ギリギリセーフ(?)な配信活動~アーカイブが残らなかったらごめんなさい~

ありきた

文字の大きさ
上 下
28 / 217

28話 一期生の大先輩が家に来てくれた

しおりを挟む
 あたしとミミちゃんが二期生として加入する時点で、ガールズパーティはすでに相当な知名度を誇っていた。
 それもひとえに、一期生に名を連ねる先輩たちのおかげだ。

「みんな、こんユニ~! 今日は先輩とオフコラボだよ!」

 いま言った通り、今日は先輩とのオフコラボ。
 あたしの隣には、偉大なる大先輩が座っている。
 お決まりのあいさつと本日の配信内容を簡潔に告げた後、ゲストに自己紹介を促す。

「それじゃあ先輩、あいさつお願いします!」

「ごきげんよう、豚共! 一期生の皇《すめらぎ》エリナよ!」

 エリナ先輩があいさつを終えるや否や、コメント欄が『ぶひぃぃぃっ!』とか『エリナ様~~!』というコメントで溢れかえった。
 ちらほら見える『ごきげんよう』や『エリナちゃんかわいい』といったコメントは、あたしのリスナーさんだと思う。
 セーラー服に身を包んだ金髪碧眼の巨乳美少女を前にして、あたしのリスナーさんたちも喜んでいる。
 エリナ先輩は息をするように毒を吐くけど、その辛辣さがクセになると評判だ。
 鈴の音に例えられる軽やかで爽やかな声によって紡がれる罵声は、毎日耳にしないと生きていけないほどの中毒性を秘めているらしい。

「エリナ先輩のリスナーさん、すっかり調教されてますね~。まだあいさつしただけなのに、すごく盛り上がってますよ」

「調教? こいつらが勝手に騒いでるだけよ。それよりユニコ、敬語はやめなさいって言ったじゃない!」

「あっ、そうでし――じゃなくて、そうだった」

「それはそれとして、ユニコのリスナーまで豚扱いするのは申し訳ないわね。角の生えた馬って呼んだ方がいい?」

「角の生えた馬だと、あたしのことになっちゃうよ」

「実はアタシ、一回馬に乗ってみたいと思ってたのよね。ユニコ、ちょっと四つん這いになりなさいよ」

「えっ、ここで!?」

『いいなー』
『ユニコちゃんそこ代わって』
『エリナお姉さま、私に乗ってください!』
『馬に生まれ変わりたい』

 エリナ先輩に乗ってもらいたい人が大量発生している。

「冗談はさておき、今日ってなにする予定なのかしら?」

声が本気だったような気がしたけど、冗談でよかった。

「今日は雑談だよ~。エリナ先輩とのコラボって何気に珍しいから、とことんおしゃべりしようと思って」

「なるほど、了解したわ! 要するに十一時間五十九分五十九秒ほどユニコを罵り続ければいいってことね」

「アーカイブに残せる限界ギリギリまで罵ろうとしてる!? いまからだと超えちゃうし、そもそもあたしは別にドМじゃないから、罵られても嬉しくないよ!」

「ふふっ。配信が終わる頃にも同じことを言えるか、楽しみだわ」

「えっ、なに? もしかして、いまから調教されちゃうの?」

 たとえそうだとしても、決して屈するわけにはいかない。
あたしにはミミちゃんという心に決めた人がいるのだから。

「調教はしないけど、ユニコが気付かない程度にさりげなく、言葉の合間に罵詈雑言を挟むつもりよ」

「明らかにサブリミナル効果狙ってるよね!?」

「察しがいい雌豚ね、さすがユニコ。先輩として鼻が高いわ!」

「えっ、そうかなぁ? えへへ」

「ちょっと褒められたぐらいで調子に乗ってんじゃないわよ。まったく、お世辞も分からないのかしら」

「いきなり辛辣すぎるよ!」

 一度持ち上げてからの落差が激しすぎる。
 あと、さっき何気に『雌豚』って呼ばれてたよね。

「アタシ一人で調教するのも面倒だし、リスナーもコメントで協力しなさい!」

「いま調教って言った? やっぱり調教するつもりだったの?」

「というわけで、キリのいいところで質問コーナーの時間よ!」

「キリがいいどころか強引に話を変えられた気がするんだけど……」

「気のせいよ。それより、質問いっぱい来てるわよ。どんどん答えてあげないと」

 ささやかな抗議がサラッと流されてしまったことはさておき、確かにコメント欄が質問で賑わっている。

「よーしっ、気合入れて答えていくよ~!」

「いい心意気ね。さて、その間にアタシは飲み物でも買いに行こうかしら」

「いやいや、エリナ先輩も一緒に答えてよ!」

 一応進行役を務めているのはあたしだけど、主導権はエリナ先輩に握られっぱなしだ。
 それと、エリナ先輩は話相手の反応を引き出したりするのが絶妙に上手い。
 お昼過ぎから始めた雑談配信は予定していた時間を大幅に超え、終わる頃にはすっかり外が暗くなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

私と先輩のキス日和

壽倉雅
恋愛
出版社で小説担当の編集者をしている山辺梢は、恋愛小説家・三田村理絵の担当を新たにすることになった。公に顔出しをしていないため理絵の顔を知らない梢は、マンション兼事務所となっている理絵のもとを訪れるが、理絵を見た途端に梢は唖然とする。理絵の正体は、10年前に梢のファーストキスの相手であった高校の先輩・村田笑理だったのだ。笑理との10年ぶりの再会により、二人の関係は濃密なものになっていく。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと78隻!(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。もちろんがっつり性描写はないですが、GL要素大いにありです。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。また、船魄紹介だけを別にまとめてありますので、見返したい時はご利用ください(https://www.alphapolis.co.jp/novel/176458335/696934273)。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。  ●お気に入りや感想などよろしくお願いします。毎日一話投稿します。

処理中です...