私がガチなのは内緒である

ありきた

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2章 私と萌恵ちゃんは恋仲である

23話 台風

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 台風の影響で、大雨洪水警報と暴風警報が出た。
 外は休校となるのも納得の荒れ具合だ。
 朝ごはんを食べながらニュースを見て、台風の情報を確認。
 猛烈な雨風が窓を叩き、アパート全体が揺れているようにすら感じる。

「掃除でもしようかな」

 私がポツリと漏らした一言で、とりあえずの予定が決まった。
 日頃から清潔感を損なわないよう気を付けているけど、どうしても粗が出る。
 今日は徹底的に家をきれいにするとしよう。

「あたしは台所から始めるね!」

「じゃあ、私はお風呂場を」

 動きやすいよう薄地のTシャツに着替えてから、それぞれ作業を始めた。
 いつもより念入りに浴室の清掃を済ませ、隅々までチェックしてから脱衣所に出る。
 気合いを入れて、洗面台も新品同然に美しく仕上げる。歯ブラシの消耗具合や歯磨き粉の残量も問題ない。
 タオルで汗を拭き、首にかける。
 萌恵ちゃんにも渡そうとリビングに戻ると、台所の掃除を終えてリビングの窓を拭いている最中だった。

「萌恵ちゃん、お疲れ様。汗かいてない?」

「ん~、それなりに。気温が低いからマシだけど、動くとどうしてもね~」

 苦笑する萌恵ちゃんに歩み寄り、渡すために持って来たタオルで額の汗を拭う。

「これ、よかったら使ってね」

 萌恵ちゃんの首にタオルをかけると、「ありがと!」と明るく笑ってくれた。
 汗を一滴残らず舐め取りたい。そんな変態じみた願望をどうにか振り払い、私はカーテンレールを雑巾で拭き始める。

***

 時間が経つのも忘れ、たまに雑談を挟みながら手を動かし続けた。
 一通り終えて達成感に浸りながら時計を見ると、いつもなら五限目の授業を受けている時間だ。

「遅めのお昼になっちゃったね~。手早く作れそうな物――チャーハンでいい?」

「うん」

 萌恵ちゃんの作る物なら、どんな物でも喜んで食べる。
 だけど、掃除して一息つくヒマもなく炊事させてしまって申し訳ない。

「一仕事終えたばかりなのに、ごめんね」

「全然平気! 真菜が食べてくれるなら、あたしはマラソンの直後だろうと喜んで作るよ!」

 なんて素敵なお嫁さんなんだ。いや、まだ結婚してないんだった。
 あぁ、萌恵ちゃん大好き。
 萌恵ちゃん好き好き! かわいい! 素敵! 愛してる! 絶対に幸せにするからね!

「~~~~っ」

 私は邪魔にならないようテーブルの陰に隠れ、萌恵ちゃんへの想いを脳内で拡散しながらジタバタと転がった。
 この光景を俯瞰で見たら相当な変人に映るんだろうなぁ、なんてことも考えつつ。

***

 中華料理の専門店にも引けを取らない絶品のチャーハンでお腹を満たし、軽く休憩を挟んでからシャワーを浴びる。
 もちろん夜にもまた浴びるけど、掃除で意外に汗をかいてしまった。何時間もこのままというのは、さすがに気持ち悪い。
 汗を流してスッキリした気分でリビングに戻ると、雨風はさらに勢いを増していた。
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