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飴ちゃんやろか?
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鈴子が朝目を覚ますと、ジェイの姿がベッドに無かった。ベッドから飛び上がり「ジェイ!」と声を張り上げながら家中を歩き出す。しかし何処にもジェイの姿は無く、鈴子の不安は頂点に達してパニックに陥ってしまった。
「あぁ……! ジェイーーーー! 何処なの……! いやーーーー! 一人は嫌なの……。怖い……!」
半狂乱で泣き叫ぶ鈴子。丁度、近くのコンビニから戻ったジェイが鈴子の泣き叫ぶ声を聞き、慌てて店舗から居住エリアまで走ってくるのだった。
「鈴子! 大丈夫か!」
「あぁ……! ジェイ! うわぁーん……、どうして居なくなっちゃったの! ずっと一緒って言ったでしょ……」
子供の様に泣き喚く鈴子をなだめるジェイは、鈴子を優しく抱きしめて何度もキスをする。
「悪かった……。コーヒーが切れてて買いに行ってたんだ。本当にすまない!」
ワーンと泣く鈴子だったが、ジェイに抱きしめられて落ち着きを取り戻す。
「今日もひっつき虫の鈴子なんだな? まあ良いだろう。好きなだけ引っ付けば良いさ」
腰に抱きつく鈴子を連れてキッチンに向かうジェイは、買ってきたインスタントコーヒーで二人分のコーヒーを作った。フワッと広がるコーヒーのアロマの匂いを、スンスンと嗅ぐ鈴子は「ミルク多めにして……」とジェイに告げるのだった。
「お子ちゃまコーヒーがいいのか? ハハハ、鈴子は小さな子供みたいだな。でも可愛い……」
ジェイは鈴子をジッと見つめている。鈴子も恥ずかしそうにジェイを見つめているが、時々恥ずかしそうに目を逸らすのだった。
結局は鈴子の精神状態を考えて土曜日は手彫りをする事を止めたジェイ。土日共々、鈴子と一日中一緒に過ごしたのだった。
日曜日の午後には少しジェイが離れても大丈夫になってきた鈴子。夜には一人でお風呂に入れるようになり、べったりと引っ付かなくても大丈夫になっていたが、30分以上ジェイが自分の視界から消えるのを嫌がるのだった。
「明日は店を開けるから、鈴子は店の中で座っていろよ。いいな?」
コクリと頭を下げる鈴子の方を見て、ニコッと優しくジェイは微笑んだのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お盆休みが明けて出勤してみたら、まあ、えらいヤバイ感じですねえ。何やらかしたん?」
出勤した純平がニヤニヤ顔で、ジェイの側に座っている鈴子とジェイを交互に見つめる。ジェイが「詳しくは後でな……」と告げるが、純平は鈴子の様子が以前と違うことに素早く気が付く。元々容姿は子供っぽかった鈴子だが、振る舞いは大人だったのに、目の前に居る鈴子は、椅子に座って脚をブンブン振る小さな子供のようだった。
ギョッとした顔でジェイを見る純平に、ジェイは困った様な顔をして見つめ返す。
そこからは純平は何も言わなくなり、「鈴子ちゃん、飴ちゃんやろか?」と子供と話すような態度で優しく接してくれるのだった。
そんな鈴子の状態が一週間以上続いた頃、明らかな無断欠勤が続いても、徹也の店から何も連絡が無いことを不審に思っていたジェイ。しかしその疑問は簡単に解けるのだった。
『スネーク! 今日ね、頼まれていた鈴子のバイト先のカフェに様子を見に行ってみたの。じゃあ、既にもぬけの殻! 閉店して貸店舗のサインが出ていたのよ!』
興奮気味の奈菜がジェイに電話で告げてきたのだ。
『逃げたか……。分かった。奈菜ありがとうな』
電話を切ったジェイは、怒りで目の前の木製のダイニングテーブルを、ダンっと大きな音を立てながら叩く。
「ジェイ? どうしたの? 大きな音がしたけど……」
不安そうな鈴子がヒョッコリと通路から顔を出す。最近は店舗と居住エリアに離れていても、同じ敷地内なら大丈夫になった鈴子。それでも時々不安そうに店舗を覗きに来ていたが、最初のように終始べったりではなくなっていた。
「ああ、大丈夫だ鈴子。しつこいセールスの電話だったんだ」
笑顔で鈴子の方を見るジェイを見て、安心したように「そう、良かった」とニッコリと笑って居住エリアに戻っていく鈴子。
