私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

5話 図書室でこっそり

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 ある日の放課後、私たちは課題のため図書室に赴いた。
 テーブルの最奥に並んで座り、資料を広げる。
 真面目に手を動かし、作業は順調に進む。
 そんな中、ふと魔が差してしまった。

「……ねぇ、萌恵ちゃん」

 近くに人はいないけど、もちろん二人きりというわけではない。
 迷惑をかけないように声を抑えて呼びかける。

「ん、どうしたの?」

 萌恵ちゃんは手を止め、私の方を向いて小首を傾げた。
 髪がふわっと揺れていい匂いが漂ってきたことは言うまでもなく、私が激しく興奮するのも当然というもの。

「誰にも気付かれないように、イチャイチャしてみたい」

 付き合っているからこそ浮かんだ欲求。
 以前は頭の中で自己完結させるしかなかったけど、いまなら萌恵ちゃんの同意さえ得られれば実現できる。

「お~、いいね。なんかワクワクする」

 やった!
 ど、どうしよう。テーブルの下でえっち――いやいや、いくらなんでも突飛すぎるし、最悪の場合は萌恵ちゃんの裸を私以外に見られてしまう。
 落ち着け、落ち着くんだ。
 下着を脱いでお互いに嗅ぐとか? うーん、嬉しいのは私だけだからダメ。
 どんなことがいいかな。
 頬にキスなんて、さすがに大胆――

「ちゅっ」

「!?」

 考えていたことを不意打ちで行われ、心臓が飛び跳ねる。
 大声を上げそうになったけど、両手で口を塞ぐことでかろうじて阻止できた。

「ほらほら、次は真菜の番だよ~」

 萌恵ちゃんが自分の頬を指差し、静かに声を弾ませる。
 念のために周囲を確認してから、私はほのかに赤らんだ瑞々しい肌にキスを落とす。
 ひゃーっ、やっちゃった! 見られていないとはいえ、他に人がいる状況でほっぺにちゅーしちゃった!
 心臓がドキドキしてる。顔が熱い。
 嬉しさとか幸せな気分だけじゃなくて、達成感に似たなにかが胸の奥から込み上げてくる。

「んふふっ、ありがと」

 ただでさえ胸の高鳴りがすごいのに、天使の微笑みを見せられて理性が弾け飛びそうだ。

「も、萌恵ちゃん、どうしよう……私、我慢できそうにない」

「じゃあ、次は唇同士でしてみる?」

 今度は悪魔の誘惑が私を襲う。
 いくらなんでも……いや、でも、こんなの抗えるわけがない。

「うん、したい」

「それじゃあ――」

 さっきより念入りに辺りを見回してから、緊張感と高揚感を胸に、お互いに相手の方を向いて唇を近寄せる。
 突然のハプニングに邪魔されないかという不安は、小さく発せられた艶めかしい水音によって消し去られた。
 不用意に音を立てないよう気を付けつつ、最大限にキスを堪能する。
 いつもより短めに終えたものの、集中していたせいか不完全燃焼という感じはしない。
 ちょっとばかり刺激が強すぎるけど、たまにはこういった趣向もいいものだ。
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