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1章 私がガチなのは内緒である
18話 風邪はつらい
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雨の翌日というのは、体調を崩しやすい。
「ごほっ、ごほっ」
頭とのどが痛くて、裸になりたいぐらい暑いのに、寒気も感じる。
咳と鼻水が止まらず、ゴミ箱はティッシュでいっぱいだ。
マスクをしていることとは関係なく、いつもより息苦しい。
もはや疑う余地もなく、風邪である。
欠席の連絡はすでに済ませた。
朝ごはんは無理をしない程度にしっかり食べたし、薬も飲んだ。
今日は安静にして一刻も早く完治させ、萌恵ちゃんとのラブラブな高校生活を取り戻す。
「あたしも休んで看病する!」
「ごほっ。気持ちだけもらっておくね。うつすと悪いから、早く学校行って」
私を慮ってくれる気持ちだけで、心が温まった。きっとすぐに治るはずだ。
万が一にも、萌恵ちゃんに迷惑をかけるわけにはいかない。
「大丈夫だよ、あたしって風邪ひいたことないし! バカだから!」
健康なのはいいことだけど、その理由で誇らしげに宣言することじゃないよ。
「お願い、行って。私だって本当は萌恵ちゃんと一緒にいたいけど、学校を休むのはダメだよ」
「でも……うん、分かった。なにかあったらすぐ連絡してね! 約束だからね! あっ、おかゆ作ってあるから温め直して食べて! 行ってきます!」
「ありがとう。行ってらっしゃい」
萌恵ちゃんの優しさに触れて、心なしか苦しさが紛れた気がする。
「あ、危なかった」
ともすれば風邪をうつすよりも危険な結果になるところだった。
困ったことに、私は軽度の体調不良や風邪のときは妙に性欲が強まってしまう。
症状が重い場合は本当にただつらいだけなんだけど、今回みたいに最低限の元気が残っていると、ちょっとしたきっかけで卑猥な考えばかり浮かぶ。
加えて熱のせいで頭がちゃんと回っていないため、気を抜くととんでもない爆弾発言が飛び出る可能性もある。
つまり、あのまま萌恵ちゃんに看病されていたら、理性が職務放棄して本能のままあんなことやこんなことを要求していたかもしれないわけだ。
たとえば、寒いから裸で温め合いたいとか、口移しでご飯を食べさせてほしいとか。
気味悪がられて生ゴミを見るような目で見られたらいままでの努力が水の泡だし、仮に受け入れられたとしても確実に風邪をうつしてしまう。
それに、これは序の口だ。
何年も前から自覚している。私は相当に性欲が強い。それはもう、まともな人なら正気を疑うほどに。
濁さず言うなら、意識が続く限り萌恵ちゃんとえっちしたい。
萌恵ちゃんと身も心も一つにして、頭が空っぽになるぐらい激しく愛し合って、そのまま眠りに落ちてしまいたい。
とまぁ、そんなことばかり考えている年中発情期な色ボケJKである。
純真無垢で清廉潔白な萌恵ちゃんとは正反対の、劣情にまみれた煩悩の塊みたいな生き物だ。
最近はただ性欲旺盛なだけではなく、倒錯した変態嗜好まで身に付き始めている。
もしかすると、萌恵ちゃんが幸せになる最低条件は私が消えることなのかもしれない。
「萌恵ちゃん」
最愛の人の名前を呼び、布団の中で体を丸めた。
萌恵ちゃんの枕を抱きしめ、お腹に強く押し当てる。
声を聞きたい。姿を見たい。温もりを感じたい。
風邪は嫌いだ。
いつも以上に自分の卑猥さを痛感させられて、自分が汚物のように思えてくる。
ネガティブな考えばかり浮かび、病気とは別の原因で心が苦しめられる。
迷惑をかけると分かっているのに、萌恵ちゃんを求めてしまう。
「萌恵ちゃん、大好き」
いまはまだ伝えられない想いを、静かにつぶやく。
腕の中にあるのは物言わぬ寝具であり、返事はなく寂寥感を強めるだけだ。
でも、矛盾しているけれど、萌恵ちゃんの枕を抱きしめているから、少しだけ寂しさが和らぐ。
気持ちが落ち着くと眠気が襲ってきて、私の意識は徐々にまどろみに溶けていった。
***
あの後、昼過ぎに目が覚めて、萌恵ちゃんお手製のおかゆを食べて薬を飲んだ。
汗を拭いて着替えを済ませ、水分をしっかり摂って再び布団にくるまり、しばらく眠る。
玄関の鍵を開ける音に気付いて起き上がると、まだ若干の気怠さは残るものの、気分はすっかり元気になっていた。
「おかえり」
萌恵ちゃんの姿を目にして、自然と笑顔がほころんだ。
ほんの数時間しか離れていないのに、久しぶりに再会したような感動を覚える。
「ただいま! よかった~、顔色よくなってる! でも油断しちゃダメだよ。ぶり返すといけないから、今日はしっかり休んでね。晩ごはんは具だくさんの鍋焼きうどん作るから、食べれる分だけ食べて!」
あぁ、萌恵ちゃんだ。
私の大好きな人が、こうして目の前にいる。
学校から帰ったばかりで疲れてるはずなのに、真っ先に私のことを気にかけてくれてくれる。
それが嬉しくて、幸せで、感極まって涙が溢れた。
「萌恵ちゃん、ありがとう。大好き」
「な、なんで泣いてるの!? えっと、どういたしまして! あたしも真菜のこと大好きだよ!」
ただでさえ気を遣わせてしまっているのに、余計な心配をかけてしまった。
