきます」と声をそろえた直後に口付けを行う。
 行儀が悪いと分かりつつ、お互いに口移しで食べさせ合ったりして。

***

 一通りやることを済ませ、リビングでくつろぐ。
 想像以上にキスをする機会に恵まれたとはいえ、この時間こそが本番と言える。
 ジッと見つめ合って手を握り、指を絡ませて徐々に顔を近付けていく。
 ゆっくりと唇を重ねると、二人の間で小さな水音が鳴った。
 乾燥知らずのぷるんとした唇は、柔らかくて温かい。単純な感触だけでなく、気持ちまで伝わってくるようだ。
 同じタイミングで口を軽く開いたかと思えば、我先にと相手の口腔に舌を挿入する。
 二人きりだから誰に憚ることなく、上品とは呼べない粘着質な音を奏でながら舌を動かす。
 貪欲なまでに唾液をかき集め、よく味わってからゴクリと飲み込む。
 萌恵ちゃんの熱い吐息は信じられないほど甘くて、油断しなくても快楽に酔わされてしまう。

***

 夕方には終わっているだろうという予想は、大外れもいいとこだった。
 ついさっき日付が変わり、外はもう真っ暗。
 消灯して布団に入ってからも、依然としてキスは続いている。
 一日だけで累計何時間キスしただろう。
 唇の感覚がマヒするぐらい接吻を繰り返したにもかかわらず、萌恵ちゃんのこととなると驚くほど鋭敏に感じ取れる。
 常識で考えれば過剰なまでにキスしたのに、飽きたり慣れたりすることは断じてなく、むしろ欲求が強まる一方だ。
 幸せに包まれ満ち足りた気持ちになりながらも、はしたないほどに萌恵ちゃんを求める。

「萌恵、ちゃん……好きっ、んぅっ」

「あたし、だって……ちゅるっ、大好きっ」

 自分の想いを疑ったことなんて一度もないけど、つくづく私は萌恵ちゃんが大好きなんだと、改めて思い知った。
 同じように強い愛情をひしひしと感じながら、眠気も忘れてキスに没頭する。
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