「なんや、ええ展開じゃあなさそうやね」
側で聞いていた純平が心配そうな顔をしてジェイに尋ねる。ジェイは「はぁー」と大きな溜め息を吐いて純平に告げた。
「ああ、鈴子のバイト先のカフェが閉店していたらしい。既に貸店舗のサインがあったそうだから、あの日の後直ぐに店を畳んだんだろう……。行動が早すぎる。かなり怪しいな」
「明らかにそのオーナーの森本ってヤツが怪しいなあ。何か鈴子ちゃんにやったのかもな」
ジェイは想像はしたくないが、最悪の事態があったのかと覚悟はしていた。しかしあの日に鈴子の身体を確認しても、それらしい痕跡はなかったのだ。あり得るのは「未遂」。
「鈴子が望むなら、俺はヤツを見つけ出して仕返しをしてやるさ」
ニヤッと笑うジェイを見て「お前のやり方はえげつないから怖いわ!」と純平はブルブル震えるジェスチャーをしてみせるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「鈴子、今日の分のピルはちゃんと飲んだのか?」
キッチンの上に置かれていた鈴子の避妊ピルケースを片手に持ったジェイが、カシャカシャとケースを振りながら鈴子に尋ねる。
「うん、飲んだ」
お風呂上がりに冷えた桃のミネラルウォーターを飲んでいる鈴子が答える。
「なあ、明日の夜に鈴子の手彫りをしようと思うけど、鈴子はどうだ? 出来そうか?」
少し心配そうに尋ねるジェイ。鈴子はそんな様子のジェイに微笑みかけて答える。
「うん……。大丈夫。私もシテ欲しかったの……、ジェイ」
少し顔を赤らめて答える鈴子。恥ずかしいのかプイッと横を向いて、スタスタとテレビの方に歩いて行ってしまった。その様子を目で追っていたジェイは「何だそりゃ……」とボソリと呟く。同時にジェイの身体もボッと熱くなり、愚息がグイッと起き上がりそうになるのを必死でなだめるのだ。
鈴子の精神状態を優先するために、あの日からジェイは鈴子を抱いてはいなかった。子供の様に無邪気に笑い、後を付いてくる鈴子を自分の欲望で汚すのを躊躇われたのだが、どうやら鈴子本人が行為を希望しているような言動なのだ。
「明日だ、あした……」
愚息をパンツの上から撫でながら、ジェイは嬉しそうに呟くのだった。
「あぁ……! ジェイーーーー! 何処なの……! いやーーーー! 一人は嫌なの……。怖い……!」
半狂乱で泣き叫ぶ鈴子。丁度、近くのコンビニから戻ったジェイが鈴子の泣き叫ぶ声を聞き、慌てて店舗から居住エリアまで走ってくるのだった。
「鈴子! 大丈夫か!」
「あぁ……! ジェイ! うわぁーん……、どうして居なくなっちゃったの! ずっと一緒って言ったでしょ……」
子供の様に泣き喚く鈴子をなだめるジェイは、鈴子を優しく抱きしめて何度もキスをする。
「悪かった……。コーヒーが切れてて買いに行ってたんだ。本当にすまない!」
ワーンと泣く鈴子だったが、ジェイに抱きしめられて落ち着きを取り戻す。
「今日もひっつき虫の鈴子なんだな? まあ良いだろう。好きなだけ引っ付けば良いさ」
腰に抱きつく鈴子を連れてキッチンに向かうジェイは、買ってきたインスタントコーヒーで二人分のコーヒーを作った。フワッと広がるコーヒーのアロマの匂いを、スンスンと嗅ぐ鈴子は「ミルク多めにして……」とジェイに告げるのだった。
「お子ちゃまコーヒーがいいのか? ハハハ、鈴子は小さな子供みたいだな。でも可愛い……」
ジェイは鈴子をジッと見つめている。鈴子も恥ずかしそうにジェイを見つめているが、時々恥ずかしそうに目を逸らすのだった。
結局は鈴子の精神状態を考えて土曜日は手彫りをする事を止めたジェイ。土日共々、鈴子と一日中一緒に過ごしたのだった。
日曜日の午後には少しジェイが離れても大丈夫になってきた鈴子。夜には一人でお風呂に入れるようになり、べったりと引っ付かなくても大丈夫になっていたが、30分以上ジェイが自分の視界から消えるのを嫌がるのだった。
「明日は店を開けるから、鈴子は店の中で座っていろよ。いいな?」
コクリと頭を下げる鈴子の方を見て、ニコッと優しくジェイは微笑んだのだった。
