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14話 予定とは違ったけど②

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 映画館を後にしてしばらく歩き回った私たちは、二人同時にお腹が鳴ったのを合図にフードコートへと直行した。
 
 さすがに混雑しているものの、手近なところに二人掛けの席が空いているのを見つけ、ひとまず腰を下ろす。


「まずは私が荷物番をしますから、彩愛先輩から買いに行ってください」


「ありがと。それじゃ、激辛ビビンバでも注文して来ようかしら」


 数分後、注文を終えて番号札を持って席に戻った彩愛先輩は、「激辛がないなんて信じられないわ」と溜め息をついた。

 私は苦笑混じりに慰めつつ、自分の注文をするために席を立つ。

 たこ焼き、ラーメン、ハンバーガー、ステーキなどなど。いろんなお店があって、すぐには決められない。

 無意識のうちにクレープ屋さんの前に足を運んでいて、お昼ごはんなのでおかず系のクレープを購入する。

 品物を受け取って席に戻ると、ちょうど彩愛先輩の注文した品が出来上がり、呼び出しのアナウンスが鳴った。


「「いただきます」」


 照り焼きチキンの香ばしい匂いに食欲を刺激され、口を大きく開けてガブッと噛み付く。

 惚れ惚れするほどの絶妙な焼き加減で、皮はパリッとしていてお肉はジューシー。口の中に肉汁が溢れ、噛むごとに旨味が広がる。

 濃い目の味付けだけどシャキシャキのレタスが後味を爽やかにしてくれていて、もちもちのクレープ生地も具材に相性抜群で、上手く言えないけどとにかくおいしい!


「彩愛先輩、一口どうぞ。すごくおいしいですよ」


「ありがと。それじゃ、遠慮なく――」


 彩愛先輩は小さな口を目一杯開き、パクッとかぶりついた。


「んんっ、たひひゃにおいひいわっ」


「ですよね、このお店は大当たりです。って先輩、口の周りがベトベトですよ」


 紙ナプキンを手に取り、彩愛先輩の口元に付着した照り焼きソースとマヨネーズを拭う。

 私が口を付けたところに合わせてかぶりついたから、唇の周りだけじゃなく、ほっぺたまで汚れてしまっている。


「このビビンバそんなに辛くないから、歌恋も食べれるわよ。ほら、一口あげる」


 おこげを含む部分をスプーンですくい、私の口元に運んでくれた。


「いただきます。あむっ」


 熱々のビビンバで火傷しそうになりつつ、ハフハフと息を吐きながらしっかりと味わう。


「どう? おいしいでしょ?」


「はいっ、おいしいです。これなら一人前でも食べれるかもしれません」


「食べたいなら好きなだけ食べていいわよ」


「ありがとうございます。彩愛先輩も、クレープもっと食べていいですよ」


***

 本来観る予定だった映画は観れなかったけど、代わりに違う映画を二本も楽しみ、フードコートでおいしい物も食べた。

 ケンカする回数がいつもより少なかったことも含め、今日はいい休日を過ごせたと心から満足できる。

 いつもこうだったら、彩愛先輩を天敵扱いせずに済むんだけどなぁ。
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