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9話 成績は非公開でお願いします
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昨日の夜に荒野を散歩していたときのこと。
一夜にして大国を滅ぼしたという伝説の暗黒龍が荒野に出没した。
山と見紛うほどの巨体、鋭利な鱗は鋼鉄よりも硬く、尻尾の一振りで大地が裂け、気まぐれに吐く毒のブレスはあらゆる生物を死に至らしめる。
まぁ、町に近付いたら危ないから、ササッと倒したんだけども。
【デス・オブ・セル】という細胞を崩壊させる魔法を使ってみたところ、暗黒龍は数秒としないうちに跡形もなく消滅した。【ファイア】より強力だけど周りへの被害は皆無だから、なにかと使い勝手がよさそうだ。
パアルちゃんいわく、超一流の魔法使いが人生を捧げた末にようやく会得できるかどうかの魔法らしい。余計な注目を浴びてしまうから、人前で使うのは避けた方がいいかもしれない。
そしてついさっき、私とパアルちゃんは朝一で集会所に足を運び、暗黒龍の討伐を報告した。倒したモンスターは冒険者カードに自動記録されるらしく、驚かれはしたけど疑われることはなかった。
ついでに非公開申請を行い、私が暗黒龍を倒したことは外部に漏れないようにしてもらう。プライバシーに配慮されたシステムがあって、個人的にすごく助かる。
生ける災厄とすら呼ばれている暗黒龍を討伐したことで、報酬として私の冒険者カードには目玉が飛び出るほどの大金が振り込まれた。しばらく――というか、人生を何周か遊んで暮らせるほどの額だ。
「やったのです! これでおいしい物を好きなだけ食べれるのです!」
「そうだね、家も買えちゃうよね」
宿に戻った私たちは、ベッドの上で二人そろって声を弾ませる。
金額が規格外すぎていまいち実感が沸かないものの、これで生活面での不安はほぼ完璧に解消された。
「とりあえず、屋台の料理を一通り食べて回るのです!」
「いいね! 賛成!」
さっき宿に戻ったばかりだというのに、私たちは再び町へと繰り出す。
宿のすぐ近くに居を構えるお店で、初日に食べたフランクフルトみたいな料理を一本購入して二人で分ける。
「パアルちゃん、関節キスだね」
女の子同士だから気にすることはないと思うけど、あたふたする姿を拝みたくて少しからかってみる。
「レーナとなら平気なのです」
動揺するどころか、さも当たり前であるかのような反応。
逆に、パアルちゃんにとって特別な存在になれているのかな、なんて考えて私が赤面させられてしまう。自意識過剰と言われればそれまでだけど、信頼してもらえているのなら嬉しい。
「つ、次はあそこの串焼き食べよっか!」
「気が合うのです。ちょうど我も同じことを考えていたのです」
馬車や人が行き交う道を横断し、向かい側の店へと移動する。
そこで売られているのは、一口サイズのお肉と野菜を交互に串に刺して焼いた物。なんのお肉か分からないし野菜も見たことのない色や形状をしているけど、網目状の焼き目がついたおいしそうなビジュアルや立ち上る香ばしい匂いに食欲をそそられ、店主さんと目が合うと同時に注文を済ませていた。
ふーふーと息を吹きかけて熱々の串焼きを少し冷ましてから、口に運ぶ。
お肉を頬張り、軽く咀嚼する。迸る肉汁、溢れる旨味、スパイスのピリッとした刺激がほどよいアクセントになって、感動が口内から脳へ伝わり、うっとりするような満足感が全身へと広がっていく。
次いで野菜をかじれば、シャキシャキとした食感と爽やかな香りが、脂っこくなった口の中をリフレッシュしてくれる。
もしも暗黒龍の討伐が公表されていたら、今頃こんな呑気に過ごせていなかっただろう。
平穏な生活を送る上で、今後も非公開申請は欠かせない。
一夜にして大国を滅ぼしたという伝説の暗黒龍が荒野に出没した。
山と見紛うほどの巨体、鋭利な鱗は鋼鉄よりも硬く、尻尾の一振りで大地が裂け、気まぐれに吐く毒のブレスはあらゆる生物を死に至らしめる。
まぁ、町に近付いたら危ないから、ササッと倒したんだけども。
【デス・オブ・セル】という細胞を崩壊させる魔法を使ってみたところ、暗黒龍は数秒としないうちに跡形もなく消滅した。【ファイア】より強力だけど周りへの被害は皆無だから、なにかと使い勝手がよさそうだ。
パアルちゃんいわく、超一流の魔法使いが人生を捧げた末にようやく会得できるかどうかの魔法らしい。余計な注目を浴びてしまうから、人前で使うのは避けた方がいいかもしれない。
そしてついさっき、私とパアルちゃんは朝一で集会所に足を運び、暗黒龍の討伐を報告した。倒したモンスターは冒険者カードに自動記録されるらしく、驚かれはしたけど疑われることはなかった。
ついでに非公開申請を行い、私が暗黒龍を倒したことは外部に漏れないようにしてもらう。プライバシーに配慮されたシステムがあって、個人的にすごく助かる。
生ける災厄とすら呼ばれている暗黒龍を討伐したことで、報酬として私の冒険者カードには目玉が飛び出るほどの大金が振り込まれた。しばらく――というか、人生を何周か遊んで暮らせるほどの額だ。
「やったのです! これでおいしい物を好きなだけ食べれるのです!」
「そうだね、家も買えちゃうよね」
宿に戻った私たちは、ベッドの上で二人そろって声を弾ませる。
金額が規格外すぎていまいち実感が沸かないものの、これで生活面での不安はほぼ完璧に解消された。
「とりあえず、屋台の料理を一通り食べて回るのです!」
「いいね! 賛成!」
さっき宿に戻ったばかりだというのに、私たちは再び町へと繰り出す。
宿のすぐ近くに居を構えるお店で、初日に食べたフランクフルトみたいな料理を一本購入して二人で分ける。
「パアルちゃん、関節キスだね」
女の子同士だから気にすることはないと思うけど、あたふたする姿を拝みたくて少しからかってみる。
「レーナとなら平気なのです」
動揺するどころか、さも当たり前であるかのような反応。
逆に、パアルちゃんにとって特別な存在になれているのかな、なんて考えて私が赤面させられてしまう。自意識過剰と言われればそれまでだけど、信頼してもらえているのなら嬉しい。
「つ、次はあそこの串焼き食べよっか!」
「気が合うのです。ちょうど我も同じことを考えていたのです」
馬車や人が行き交う道を横断し、向かい側の店へと移動する。
そこで売られているのは、一口サイズのお肉と野菜を交互に串に刺して焼いた物。なんのお肉か分からないし野菜も見たことのない色や形状をしているけど、網目状の焼き目がついたおいしそうなビジュアルや立ち上る香ばしい匂いに食欲をそそられ、店主さんと目が合うと同時に注文を済ませていた。
ふーふーと息を吹きかけて熱々の串焼きを少し冷ましてから、口に運ぶ。
お肉を頬張り、軽く咀嚼する。迸る肉汁、溢れる旨味、スパイスのピリッとした刺激がほどよいアクセントになって、感動が口内から脳へ伝わり、うっとりするような満足感が全身へと広がっていく。
次いで野菜をかじれば、シャキシャキとした食感と爽やかな香りが、脂っこくなった口の中をリフレッシュしてくれる。
もしも暗黒龍の討伐が公表されていたら、今頃こんな呑気に過ごせていなかっただろう。
平穏な生活を送る上で、今後も非公開申請は欠かせない。
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