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歓迎会2

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 目立つのは避けたいとか言いながら目立ってしまった。これはいけないと、トイレに入り、鞄に仕舞っている「武田くんと木下くん」の二次創作同人イラストをコッソリと見る。母親と一緒に行った同人誌即売会で買ったこのポストカードは、瑠璃子の心のオアシスだった。



「もう大丈夫。推しのリチャージできた!」



 トイレから出た瑠璃子は宴会場に向かって歩いていると、浮田課長の声が聞こえてくる。



「いや、だ……だからね、そういうのは……。あっ! お、お水もらってくるから」

「課長ぅ、もう酔ってフラフラなんですぅ。歩けないからぁ、タクシーまで連れていってくださぁい~。そしてそのまま、ウフフ」

「え? あぁぁぁ!」



 出口の方に向かって浮田課長を引っ張るようにし、胸を押し付けている女性がいる。あれは柴田さんだ。彼女はポッテリ唇のナイスバディの受付嬢。営業二部主催の歓迎会に何故かやって来た人物で、他の女子社員が雪女ビームを放ってもビクともしない逸材。



 ――これは、推しの貞操の危機!



「柴田さん! 気分が悪いなら私が看病をするわよ。水なら、あ、店員さん~! お水一杯ください。この人が気分が悪いみたいで!」



 瑠璃子は二人の前にズカズカと進んでいき、大きな声を出す。店員が直ぐに水を持って現れたので、「この人、タクシーに載せるので手伝ってくれませんか?」と声を掛けると、柴田はギョッとした顔をした。



「だ、大丈夫です。もう気分は良くなったので!」



 吐き捨てるように言った柴田は、そそくさと宴会場へと戻っていった。



 その場に残された瑠璃子と浮田の間に暫く沈黙が流れる。するとその沈黙を破るように浮田が口を開いた。



「西浦さんだよね? ありがとう。本当に助かったよ……」

「襲われていたのですか?」

「いや、まあ……。少し……」



 顔を真っ赤にして下を向く浮田課長は、モゴモゴと口を動かしている。こんなにハイスペックな男なのに、何だか女性に慣れていない反応だなと瑠璃子は浮田課長を凝視する。もしや……?



「浮田課長……、もしかすると女性が苦手なんですか?」



 瑠璃子は仁王立ちで眼鏡をクイッと上に上げる。浮田課長は背が高いので、見上げるようになってしまうが、仁王立ちのせいか瑠璃子の方が偉そうだ。



「え……、うん、まあ……。苦手というか、緊張して……」



 ――ああ、推し、推しよ! 貴方はやはりそうだったのね!



「浮田課長、お任せください! 私はアシスタントとして、課長(の貞操)をお守りいたします~! 初めては大切な人に取っておくものです」

「え? えええ? あれ? まあ、うん……、お願いします?」



 浮田課長は少し混乱しているようだったが、瑠璃子は使命に燃えて「お任せを!」と声を上げるのだった。
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