私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

13話 大人げない嫉妬

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 土曜の夕方。とある事情から、夜まで萌恵ちゃんのいとこを預かることに。
 朝方に連絡が来て、ついさっき親御さんに連れられて我が家に来た。
 名前は碧葉あおばちゃんで、小学三年生。実家で暮らしているとき、萌恵ちゃんの家で遊んでいる際に何度か顔を合わせたことがある。ツインテールがよく似合うかわいい女の子だ。
 私にも気を許してくれていて、無邪気な笑顔はどことなく萌恵ちゃんに似た印象を感じさせる。

「おねーちゃん、おっぱいおっきい!」

 萌恵ちゃんの膝に座る碧葉ちゃんが、大きくて丸い瞳を爛々と輝かせた。向かい合うような体勢であり、萌恵ちゃんは後ろに倒れてしまわないよう背中を手で支えている。
 そしてあろうことか、碧葉ちゃんは私たちよりも一回り以上小さな手を伸ばし、大胆不敵としか言いようのない行動に及ぶ。

「こらこら、くすぐったいよ~」

 萌恵ちゃんの豊満な胸に手のひらをあてがい、上下左右に動かす。続け様にぺちぺちと叩き、両方の乳房が不規則にぷるるんっと揺れる。

「あはは、碧葉ちゃんは萌恵ちゃんの胸に興味津々だね」

「おねーちゃんのおっぱい、おかーさんよりおっきいの! すごいよね!」

「うん、私もすごいと思う。でもね、あんまり触っちゃダメだよ?」

「わかった~!」

「碧葉ちゃんは偉いね。よしよし」

 私は死力を尽くして平静を装い、碧葉ちゃんの頭を優しく撫でる。
 当たり前だけど、敵意や憎悪は微塵もない。できることなら碧葉ちゃんのことをもっとたくさんかわいがってあげたいし、なんなら妹になってほしいぐらいだ。
 ただ、精神が壊れそうなほどの嫉妬は否めない。
 たとえ相手が子どもだとしても、私以外の誰かが萌恵ちゃんの胸を触るなんて耐えられない!
 うぅ、私も萌恵ちゃんに甘えたい。ギュッて抱きしめてもらって、優しく微笑んでもらって、たくさん触れ合って愛し合いたい!
 あぁぁああっ、萌恵ちゃん萌恵ちゃん萌恵ちゃん!

「ま、真菜、顔が引きつってるけど大丈夫?」

「え、そうかな? 全然いつも通りだけど?」

 しまった。萌恵ちゃんに心配をかけてしまった。
 落ち着け私。明鏡止水の体現者となれ。

「えへへ~、おっぱいふかふかだ~っ」

「――っ!?」

 ま、まさか、そんな……っ。
 胸に顔を埋め、押し付けるように頬ずりするなんて……なんて羨ましい!
 私だって経験はある。しかも服越し、下着越し、素肌に直接の全パターンを味わった。だけど羨ましい!

「あ、碧葉ちゃんは、イタズラっ子だね」

 ギリギリと歯を食いしばり、唇を噛みしめ、なんとか笑顔を維持する。
 純粋に微笑ましい光景として受け入れられない、己の矮小さが恨めしい。

「まなおねーちゃんも、きっとおっきくなるよ! あおばときょうそうだね!」

「競争かぁ……よーし、負けないぞ」

 私はすでに成長の可能性を感じられない自分の胸を一瞥してから、すでに兆しが現れ始めている碧葉ちゃんの胸部を見やる。
 数年後にはもう、勝負にすらならないだろう。
 結果が見えている戦いだとしても、人生の先輩として情けない姿は晒せない。私は敗北を悟った素振りなどわずかも見せず、あくまで対等なライバルとして奮闘を誓った。
 それに、もしかしたら奇跡が起きて私も萌恵ちゃんレベルの爆乳に――いや、それは無理か。

***

 本を読んだりゲームをしたり、暗くなる前に三人で散歩をしたり。私たちは文句なく楽しいひとときを過ごした。
 夕飯はきのこカレーとサラダ。碧葉ちゃんは好き嫌いがないらしく、苦い野菜もおいしそうにパクパクと食べる。
 口の端に付いたカレーをティッシュで拭いてあげると、母性に目覚めてしまいそうな愛らしい笑顔で「ありがとうっ」と声を弾ませた。
 食後は萌恵ちゃんが食器を洗っている間、碧葉ちゃんの要望でお馬さんごっこに興じる。
 四つん這いになって背中に乗ってもらい、運動音痴ながらも意地と根性で手足を動かす。
 碧葉ちゃんは一休みする際に私の太ももに頭を預けて寝転び、嬉しそうな笑みを浮かべてお礼の言葉をかけてくれた。
 食後の運動にしてはハードだったけど、頑張った甲斐がある。
 お風呂も一緒に入るつもりで話を進めていると、不意にインターホンが鳴らされた。
 予定より早く用事が終わったらしい。碧葉ちゃんは少し名残惜しそうにしながらも、お母さんの手を握って我が家を後にする。
 帰る間際に「またあそんでね~!」と言われ、私は迷わず快諾。
 碧葉ちゃんの姿が見えなくなると、胸が締め付けられるような寂しさに襲われた。
 一緒にいたのは、たったの四時間ほど。もっと遊びたかったな。

「私って、本当に大人げないね。あんないい子に嫉妬しちゃうなんて……」

 いつも通り二人きりの空間と化したリビングで、ポツリと漏らす。
 碧葉ちゃんには、悪意はもちろんいやらしい気持ちなんて微塵もなかったはずだ。仲のいい身内とのコミュニケーションに過ぎないのに、いちいち羨み、妬んでしまった。

「う~ん……真菜、こっち来て」

 萌恵ちゃんに呼ばれ、テーブルを挟んで対面していたのを、隣に移動する。
 すると、背中に手を回され、優しく抱きしめられた。

「も、萌恵ちゃん?」

「あたしも同罪だから、気にしなくていいよ~。真菜が碧葉ちゃんと触れ合ってるとき、ズルいな~って思っちゃったもん」

「そうだったんだ……」

 自分の嫉妬を隠すのに必死で気付かなかった。

「それと、先に謝っておくね――あたし、もう我慢できそうにない!」

 どういうことかと訊ねようとしても、言葉を発せられなかった。
 萌恵ちゃんに唇を塞がれ、有無を言わさず舌が侵入してきたからだ。
 二人の舌が絡み合う。粘着質な水音と互いの喘ぎが、静寂を許さない。
 背中に回された腕の力が強まり、二人の間で萌恵ちゃんの胸が押し潰され、形を変える。
 下唇を甘噛みされ、お返しとばかりに口をすぼめて舌を吸引する。
 本来なら今頃入浴していたことだろう。
 心から熱中しているとき、時間の概念は意識から完全に消える。
 私たちがシャワーを浴びたのは、日付が変わって朝日が昇った後だった。
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