私がガチなのは内緒である

ありきた

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2章 私と萌恵ちゃんは恋仲である

13話 焦る必要はない

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 ゴールデンウィークが終わってから、一週間ほど経つ。
 高校生活にもすっかり慣れ、恋人との毎日も文句なく楽しい。
 生活が充実していることは疑いようもないのに、人間という生き物は――いや、私だけなのかもしれないけど、もっと上を望んでしまう。
 テストで一位を取りたいわけじゃないし、贅沢に暮らしたいわけでもない。
 ただひとえに、萌恵ちゃんとえっちしたい。
 授業中、私の前には無防備に背中を晒す萌恵ちゃんがいる。
 いますぐギュッと抱きしめ、制服に腕を突っ込んでブラを外し、もっちりすべすべな胸を本能の赴くままに揉んで、追い打ちをかけるように秘所へ指を這わせて敏感な部分を――
 なんて、考えるだけなら簡単だ。
 いくら妄想の中で萌恵ちゃんを絶頂に導いたところで、現実の私はちょっと胸の先っぽを弄らせてもらっただけで鼻血を出してしまう。
 耐性を付ける以外に、なにかできることはないのだろうか。
 うーん……。

***

 帰宅後。
 あれからずっと、同じことで悩み続けていた。
 いつもと違って、今日はなかなか気持ちを切り替えられない。
 萌恵ちゃんとの生活を満喫できなくなったら本末転倒だ。
 一刻も早く解決しないと。

「ねぇ、萌恵ちゃん。えっちなことに興味ある?」

 なんの脈絡もなく、かなり踏み込んだ質問をしてしまった。

「ふぇっ!? なっ、なんで急に!? えっと、あたしは、その、あの……」

 唐突に変なことを訊いてしまったせいで萌恵ちゃんが驚き、読んでいた雑誌を手から滑らせた。
 見る見るうちに頬が赤みを増し、雑誌をテーブルに置いてから「う~ん」と悩ましげに唸る。
 私が逆の立場だったら、二つ返事で萌恵ちゃんとの性行為を所望しただろう。

「きょ、興味は、あると思う。真菜のことを見てると、たまに胸が熱くなって、体の奥が、なんかこう……ムズムズ? よく分かんないけど、いままで知らなかった気持ちになるときがあるから」

 自分のことなのに、確信を持てていない様子だ。
 以前から年中発情期で四六時中えっちなことばかり考えている末期のド変態な私と違い、萌恵ちゃんは最近まで恋愛に無頓着で自慰の経験がないどころか、そのやり方も知らなかったほど純粋で清楚で無垢な天使。
 酷な問いかけだったかもしれないけど、おかげで必要な情報は得られた。
 以前に一人でするときのやり方を説明したものの、私が知る限り萌恵ちゃんは一度も実行に移していない。
 だからこそ、性欲がどの程度なのか知りたかった。

「萌恵ちゃん、いますぐは無理かもだけど……いつかきっと、えっちしようね!」

 現状では萌恵ちゃんを満足させるどころか、心配させる結果になることが目に見えている。
 さっきの返答から察するに、性欲が皆無というわけではなくても、私ほど肉欲にまみれているわけでもない。
 付き合い始めてからここまで、無意識のうちにどこか焦っていた。
 だから、いまはお預け。
 萌恵ちゃんに告げたのは、自分自身へ向けた言葉でもある。

「うんっ、絶対にしよう!」

 瞳を輝かせて元気よく答える萌恵ちゃん。

「ギュッてしてもいい?」

「もちろん! えいっ」

 何気なくお願いしてみると、萌恵ちゃんは嬉々として私に抱き着いてくれた。
 私の方からも強く抱きしめ、そのまま二人して床に寝転がる。
 布団を敷いていないから冷たくて硬い感触が伝わるけど、不思議と体は温かい。

「真菜とこうしてると、気持ちよくて寝ちゃいそうだよ~」

「私だって、萌恵ちゃんがいればどこででも熟睡できそう」

 本当に温かくて気持ちいい。

「……んっ」

 私たちは示し合わせたように瞳を閉じ、唇を重ねる。
 複雑な考えとか邪な下心なんて欠片ほどもなくて、ただ純粋に相手を想う気持ちがそうさせた。
 息が切れるまで続けたり、短いキスを繰り返したり。
 時間が経つのも忘れ、口元が二人の唾液で汚れるのも気にせず、何度も何度も、口付けを交わす。
 ――胸がドキドキしてものすごく興奮しているのに、変にテンパったり鼻血が出ることはない。
 ――とてもえっちなキスだけど、萌恵ちゃんの方からも激しく求めてくれている。

***

 さっきの宣言を撤回するつもりはない。
 だけど。
 最高の初体験をするのは決して遠い将来の話ではないと、自分たちから教わったような気がした。
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