14 / 67
14話 予定とは違ったけど②
しおりを挟む
映画館を後にしてしばらく歩き回った私たちは、二人同時にお腹が鳴ったのを合図にフードコートへと直行した。
さすがに混雑しているものの、手近なところに二人掛けの席が空いているのを見つけ、ひとまず腰を下ろす。
「まずは私が荷物番をしますから、彩愛先輩から買いに行ってください」
「ありがと。それじゃ、激辛ビビンバでも注文して来ようかしら」
数分後、注文を終えて番号札を持って席に戻った彩愛先輩は、「激辛がないなんて信じられないわ」と溜め息をついた。
私は苦笑混じりに慰めつつ、自分の注文をするために席を立つ。
たこ焼き、ラーメン、ハンバーガー、ステーキなどなど。いろんなお店があって、すぐには決められない。
無意識のうちにクレープ屋さんの前に足を運んでいて、お昼ごはんなのでおかず系のクレープを購入する。
品物を受け取って席に戻ると、ちょうど彩愛先輩の注文した品が出来上がり、呼び出しのアナウンスが鳴った。
「「いただきます」」
照り焼きチキンの香ばしい匂いに食欲を刺激され、口を大きく開けてガブッと噛み付く。
惚れ惚れするほどの絶妙な焼き加減で、皮はパリッとしていてお肉はジューシー。口の中に肉汁が溢れ、噛むごとに旨味が広がる。
濃い目の味付けだけどシャキシャキのレタスが後味を爽やかにしてくれていて、もちもちのクレープ生地も具材に相性抜群で、上手く言えないけどとにかくおいしい!
「彩愛先輩、一口どうぞ。すごくおいしいですよ」
「ありがと。それじゃ、遠慮なく――」
彩愛先輩は小さな口を目一杯開き、パクッとかぶりついた。
「んんっ、たひひゃにおいひいわっ」
「ですよね、このお店は大当たりです。って先輩、口の周りがベトベトですよ」
紙ナプキンを手に取り、彩愛先輩の口元に付着した照り焼きソースとマヨネーズを拭う。
私が口を付けたところに合わせてかぶりついたから、唇の周りだけじゃなく、ほっぺたまで汚れてしまっている。
「このビビンバそんなに辛くないから、歌恋も食べれるわよ。ほら、一口あげる」
おこげを含む部分をスプーンですくい、私の口元に運んでくれた。
「いただきます。あむっ」
熱々のビビンバで火傷しそうになりつつ、ハフハフと息を吐きながらしっかりと味わう。
「どう? おいしいでしょ?」
「はいっ、おいしいです。これなら一人前でも食べれるかもしれません」
「食べたいなら好きなだけ食べていいわよ」
「ありがとうございます。彩愛先輩も、クレープもっと食べていいですよ」
***
本来観る予定だった映画は観れなかったけど、代わりに違う映画を二本も楽しみ、フードコートでおいしい物も食べた。
ケンカする回数がいつもより少なかったことも含め、今日はいい休日を過ごせたと心から満足できる。
いつもこうだったら、彩愛先輩を天敵扱いせずに済むんだけどなぁ。
さすがに混雑しているものの、手近なところに二人掛けの席が空いているのを見つけ、ひとまず腰を下ろす。
「まずは私が荷物番をしますから、彩愛先輩から買いに行ってください」
「ありがと。それじゃ、激辛ビビンバでも注文して来ようかしら」
数分後、注文を終えて番号札を持って席に戻った彩愛先輩は、「激辛がないなんて信じられないわ」と溜め息をついた。
私は苦笑混じりに慰めつつ、自分の注文をするために席を立つ。
たこ焼き、ラーメン、ハンバーガー、ステーキなどなど。いろんなお店があって、すぐには決められない。
無意識のうちにクレープ屋さんの前に足を運んでいて、お昼ごはんなのでおかず系のクレープを購入する。
品物を受け取って席に戻ると、ちょうど彩愛先輩の注文した品が出来上がり、呼び出しのアナウンスが鳴った。
「「いただきます」」
照り焼きチキンの香ばしい匂いに食欲を刺激され、口を大きく開けてガブッと噛み付く。
惚れ惚れするほどの絶妙な焼き加減で、皮はパリッとしていてお肉はジューシー。口の中に肉汁が溢れ、噛むごとに旨味が広がる。
濃い目の味付けだけどシャキシャキのレタスが後味を爽やかにしてくれていて、もちもちのクレープ生地も具材に相性抜群で、上手く言えないけどとにかくおいしい!
「彩愛先輩、一口どうぞ。すごくおいしいですよ」
「ありがと。それじゃ、遠慮なく――」
彩愛先輩は小さな口を目一杯開き、パクッとかぶりついた。
「んんっ、たひひゃにおいひいわっ」
「ですよね、このお店は大当たりです。って先輩、口の周りがベトベトですよ」
紙ナプキンを手に取り、彩愛先輩の口元に付着した照り焼きソースとマヨネーズを拭う。
私が口を付けたところに合わせてかぶりついたから、唇の周りだけじゃなく、ほっぺたまで汚れてしまっている。
「このビビンバそんなに辛くないから、歌恋も食べれるわよ。ほら、一口あげる」
おこげを含む部分をスプーンですくい、私の口元に運んでくれた。
「いただきます。あむっ」
熱々のビビンバで火傷しそうになりつつ、ハフハフと息を吐きながらしっかりと味わう。
「どう? おいしいでしょ?」
「はいっ、おいしいです。これなら一人前でも食べれるかもしれません」
「食べたいなら好きなだけ食べていいわよ」
「ありがとうございます。彩愛先輩も、クレープもっと食べていいですよ」
***
本来観る予定だった映画は観れなかったけど、代わりに違う映画を二本も楽しみ、フードコートでおいしい物も食べた。
ケンカする回数がいつもより少なかったことも含め、今日はいい休日を過ごせたと心から満足できる。
いつもこうだったら、彩愛先輩を天敵扱いせずに済むんだけどなぁ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる