私がガチなのは内緒である

ありきた

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2章 私と萌恵ちゃんは恋仲である

24話 初体験

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 不安を煽るようにガタガタと音を立てる窓を煩わしく思いつつ、テレビの電源を入れる。親元を離れてから初めて体験する台風は、近年稀に見る規模らしい。
 不意に窓の外で強烈な閃光が迸り、その正体を理解すると同時に耳をつんざくような爆音が轟いた。

「きゃああああっっ!」

 萌恵ちゃんが悲鳴を上げて私に抱き着く。
 彼女は昔から雷が苦手で、普段の元気が見る影もないぐらい縮こまってしまう。
 対する私は、自分でも不思議なぐらい微動だにしない。近場に落ちたらさすがに怖いけど、大抵の場合は光ってから音が聞こえるまでの時間で距離を測ったりしている。

「よしよし、大丈夫だよ。私がそばにいるから、安心して」

「うぅ……ま、真菜ぁ、ありがとう……っ」

 二人ともゆっくりと腰を下ろす。
 萌恵ちゃんは体を丸め、私の胸に頭を預けた。
 少しでも安心してもらおうと、震える体を抱きしめる。

***

 幸いにも雷は最初の一回だけで、数十分経った頃には萌恵ちゃんも普段の調子を取り戻していた。
 途中で気を紛らわせようと萌恵ちゃんを押し倒してキスをしたことも、効果があったのかもしれない。
 台風のおかげだろうか。私にしては大胆な行動だった。
 でも、かわいかったなぁ。
 最初は恐怖が勝ってて震えてたのに、唇を重ね、舌を絡めるうちに、すっかりキスに夢中になってくれた。

「真菜、ほんとにありがと! あたし、何歳になっても雷だけは無理なんだよね~」

「弱気な萌恵ちゃんもかわいかったよ。これからも雷のときは、私がギュッてしてあげる」

 それに、キスも――とまでは口に出さなかったけど、どうやら察してくれたらしい。
 萌恵ちゃんは頬を赤らめ、答え合せをするように唇を触った。

「雨、ずっと激しいままだね~」

「うん、今日はずっとこのままかも」

「これだけ外がうるさくて窓がガタガタ鳴ってたら、ちょっとぐらい大声出しても周りに漏れなさそうじゃない? ね、真菜? そう思わない?」

「うん? まぁ、そうだね」

 なんだろう。様子がおかしいというか、いつもより早口だ。
 妙にそわそわしていて、本当に言いたいことを隠しているような……。
 ハッ、まさか!

「萌恵ちゃん、もしかして……一人でトイレに行くのが怖い、とか?」

 だとしたら、喜んで同伴させてもらう。

「ちっ、違うよ! えっと、その、つまり、このアパートってけっこう壁が薄いけど、いまなら少しぐらい騒いでも、近所迷惑にならないんじゃないかなって!」

「なるほど。せっかくだから、ダンスでもする? 私はセンスないから、あんまり上手に踊れないけど」

「もうっ! 真菜、わざと言ってる!?」

「えっ……ご、ごめん、ちょっと待ってね」

 落ち着いて考えてみよう。
 萌恵ちゃんの態度から推測するに、本気で怒っているというわけではなさそうだ。
 会話の流れを考えると、萌恵ちゃんは答えが明白ななにかを提示していて、それを私がわざと分からないフリをしていると思われている可能性が高い。
 萌恵ちゃんが言いよどむこと。
 おしっこではない。
 大声……壁が薄い……いまなら騒いでも……。
 ダメだ。
 年中発情期の私がいくら考えても、えっちなことしか……ん?
 えっちな、こと。
 当然のように候補から省いていたけど、もしかして萌恵ちゃんも私とえっちしたいって思ってくれてる?

「い、いいの?」

 しっかりと萌恵ちゃんの目を見て訊ねると、照れと緊張が入り混じった笑顔を浮かべ、コクリとうなずいてくれた。

「萌恵ちゃん……」

「真菜……」

 気持ちを確かめ合うように、口付けを交わす。
 次いで耳や首筋など、いつもとは違う場所にもキスの雨を降らせた。
 気分はいつになく高揚していて、萌恵ちゃんも同じように興奮してくれているのが表情や息遣いから伝わってくる。
 これだけでも充分すぎるほどに幸せだけど、まだまだ始まったばかり。
 敷布団を引っ張り出して床に広げ、緊張しながら服を脱ぐ。
 室温は決して高くないのに、寒さなんて気にならないほど体が火照っている。
 萌恵ちゃんが私の名前を愛おしそうに囁きながら、胸に手を伸ばした。
 触られた場所が熱を帯び、全身に伝播していく。
 私もお返しとばかりに萌恵ちゃんの胸を優しく掴み、指に力を込めて刺激する。
 以前にえっちな目的で胸を触ったときはすぐに鼻血が出てしまったけど、今回は平気そうだ。いま思うと、あのときは過剰なまでに気持ちが焦りすぎていたのだろう。
 未だかつてないほどの興奮と期待を抱きつつも、思考は澄みきっている。
 お互いの気持ちいいところを確かめるように愛撫を繰り返し、手探り状態ながらも決して手は止めず、高まり続ける気持ちは留まるところを知らない。

***

 気付けば私たちは布団に寝転がり、本能に身を任せて快楽を貪っていた。
 状況に応じて姿勢を変えながら、お互いの大事なところを擦り合わせる。

「……んっ、萌恵ちゃんっ……萌恵ちゃんっ……❤」

「ぁんっ……真菜……っ❤」

 自分の口から出ているとは思えないほど淫靡な嬌声が、幾度となく漏れる。
 さすがに羞恥心を抑えられず、喘ぎを封じ込めるようにキスをした。
 行為自体はとてつもなく卑猥だけど、後ろめたさや気まずさは微塵もない。
 なにもかも溶け合って、萌恵ちゃんと身も心も一つになるような感覚。
 意識が飛びそうなほどの性的快感だけでなく、それよりも強烈な幸福感に包まれている。

***

 夜を迎えて外が真っ暗になっても、電気を消すことすらせずに。
 全身汗だくで、息が荒くなっていても関係なく。
 私と萌恵ちゃんは、時間が経つのも忘れて愛し合った。
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