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「お盆休みが明けて出勤してみたら、まあ、えらいヤバイ感じですねえ。何やらかしたん?」
出勤した純平がニヤニヤ顔で、ジェイの側に座っている鈴子とジェイを交互に見つめる。ジェイが「詳しくは後でな……」と告げるが、純平は鈴子の様子が以前と違うことに素早く気が付く。元々容姿は子供っぽかった鈴子だが、振る舞いは大人だったのに、目の前に居る鈴子は、椅子に座って脚をブンブン振る小さな子供のようだった。
ギョッとした顔でジェイを見る純平に、ジェイは困った様な顔をして見つめ返す。
そこからは純平は何も言わなくなり、「鈴子ちゃん、飴ちゃんやろか?」と子供と話すような態度で優しく接してくれるのだった。
そんな鈴子の状態が一週間以上続いた頃、明らかな無断欠勤が続いても、徹也の店から何も連絡が無いことを不審に思っていたジェイ。しかしその疑問は簡単に解けるのだった。
『スネーク! 今日ね、頼まれていた鈴子のバイト先のカフェに様子を見に行ってみたの。じゃあ、既にもぬけの殻! 閉店して貸店舗のサインが出ていたのよ!』
興奮気味の奈菜がジェイに電話で告げてきたのだ。
『逃げたか……。分かった。奈菜ありがとうな』
電話を切ったジェイは、怒りで目の前の木製のダイニングテーブルを、ダンっと大きな音を立てながら叩く。
「ジェイ? どうしたの? 大きな音がしたけど……」
不安そうな鈴子がヒョッコリと通路から顔を出す。最近は店舗と居住エリアに離れていても、同じ敷地内なら大丈夫になった鈴子。それでも時々不安そうに店舗を覗きに来ていたが、最初のように終始べったりではなくなっていた。
「ああ、大丈夫だ鈴子。しつこいセールスの電話だったんだ」
笑顔で鈴子の方を見るジェイを見て、安心したように「そう、良かった」とニッコリと笑って居住エリアに戻っていく鈴子。
「なんや、ええ展開じゃあなさそうやね」
側で聞いていた純平が心配そうな顔をしてジェイに尋ねる。ジェイは「はぁー」と大きな溜め息を吐いて純平に告げた。
「ああ、鈴子のバイト先のカフェが閉店していたらしい。既に貸店舗のサインがあったそうだから、あの日の後直ぐに店を畳んだんだろう……。行動が早すぎる。かなり怪しいな」
「明らかにそのオーナーの森本ってヤツが怪しいなあ。何か鈴子ちゃんにやったのかもな」
ジェイは想像はしたくないが、最悪の事態があったのかと覚悟はしていた。しかしあの日に鈴子の身体を確認しても、それらしい痕跡はなかったのだ。あり得るのは「未遂」。
「鈴子が望むなら、俺はヤツを見つけ出して仕返しをしてやるさ」
ニヤッと笑うジェイを見て「お前のやり方はえげつないから怖いわ!」と純平はブルブル震えるジェスチャーをしてみせるのだった。
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「鈴子、今日の分のピルはちゃんと飲んだのか?」
キッチンの上に置かれていた鈴子の避妊ピルケースを片手に持ったジェイが、カシャカシャとケースを振りながら鈴子に尋ねる。
「うん、飲んだ」
お風呂上がりに冷えた桃のミネラルウォーターを飲んでいる鈴子が答える。
「なあ、明日の夜に鈴子の手彫りをしようと思うけど、鈴子はどうだ? 出来そうか?」
少し心配そうに尋ねるジェイ。鈴子はそんな様子のジェイに微笑みかけて答える。
「うん……。大丈夫。私もシテ欲しかったの……、ジェイ」
少し顔を赤らめて答える鈴子。恥ずかしいのかプイッと横を向いて、スタスタとテレビの方に歩いて行ってしまった。その様子を目で追っていたジェイは「何だそりゃ……」とボソリと呟く。同時にジェイの身体もボッと熱くなり、愚息がグイッと起き上がりそうになるのを必死でなだめるのだ。
鈴子の精神状態を優先するために、あの日からジェイは鈴子を抱いてはいなかった。子供の様に無邪気に笑い、後を付いてくる鈴子を自分の欲望で汚すのを躊躇われたのだが、どうやら鈴子本人が行為を希望しているような言動なのだ。
「明日だ、あした……」
愚息をパンツの上から撫でながら、ジェイは嬉しそうに呟くのだった。
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