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172話 夏っぽい企画に向けて⑦
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ひとまず話もまとまったことで、あたしたちは企画の第一候補となった水中バレーを実際にやってみることにした。
「ルールなんだけど、ビーチバレーのルールを応用するってことでいいかな?」
そう訊ねると、全員から了承の声が上がった。
ビーチバレーのルールをそのまま使うのは体力的にも無理があるので、水中用にいろいろと調整する必要がある。
「細かいところは後で決めるとして、とりあえず同期でチーム分けして試しにやってみよう!」
「エリナ、攻撃と守備は全部任せたよー」
「全部!?」
期待通りの反応が返ってきたらしく、驚くエリナ先輩を見てシャテーニュ先輩が楽しそうに笑う。
「ユニコちゃん、力を合わせて頑張りましょう」
「うんっ、先輩も後輩も蹴散らしちゃおう!」
チームワークにおいて、あたしとミミちゃんに勝るペアはないと自負している。
「じゃあ、最初は後輩組のネココとスノウが審判やるにゃ」
「不正行為には、容赦なく裁きの雷を落とさせてもらうよ」
ネココちゃんの申し出をありがたく受け取らせてもらい、一戦目は審判と実況を三期生が務め、一期生と二期生が対決することになった。
改めて念入りに体をほぐしてから、プールに飛び込む。
試合に参加する他の三人は、飛び込まず普通に入っていた。なんかちょっと寂しい。
「パーフェクトゲーム狙っちゃうよ~!」
「無理はしないように気を付けましょうね」
「先輩の威厳を見せてあげるよー」
適当な位置に陣取って敵チームと向かい合い、あたしたちは意気込みを口にする。
そんな中、エリナ先輩はなぜか気まずそうな面持ちで静かに手を挙げた。
「盛り上がってるところ悪いんだけど、一ついいかしら?」
「トイレならいつでも自由に行っていいよ~。ちゃんと待ってるから安心して!」
「いや、そうじゃなくて……ボールは?」
ボール。
その単語が出た瞬間、発した本人であるエリナ先輩を除き、全員の口から「あっ」という声が漏れた。
ボールがないまま球技に臨もうとするなんて、これほど間抜けな話もない。
「そうだった! ボールがないと試合できないよ!」
あたしは頭を抱え、至極当たり前のことを叫んだ。
「もしかしたら運営さんが用意してくれてるかもしれないから、ちょっと更衣室見てくる!」
「わたしも行きますっ」
言うが早いか、あたしとミミちゃんはプールから上がり、転ばないように気を付けつつ早足で更衣室へ向かった。
入室するや否や一目散に貸し出し用水着があるウォークインクローゼットに足を運び、その広々とした空間の隅々に視線を巡らせる。
すると、よく見ると奥の方に白いカーテンで仕切られている場所があることに気付いた。
気になって開けてみると、そこには背の高い黒い棚があり、水泳キャップやゴーグル、ビート板や水鉄砲、浮き輪やビーチボールに空気入れまで用意されている。
「当たっても痛くないし、これ使わせてもらおうっ」
あたしは心の中で運営さんにお礼を言い、ビーチボールと空気入れを手に取りミミちゃんと共にみんなのところへ戻った。
「ルールなんだけど、ビーチバレーのルールを応用するってことでいいかな?」
そう訊ねると、全員から了承の声が上がった。
ビーチバレーのルールをそのまま使うのは体力的にも無理があるので、水中用にいろいろと調整する必要がある。
「細かいところは後で決めるとして、とりあえず同期でチーム分けして試しにやってみよう!」
「エリナ、攻撃と守備は全部任せたよー」
「全部!?」
期待通りの反応が返ってきたらしく、驚くエリナ先輩を見てシャテーニュ先輩が楽しそうに笑う。
「ユニコちゃん、力を合わせて頑張りましょう」
「うんっ、先輩も後輩も蹴散らしちゃおう!」
チームワークにおいて、あたしとミミちゃんに勝るペアはないと自負している。
「じゃあ、最初は後輩組のネココとスノウが審判やるにゃ」
「不正行為には、容赦なく裁きの雷を落とさせてもらうよ」
ネココちゃんの申し出をありがたく受け取らせてもらい、一戦目は審判と実況を三期生が務め、一期生と二期生が対決することになった。
改めて念入りに体をほぐしてから、プールに飛び込む。
試合に参加する他の三人は、飛び込まず普通に入っていた。なんかちょっと寂しい。
「パーフェクトゲーム狙っちゃうよ~!」
「無理はしないように気を付けましょうね」
「先輩の威厳を見せてあげるよー」
適当な位置に陣取って敵チームと向かい合い、あたしたちは意気込みを口にする。
そんな中、エリナ先輩はなぜか気まずそうな面持ちで静かに手を挙げた。
「盛り上がってるところ悪いんだけど、一ついいかしら?」
「トイレならいつでも自由に行っていいよ~。ちゃんと待ってるから安心して!」
「いや、そうじゃなくて……ボールは?」
ボール。
その単語が出た瞬間、発した本人であるエリナ先輩を除き、全員の口から「あっ」という声が漏れた。
ボールがないまま球技に臨もうとするなんて、これほど間抜けな話もない。
「そうだった! ボールがないと試合できないよ!」
あたしは頭を抱え、至極当たり前のことを叫んだ。
「もしかしたら運営さんが用意してくれてるかもしれないから、ちょっと更衣室見てくる!」
「わたしも行きますっ」
言うが早いか、あたしとミミちゃんはプールから上がり、転ばないように気を付けつつ早足で更衣室へ向かった。
入室するや否や一目散に貸し出し用水着があるウォークインクローゼットに足を運び、その広々とした空間の隅々に視線を巡らせる。
すると、よく見ると奥の方に白いカーテンで仕切られている場所があることに気付いた。
気になって開けてみると、そこには背の高い黒い棚があり、水泳キャップやゴーグル、ビート板や水鉄砲、浮き輪やビーチボールに空気入れまで用意されている。
「当たっても痛くないし、これ使わせてもらおうっ」
あたしは心の中で運営さんにお礼を言い、ビーチボールと空気入れを手に取りミミちゃんと共にみんなのところへ戻った。
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