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3章 一線を越えても止まらない
7話 伝わる鼓動
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休日の日課である早朝散歩の最中に、うっかり足をくじいてしまった。
歩けないほどではないけど、ズキズキと鈍い痛みが走る。
そんなとき、萌恵ちゃんが家までおんぶすると申し出てくれた。
さすがに申し訳ないからと断る間もなく、軽々と背負われてしまう。
「お、重くない? 頑張れば歩けるから、つらくなったらすぐに言ってね?」
「真菜は軽いから平気だよ~」
飄々と返事をしながら、スタスタと前に進んでいく。
運動が大得意なのは知っていたけど、こうして恩恵を受けると改めて実感させられる。
「萌恵ちゃん、いい匂い……」
首筋の近くで深く息を吸い、その芳香で肺を満たす。
全人類に教えてあげたい。でも、やっぱり独り占めしたい。
「あ、汗かいてるから、あんまり嗅ぐと気分が悪くなっちゃうよ!」
「そんなことない。むしろ鼻が幸せを訴えてる」
どんなに素晴らしい匂いなのか自覚していないのは、もはや一種の罪だと言っても過言ではない。
「はむっ……ちゅっ、ちゅる……っ」
萌恵ちゃんは私だけの大切な恋人。
誰にも渡さないという意思を示すように首筋を甘噛みし、音を立てて吸う。
「ひぁんっ! ま、真菜ぁ、そ、外でこんな……んっ、ダメだよぉっ」
艶やかな吐息が漏れ、私の太ももにあてがわれた指の力がわずかに強まる。
まんざらでもなさそうな様子ではあるけど、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
名残惜しく思いつつも口を離し、お詫びの代わりにキスをした。
帰ったら口にもしたいなぁ、なんてことを考えたりして。
「萌恵ちゃんって首弱い?」
「特別弱いってことはないけど、いまはほら、真菜が背中に密着してるから……」
どういうことだろう。
私が密着していることがどう関係しているのか分からず、頭に疑問符が浮かぶ。
「あたしだって、真菜の体でえっちな気分になるんだよ? こんなにくっついてる状態で不意打ちされたら、首筋じゃなかったとしても、いつも以上に感じちゃうよ」
「ぁう……ご、ごめんね、もう少し気を付ける」
萌恵ちゃんに言われたことが嬉しくて、ちょっとだけ恥ずかしくて、小声で謝る。
自分の体に魅力があるなんて一度も思ったことないけど、大好きな人にこんなことを言われて喜ばないわけがない。
走った後みたいに、心臓が早鐘を打つ。
こんなにドキドキしているなんて知られたくないけど、それは無理だろう。
だって、萌恵ちゃんの背中からも、さっきより速くなった鼓動が伝わってくるのだから。
歩けないほどではないけど、ズキズキと鈍い痛みが走る。
そんなとき、萌恵ちゃんが家までおんぶすると申し出てくれた。
さすがに申し訳ないからと断る間もなく、軽々と背負われてしまう。
「お、重くない? 頑張れば歩けるから、つらくなったらすぐに言ってね?」
「真菜は軽いから平気だよ~」
飄々と返事をしながら、スタスタと前に進んでいく。
運動が大得意なのは知っていたけど、こうして恩恵を受けると改めて実感させられる。
「萌恵ちゃん、いい匂い……」
首筋の近くで深く息を吸い、その芳香で肺を満たす。
全人類に教えてあげたい。でも、やっぱり独り占めしたい。
「あ、汗かいてるから、あんまり嗅ぐと気分が悪くなっちゃうよ!」
「そんなことない。むしろ鼻が幸せを訴えてる」
どんなに素晴らしい匂いなのか自覚していないのは、もはや一種の罪だと言っても過言ではない。
「はむっ……ちゅっ、ちゅる……っ」
萌恵ちゃんは私だけの大切な恋人。
誰にも渡さないという意思を示すように首筋を甘噛みし、音を立てて吸う。
「ひぁんっ! ま、真菜ぁ、そ、外でこんな……んっ、ダメだよぉっ」
艶やかな吐息が漏れ、私の太ももにあてがわれた指の力がわずかに強まる。
まんざらでもなさそうな様子ではあるけど、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
名残惜しく思いつつも口を離し、お詫びの代わりにキスをした。
帰ったら口にもしたいなぁ、なんてことを考えたりして。
「萌恵ちゃんって首弱い?」
「特別弱いってことはないけど、いまはほら、真菜が背中に密着してるから……」
どういうことだろう。
私が密着していることがどう関係しているのか分からず、頭に疑問符が浮かぶ。
「あたしだって、真菜の体でえっちな気分になるんだよ? こんなにくっついてる状態で不意打ちされたら、首筋じゃなかったとしても、いつも以上に感じちゃうよ」
「ぁう……ご、ごめんね、もう少し気を付ける」
萌恵ちゃんに言われたことが嬉しくて、ちょっとだけ恥ずかしくて、小声で謝る。
自分の体に魅力があるなんて一度も思ったことないけど、大好きな人にこんなことを言われて喜ばないわけがない。
走った後みたいに、心臓が早鐘を打つ。
こんなにドキドキしているなんて知られたくないけど、それは無理だろう。
だって、萌恵ちゃんの背中からも、さっきより速くなった鼓動が伝わってくるのだから。
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