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会議の後は……2

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  会議は無事に終わった。西浦さんが用意してくれたパワーポイントはよくできていて、本当に資料を読み込んで作ってくれたのだと浮田は思った。



「西浦さんのパワーポイント良かったよ」



 西浦さんは少し顔を赤くして「ありがとうございます」と小さな声で返事をする。しかし、今日は本当に緊張した。緊張したのは統括部長に各部長達や他の課の課長へではなく、西浦さんに緊張したのだが……。



 プレゼン中、西浦さんはずっと目を見開いて浮田を凝視していたのだ。その所為で何かやらかしたのかと気が気でならなかった。



 しかも上手くできた箇所など、余計にカッと目を開く西浦さんからどうしても注意が離せなく、失敗しようものなら、鞭で引っ叩くわよと言われているような気さえした。



 その西浦さんの態度が段々と御褒美のように思えてきたので、徐々に下半身を熱くしてしまっていた。あの西浦さんの突き刺すような視線が……イイ! と。



「ちょと目が痛いかも……。少しトイレに行ってきます」



 妄想に浸っている間に西浦さんが会議室から出て行こうとする。まずい! 今は折角二人きりなのだ。この好機を逃がしたくはないと浮田は声を上げる。



「ま、待ってくれないか!」



 勇気を出して浮田は西浦さんを引き留めた。彼女は「はい?」と不思議そうな顔を向けている。少し必死過ぎたかもしれない。



「今日はお弁当を作りすぎてしまって。良かったら一緒に食べないかな?」



 ――言った! 言ってやった! しかし少し恥ずかしくなってきた。あれ、何だか耳まで赤い気がするぞ。



 小さな西浦さんを見下げてジッと見つめていた浮田は、思わずスッと視線を逸らしてしまう。耳に自分の心臓の音が響いてくる。ドクドクと勢いよく。



「お茶、入れてきます……」



 ぶっきら棒に答えた西浦さんは顔を隠すようにしているようだ。これは一緒に食べられるということで良いのか? と、安心した浮田は「はぁ……」と周囲に聞こえないように溜め息をつく。



「ありがとう。俺はお弁当を取ってくるよ」



 浮田は席にお弁当を取りに行く。きっと端からは、何をそんなに慌てているのかと思われていただろう。ほぼ小走りの浮田を横目で見ている社員が何人もいたのだから。



 急いで会議室に戻りお弁当を並べようとしたときに、背後からゾクッとした何かを感じた浮田は、バッと背後を振り返る。



「浮田課長ぅ? 何をしているんですか~?」



 入り口のドアが開き、ヌーッと顔を出したのは総務課の新藤さんだった。



「課長ぅ、お昼はどうされるんですか? 良かったら一緒に食べません?」



 彼女は香水の匂いがキツい。スメハラというやつなのだが、男性陣は特に「臭い」とは言っていないので、浮田だけが不快に思っているのだろう。



 ジリジリと後退りしながら「新藤さん……、あのね、ちょっと先約が」と返してみる。しかし新藤さんは「先約ぅですか? イイじゃないですか、そちらを断れば」と、更に距離を詰めてきた。



 彼女のプックリとしたアヒル口が薄ら開き、小さな舌が隙間から伸びてくる。それはチョロっと唇を舐めて口内に戻るを繰り返す。蛇に睨まれた蛙のような気分になった浮田は、背骨に沿って汗が流れていくのが分かった。



 ――く、喰われる! 助けてくれ!

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