29 / 67
29話 恋人として
しおりを挟む
私はいま、告白した時と同じぐらい緊張している。
それもそのはず。家に帰ったら、私の部屋で彩愛先輩とキスをするのだから。
うやむやになっていたキスの件を登校中に話していたところ、互いに乗り気ということもあり、とんとん拍子で話が進んで放課後に実行する運びとなった。
緊張と期待のあまり、今日は一限目から六限目までの授業内容が少しも頭に残っていない。
普段通りに会話しながらも、節々から緊張が滲み出てしまう。
いつもなら茶化すところだけど、お互いに心境は同じなので今回ばかりは触れないでおく。
恋愛感情が芽生えていなかったとはいえ、毎日のようにキスをしていた幼少期の自分たちに敬意すら覚える。
「彩愛先輩、か、覚悟はいいですか?」
「あっ、当り前よ、とっくにできてるわ!」
家に着き、再度気持ちを確認してから玄関の扉を開ける。
洗面所で手洗いとうがいを済ませ、ついでに唇が荒れていないかチェックして、いよいよ私の部屋へ。
「えっと……か、歌恋の部屋って、いい匂いよね。もちろん歌恋自身もいい匂いだし、世界一かわいいわよ」
「きゅ、急にどうしたんですか?」
唐突にべた褒めされ、喜び以上に困惑してしまう。
「いや、だってほら、キスをする前っていい感じの雰囲気を作っといた方がいいでしょ? あんたを褒めるなんて気が進まないけど、とりあえず褒めとけば、それっぽいムードになると思ったのよ」
「なるほど。その目論見って、暴露した時点で台無しですよね」
「あっ……。も、元はと言えばあんたの質問のせいなんだから、責任取っていますぐキスにふさわしいムードを用意しなさい!」
「どう考えても私は悪くないじゃないですか!」
「うっさいバカ!」
とまぁ、例のごとくケンカが勃発し、胸倉を掴み合って派手に争う。
しばらくしてお互いに冷静さを取り戻したことで、二人並んでベッドに腰かける。
直前まで罵声と暴力をぶつけ合っていたとはいえ、本来の目的であるキスは依然として双方の望むところ。
そもそも、これぐらいのケンカで亀裂が入るような関係ではない。
「汗かいちゃったわね」
「たくさん動き回りましたからね」
火照った体にブレザーはいささか暑く、脱いでベッドの適当なところに置く。
私たちらしいハプニングが起きたものの、いよいよその時が訪れようとしている。
「面と向かって言うのは恥ずかしいですけど……大好きですよ、彩愛先輩」
隣を向いて、彩愛先輩の目を見て言う。
改まって告げるとさすがに照れるけど、きちんと伝えておきたかったので後悔はしない。
「あたしも大好きよ、歌恋」
彩愛先輩もまた、私の目をしっかりと見据えて想いを告げてくれた。
私たちは深めに息を吸い、相手から視線を逸らさずに顔を近付け合う。
――やがて二人の唇が重なり、ちゅっ、と小さな音を奏でた。
それもそのはず。家に帰ったら、私の部屋で彩愛先輩とキスをするのだから。
うやむやになっていたキスの件を登校中に話していたところ、互いに乗り気ということもあり、とんとん拍子で話が進んで放課後に実行する運びとなった。
緊張と期待のあまり、今日は一限目から六限目までの授業内容が少しも頭に残っていない。
普段通りに会話しながらも、節々から緊張が滲み出てしまう。
いつもなら茶化すところだけど、お互いに心境は同じなので今回ばかりは触れないでおく。
恋愛感情が芽生えていなかったとはいえ、毎日のようにキスをしていた幼少期の自分たちに敬意すら覚える。
「彩愛先輩、か、覚悟はいいですか?」
「あっ、当り前よ、とっくにできてるわ!」
家に着き、再度気持ちを確認してから玄関の扉を開ける。
洗面所で手洗いとうがいを済ませ、ついでに唇が荒れていないかチェックして、いよいよ私の部屋へ。
「えっと……か、歌恋の部屋って、いい匂いよね。もちろん歌恋自身もいい匂いだし、世界一かわいいわよ」
「きゅ、急にどうしたんですか?」
唐突にべた褒めされ、喜び以上に困惑してしまう。
「いや、だってほら、キスをする前っていい感じの雰囲気を作っといた方がいいでしょ? あんたを褒めるなんて気が進まないけど、とりあえず褒めとけば、それっぽいムードになると思ったのよ」
「なるほど。その目論見って、暴露した時点で台無しですよね」
「あっ……。も、元はと言えばあんたの質問のせいなんだから、責任取っていますぐキスにふさわしいムードを用意しなさい!」
「どう考えても私は悪くないじゃないですか!」
「うっさいバカ!」
とまぁ、例のごとくケンカが勃発し、胸倉を掴み合って派手に争う。
しばらくしてお互いに冷静さを取り戻したことで、二人並んでベッドに腰かける。
直前まで罵声と暴力をぶつけ合っていたとはいえ、本来の目的であるキスは依然として双方の望むところ。
そもそも、これぐらいのケンカで亀裂が入るような関係ではない。
「汗かいちゃったわね」
「たくさん動き回りましたからね」
火照った体にブレザーはいささか暑く、脱いでベッドの適当なところに置く。
私たちらしいハプニングが起きたものの、いよいよその時が訪れようとしている。
「面と向かって言うのは恥ずかしいですけど……大好きですよ、彩愛先輩」
隣を向いて、彩愛先輩の目を見て言う。
改まって告げるとさすがに照れるけど、きちんと伝えておきたかったので後悔はしない。
「あたしも大好きよ、歌恋」
彩愛先輩もまた、私の目をしっかりと見据えて想いを告げてくれた。
私たちは深めに息を吸い、相手から視線を逸らさずに顔を近付け合う。
――やがて二人の唇が重なり、ちゅっ、と小さな音を奏でた。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる