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23話 気のせいだと思いたかったけど
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三限目の英語で小テストが行われ、解答と見直しを終えた私は、授業とまったく無関係なことに頭を悩ませている。
悩みの種は、先日の勘違い。
彩愛先輩への、好意について。
物心つく前から姉妹同然に育ち、年月を経て天敵としての関係性を築くこととなった。
友愛を抱くのは必然と言っても過言ではなく、照れ臭くて口にしないだけで私も彩愛先輩も自覚している。
だけど……私は彩愛先輩に対して、姉妹愛や友情だけでなく、恋愛感情を持っているのかもしれない。
この間は酷い目に遭わされたせいで気のせいだと結論付けたけど、考えれば考えるほどに、その結論が間違っているんじゃないかと思ってしまう。
私に負けて悔しがる彩愛先輩を眺めるのは楽しいけど、一番見たいのは笑顔だ。
友達に興味本位で胸を触られると少しだけ不快感があるのに、彩愛先輩が相手だと表面上では拒みつつも嫌だとは感じない。
どんなに不安な時でも彩愛先輩が一緒なら安心できるし、どこへ行っても彩愛先輩が隣にいてくれるだけで心から楽しめる。
こうしてみると、思い当たる節しかないなぁ……。
いやいや、だからと言ってあっさり認めるのは早計すぎる。
確信するに足る材料を得るまでは、あくまで一時的な思い込みという認識のままでいよう。
***
放課後になるといつも通り彩愛先輩と共に学校を出て、他愛ないことを話しながら家路を歩く。
「歌恋、もしかしてまだお腹の調子悪いの?」
「そんなことないですよ」
激辛ハンバーグによるダメージは、もう完全に癒えた。
あまり上品な話ではないけど、会話の途中に慌ててトイレに駆け込むようなことにはならない。
「ならいいわ。思い詰めた表情って言うと大げさかもしれないけど、なんとなく苦しそうだったから気になったのよ」
「ありがとうございます。私は至って健康ですから、心配しないでください」
「あたしたちの仲なんだから、恥ずかしい悩みでも遠慮せず相談しなさいよね。まぁ、胸が大きすぎてつらいって話だったら容赦しないけど」
「後半がなければ普通に頼もしい先輩だったのに、つくづく残念な人ですね」
呆れながらも、嬉しくて頬が緩む。
あぁ、ダメだ。
確信してしまった。
この上なくハッキリと……彩愛先輩への好意を、自覚してしまった。
もしかしたらずっと前から好きで、毎日一緒に過ごしているから気付くのが遅れたのかもしれない。
もちろん、徐々に思いが募って最近ようやく恋愛感情に変わった可能性もある。
どちらにしても、いま私が抱いているこの感情に、疑いの余地は一切ない。
「あんた顔赤いわよ。ホントに大丈夫?」
「大丈夫です。なんなら家まで競走してもいいですよ」
不敵な笑みを浮かべて挑発すると、彩愛先輩は「望むところよ!」と元気よく応じた。
いまは恋愛に興味がないとしても、必ず振り向かせてみせる。
固い決意を胸に、私は全力で駆け出した。
悩みの種は、先日の勘違い。
彩愛先輩への、好意について。
物心つく前から姉妹同然に育ち、年月を経て天敵としての関係性を築くこととなった。
友愛を抱くのは必然と言っても過言ではなく、照れ臭くて口にしないだけで私も彩愛先輩も自覚している。
だけど……私は彩愛先輩に対して、姉妹愛や友情だけでなく、恋愛感情を持っているのかもしれない。
この間は酷い目に遭わされたせいで気のせいだと結論付けたけど、考えれば考えるほどに、その結論が間違っているんじゃないかと思ってしまう。
私に負けて悔しがる彩愛先輩を眺めるのは楽しいけど、一番見たいのは笑顔だ。
友達に興味本位で胸を触られると少しだけ不快感があるのに、彩愛先輩が相手だと表面上では拒みつつも嫌だとは感じない。
どんなに不安な時でも彩愛先輩が一緒なら安心できるし、どこへ行っても彩愛先輩が隣にいてくれるだけで心から楽しめる。
こうしてみると、思い当たる節しかないなぁ……。
いやいや、だからと言ってあっさり認めるのは早計すぎる。
確信するに足る材料を得るまでは、あくまで一時的な思い込みという認識のままでいよう。
***
放課後になるといつも通り彩愛先輩と共に学校を出て、他愛ないことを話しながら家路を歩く。
「歌恋、もしかしてまだお腹の調子悪いの?」
「そんなことないですよ」
激辛ハンバーグによるダメージは、もう完全に癒えた。
あまり上品な話ではないけど、会話の途中に慌ててトイレに駆け込むようなことにはならない。
「ならいいわ。思い詰めた表情って言うと大げさかもしれないけど、なんとなく苦しそうだったから気になったのよ」
「ありがとうございます。私は至って健康ですから、心配しないでください」
「あたしたちの仲なんだから、恥ずかしい悩みでも遠慮せず相談しなさいよね。まぁ、胸が大きすぎてつらいって話だったら容赦しないけど」
「後半がなければ普通に頼もしい先輩だったのに、つくづく残念な人ですね」
呆れながらも、嬉しくて頬が緩む。
あぁ、ダメだ。
確信してしまった。
この上なくハッキリと……彩愛先輩への好意を、自覚してしまった。
もしかしたらずっと前から好きで、毎日一緒に過ごしているから気付くのが遅れたのかもしれない。
もちろん、徐々に思いが募って最近ようやく恋愛感情に変わった可能性もある。
どちらにしても、いま私が抱いているこの感情に、疑いの余地は一切ない。
「あんた顔赤いわよ。ホントに大丈夫?」
「大丈夫です。なんなら家まで競走してもいいですよ」
不敵な笑みを浮かべて挑発すると、彩愛先輩は「望むところよ!」と元気よく応じた。
いまは恋愛に興味がないとしても、必ず振り向かせてみせる。
固い決意を胸に、私は全力で駆け出した。
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