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3章 一線を越えても止まらない
4話 いかんともしがたい
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とある週末。今日の夕飯は餃子だった。
具材は豚ひき肉、ニラ、おろしにんにく、おろし生姜、キャベツと各種調味料。
いつも通り一通り萌恵ちゃんが用意してくれて、タネを皮に包むところだけ一緒にやらせてもらった。最初は失敗したけど、的確なアドバイスのおかげでどうにか食材を無駄にせずに済んだ。
役目を終えた私は、手を洗ってリビングで待機。台所から聞こえるジュワーッという音に期待感を煽られ、お腹が切なそうに鳴く。
満を持して実食のときが訪れると、大皿に並べられた餃子に箸を伸ばした。
香ばしく焼かれた餃子は見るからにおいしそうで、火傷しないようにふーふーと息を吹きかけてから口に運ぶ。
月並みな表現だけど、皮はパリッと、中はジューシーで実に美味。
醤油とお酢とラー油で作ったタレも用意してくれたけど、なにも付けなくても充分においしい。
二人分にしては少し量があるから残ったらラップして明日食べようなんて話していたのに、私たちは難なく平らげてしまった。
たくさん食べてポッコリ膨らんだお腹を、優しくさする。
さて、ここからが本題だ。
食事を終えてお腹も心も満たされたこの状況において、非常に重大な問題が発生している。
それすなわち、口臭。ニンニクをたっぷり使っているのだから、なにも不思議はない。
二人とも食べているので普通に話すだけなら大して気にならないけど、相手の息を間近で感じるとなれば別だろう。
有り体に言えば――キスできない!
唇が腫れ上がるまでキスしたいのに!
「萌恵ちゃん、今日はキスできそうにないね」
それとなく話を振ってみると、萌恵ちゃんは「さすがにね」と苦笑した。
キスなんて夢のまた夢だと思っていた頃ならともかく、なまじ日常的に行える生活を送っているため、ことさら焦燥感が強い。
あぁ、キスしたい。
萌恵ちゃんのぷるんとした唇を味わいたい。
熱い吐息を受け、舌を絡ませ、唾液を交換したい。
お風呂でもイチャイチャしながらキスしたい。
布団の中でもキスしたい。
キスもそうだけど、当然えっちも無理だよね。
ニンニク、なんて罪深い食材なんだ。料理に食欲を掻き立てる香りと風味を与え、栄養豊富で味もいい。メインとして食べても、萌恵ちゃんが作ってくれたニンニクバターや揚げニンニクは頬が落ちそうなほどおいしかった。食べた後の臭いだけが、私を苦しめる。
よし、決めた。
臭いがなくなったら、今日の分まで萌恵ちゃんに愛してもらおう。
具材は豚ひき肉、ニラ、おろしにんにく、おろし生姜、キャベツと各種調味料。
いつも通り一通り萌恵ちゃんが用意してくれて、タネを皮に包むところだけ一緒にやらせてもらった。最初は失敗したけど、的確なアドバイスのおかげでどうにか食材を無駄にせずに済んだ。
役目を終えた私は、手を洗ってリビングで待機。台所から聞こえるジュワーッという音に期待感を煽られ、お腹が切なそうに鳴く。
満を持して実食のときが訪れると、大皿に並べられた餃子に箸を伸ばした。
香ばしく焼かれた餃子は見るからにおいしそうで、火傷しないようにふーふーと息を吹きかけてから口に運ぶ。
月並みな表現だけど、皮はパリッと、中はジューシーで実に美味。
醤油とお酢とラー油で作ったタレも用意してくれたけど、なにも付けなくても充分においしい。
二人分にしては少し量があるから残ったらラップして明日食べようなんて話していたのに、私たちは難なく平らげてしまった。
たくさん食べてポッコリ膨らんだお腹を、優しくさする。
さて、ここからが本題だ。
食事を終えてお腹も心も満たされたこの状況において、非常に重大な問題が発生している。
それすなわち、口臭。ニンニクをたっぷり使っているのだから、なにも不思議はない。
二人とも食べているので普通に話すだけなら大して気にならないけど、相手の息を間近で感じるとなれば別だろう。
有り体に言えば――キスできない!
唇が腫れ上がるまでキスしたいのに!
「萌恵ちゃん、今日はキスできそうにないね」
それとなく話を振ってみると、萌恵ちゃんは「さすがにね」と苦笑した。
キスなんて夢のまた夢だと思っていた頃ならともかく、なまじ日常的に行える生活を送っているため、ことさら焦燥感が強い。
あぁ、キスしたい。
萌恵ちゃんのぷるんとした唇を味わいたい。
熱い吐息を受け、舌を絡ませ、唾液を交換したい。
お風呂でもイチャイチャしながらキスしたい。
布団の中でもキスしたい。
キスもそうだけど、当然えっちも無理だよね。
ニンニク、なんて罪深い食材なんだ。料理に食欲を掻き立てる香りと風味を与え、栄養豊富で味もいい。メインとして食べても、萌恵ちゃんが作ってくれたニンニクバターや揚げニンニクは頬が落ちそうなほどおいしかった。食べた後の臭いだけが、私を苦しめる。
よし、決めた。
臭いがなくなったら、今日の分まで萌恵ちゃんに愛してもらおう。
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