犬猿の仲だけど一緒にいるのが当たり前な二人の話

ありきた

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55話 大人げない盤外戦術②

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 予想通り、レースは別の意味で熾烈を極めることとなった。

 時に罵声を浴びせ合い、時に相手のミスを喜ぶ。

 妨害アイテムを手に入れればコンピューターのキャラを無視して執拗に相手を狙い撃ちし、ゴール前で追い抜かした際には過剰なまでに煽る。

 対戦の様子は、お世辞にも健全とは言えない。


「このバカ! そのアイテムはあたしが取ろうとしたのに!」


「早い者勝ちですよ! 欲しいならバックして取りに戻ってください!」


「甲羅をお見舞いしてやるわ! 落ちろ!」


「んなっ!?」


 確か、これで十三レース目だったはずだ。

 少し優位に立って余裕を見せていたら、次のアイテム出現地点を通り過ぎたところで妨害アイテムを使われ、彩愛先輩に抜かされた。

 いまのところレース結果はイーブンなので、このまま先にゴールされたらリードされてしまう。

 次のレースで勝てば問題ないけど、勝ち星は多いに越したことはない。


「ふっ、これが実力の差ってやつよ」


「くっ……!」


 全力を尽くしたものの、先ほど生じた差は埋められず、彩愛先輩の背中を見ながらのゴールとなった。

 そして――必勝を誓って臨んだ次のレースで、悲劇が起こる。


「ひぁんっ」


 彩愛先輩が突如としてエッチな声を漏らしながら、横目でも分かるほどにガクンと体勢を崩した。

 すぐに立て直したのはさすがだけど、ほんのわずかな時間でもボタンから指が離れていたのは事実。

 一瞬のうちに彩愛先輩の順位は最下位近くにまで落ち、私は一抹の罪悪感を抱きながら先頭を突き進む。

 そう、悲劇を起こしたのは他でもない、この私だ。

 というか、ただの悪質なイタズラである。

 長い直線が続いていたので、ちょっと隣を向いて彩愛先輩の耳に息を吹きかけるという卑劣な行為に走ってしまった。


「卑怯にもほどがあるわよ! 恥を知りなさい!」


「かっ、勝てばいいんです!」


 出来心とはいえ自分が悪いのは明確なのに、素直に謝るどころか、悪役じみたセリフを吐いてしまう。


「そっちがその気なら、あたしだって――」


「ちょっ、なっ、なにを――あんっ」


 彩愛先輩はゲーム機を膝に置き、プレイを放棄してまで私の胸を揉み始めた。

 裾から手を滑り込ませ、ご丁寧にブラのホックまで外して。


「んっ、くぅ、あっ、んんっ」


 乱暴な手付きなのに、痛いと感じない程度の絶妙な力加減。

 服の内側だから直接見えないにもかかわらず、敏感なところを正確に責めてくる。

 頭ではゲームに集中するべきだと分かっているのに、体は彩愛先輩の愛撫にすべてを委ねろと訴えている。

 気付けば私はゲーム機を持ったまま指の動きを止め、本能のままに快感を享受していた。
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