私がガチなのは内緒である

ありきた

文字の大きさ
上 下
10 / 121
1章 私がガチなのは内緒である

10話 穏やかな時間

しおりを挟む
 散歩を終えて帰宅した私たちは、シャワーを浴びて汗を流し、お昼ご飯を食べてのんびりとしたひとときを過ごしていた。
 ちなみに、萌恵ちゃんは宣言通りスキンシップ数割増しで甘えてくる。現在進行形で。

「ん~、真菜からいい匂いがする」

 私の太ももに頭を預けた状態で、萌恵ちゃんが声を弾ませる。

「同じ匂いだと思うけど」

 シャンプーもボディソープも共用だし。
 ただ、萌恵ちゃんは人工的ではない甘く爽やかな香りを放っている。
 なんなら、人混みの中で萌恵ちゃんの香りを嗅ぎ分ける自信すらある。さすがに本人には言えないけども。

「落ち着くなぁ。寝ろと言われたらこのまま寝れちゃうよ」

「寝ないでね、足が痺れるから」

 とは言っても、本当は足が砕け散ろうとも萌恵ちゃんに膝枕をし続けたいんだけどね。
 萌恵ちゃんへの恋心を悟られないようにするためには、自分を客観視して発言や行動を自重することがなにより重要だ。
 愛してる! 結婚して! という明らかな告白はダメ。
 萌恵ちゃんの汗を集めて味わいたい! なんてことは論外。
 関係を壊さないために必須となる配慮。恋愛感情と変態的な欲求を抑えるのは、もはや呼吸と同じレベルで実行している。
 意識しすぎて表情が強張ったり不安が脳内を埋め尽くすようでは、萌恵ちゃんとの時間を満足に楽しめない。
 もちろん、洗濯担当の特権で萌恵ちゃんの下着を夜中にちょっとだけ拝借する際も、細心の注意を払いつつも楽しむことを最優先している。
 改めて考えると、私ってかなり気持ち悪いな……。
 なにがなんでも、秘密は守り通さないといけない。

***

 結局、ダラダラと過ごすだけで一日が終わった。
 学生としては嘆くべきなのかもしれないけど、不思議と満ち足りた気分で床に就いている。
 萌恵ちゃんと一緒だったら、なにもしなくても幸福を感じられそうだ。
 自分だけだったら切ないなぁと思って隣を見ると、視線に気付いた萌恵ちゃんが優しく微笑んだ。気持ちが通じ合ったみたいで嬉しい。
 これぐらいなら大丈夫かな、と手を握ってみる。
 すると、当然のように握り返してくれた。
 たまには積極的になっても、罰は当たらないようだ。
 いつもより少しだけ距離を詰めて、萌恵ちゃんの体温を感じながら瞳を閉じる。

「おやすみ、萌恵ちゃん」

 今度は返事がなく、代わりにかわいらしい寝息が聞こえてきた。
 私も徐々に意識が薄れ――るどころか生殺し状態で興奮しすぎて眠気が吹っ飛び、明け方になるまで羊を数え続ける羽目になる。
 調子に乗って密着しすぎると体に毒だと、身をもって知った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

犬猿の仲だけど一緒にいるのが当たり前な二人の話

ありきた
青春
犬山歌恋と猿川彩愛は、家族よりも長く同じ時間を過ごしてきた幼なじみ。 顔を合わせれば二言目にはケンカを始め、時には取っ組み合いにまで発展する。 そんな二人だが、絆の強さは比類ない。 ケンカップルの日常を描いた百合コメディです! カクヨム、ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...