口から滑った本音が本来の意味で受け取られなかったのは、不幸中の幸い。
やっぱり、風邪というのは厄介だ。
今後はもっと、体調管理に気を付けるとしよう。
「ごほっ、ごほっ」
頭とのどが痛くて、裸になりたいぐらい暑いのに、寒気も感じる。
咳と鼻水が止まらず、ゴミ箱はティッシュでいっぱいだ。
マスクをしていることとは関係なく、いつもより息苦しい。
もはや疑う余地もなく、風邪である。
欠席の連絡はすでに済ませた。
朝ごはんは無理をしない程度にしっかり食べたし、薬も飲んだ。
今日は安静にして一刻も早く完治させ、萌恵ちゃんとのラブラブな高校生活を取り戻す。
「あたしも休んで看病する!」
「ごほっ。気持ちだけもらっておくね。うつすと悪いから、早く学校行って」
私を慮ってくれる気持ちだけで、心が温まった。きっとすぐに治るはずだ。
万が一にも、萌恵ちゃんに迷惑をかけるわけにはいかない。
「大丈夫だよ、あたしって風邪ひいたことないし! バカだから!」
健康なのはいいことだけど、その理由で誇らしげに宣言することじゃないよ。
「お願い、行って。私だって本当は萌恵ちゃんと一緒にいたいけど、学校を休むのはダメだよ」
「でも……うん、分かった。なにかあったらすぐ連絡してね! 約束だからね! あっ、おかゆ作ってあるから温め直して食べて! 行ってきます!」
「ありがとう。行ってらっしゃい」
萌恵ちゃんの優しさに触れて、心なしか苦しさが紛れた気がする。
「あ、危なかった」
ともすれば風邪をうつすよりも危険な結果になるところだった。
困ったことに、私は軽度の体調不良や風邪のときは妙に性欲が強まってしまう。
症状が重い場合は本当にただつらいだけなんだけど、今回みたいに最低限の元気が残っていると、ちょっとしたきっかけで卑猥な考えばかり浮かぶ。
加えて熱のせいで頭がちゃんと回っていないため、気を抜くととんでもない爆弾発言が飛び出る可能性もある。
つまり、あのまま萌恵ちゃんに看病されていたら、理性が職務放棄して本能のままあんなことやこんなことを要求していたかもしれないわけだ。
たとえば、寒いから裸で温め合いたいとか、口移しでご飯を食べさせてほしいとか。
気味悪がられて生ゴミを見るような目で見られたらいままでの努力が水の泡だし、仮に受け入れられたとしても確実に風邪をうつしてしまう。
それに、これは序の口だ。
何年も前から自覚している。私は相当に性欲が強い。それはもう、まともな人なら正気を疑うほどに。
濁さず言うなら、意識が続く限り萌恵ちゃんとえっちしたい。
萌恵ちゃんと身も心も一つにして、頭が空っぽになるぐらい激しく愛し合って、そのまま眠りに落ちてしまいたい。
とまぁ、そんなことばかり考えている年中発情期な色ボケJKである。
純真無垢で清廉潔白な萌恵ちゃんとは正反対の、劣情にまみれた煩悩の塊みたいな生き物だ。
最近はただ性欲旺盛なだけではなく、倒錯した変態嗜好まで身に付き始めている。
もしかすると、萌恵ちゃんが幸せになる最低条件は私が消えることなのかもしれない。
「萌恵ちゃん」
最愛の人の名前を呼び、布団の中で体を丸めた。
萌恵ちゃんの枕を抱きしめ、お腹に強く押し当てる。
声を聞きたい。姿を見たい。温もりを感じたい。
風邪は嫌いだ。
いつも以上に自分の卑猥さを痛感させられて、自分が汚物のように思えてくる。
ネガティブな考えばかり浮かび、病気とは別の原因で心が苦しめられる。
迷惑をかけると分かっているのに、萌恵ちゃんを求めてしまう。
「萌恵ちゃん、大好き」
いまはまだ伝えられない想いを、静かにつぶやく。
腕の中にあるのは物言わぬ寝具であり、返事はなく寂寥感を強めるだけだ。
でも、矛盾しているけれど、萌恵ちゃんの枕を抱きしめているから、少しだけ寂しさが和らぐ。
気持ちが落ち着くと眠気が襲ってきて、私の意識は徐々にまどろみに溶けていった。
***
あの後、昼過ぎに目が覚めて、萌恵ちゃんお手製のおかゆを食べて薬を飲んだ。
汗を拭いて着替えを済ませ、水分をしっかり摂って再び布団にくるまり、しばらく眠る。
玄関の鍵を開ける音に気付いて起き上がると、まだ若干の気怠さは残るものの、気分はすっかり元気になっていた。
「おかえり」
萌恵ちゃんの姿を目にして、自然と笑顔がほころんだ。
ほんの数時間しか離れていないのに、久しぶりに再会したような感動を覚える。
「ただいま! よかった~、顔色よくなってる! でも油断しちゃダメだよ。ぶり返すといけないから、今日はしっかり休んでね。晩ごはんは具だくさんの鍋焼きうどん作るから、食べれる分だけ食べて!」
あぁ、萌恵ちゃんだ。
私の大好きな人が、こうして目の前にいる。
学校から帰ったばかりで疲れてるはずなのに、真っ先に私のことを気にかけてくれてくれる。
それが嬉しくて、幸せで、感極まって涙が溢れた。
「萌恵ちゃん、ありがとう。大好き」
「な、なんで泣いてるの!? えっと、どういたしまして! あたしも真菜のこと大好きだよ!」
ただでさえ気を遣わせてしまっているのに、余計な心配をかけてしまった。
口から滑った本音が本来の意味で受け取られなかったのは、不幸中の幸い。
やっぱり、風邪というのは厄介だ。
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