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35 俺が性器を挿入したいと思うのは……
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「わー、お祭りみたいね!」
夜の盛り場を初めて出歩くルーチェは、目をキラキラさせて辺りを観察している。ジオンが生きていたときは、決して夜の盛り場などに連れて行ってもらったことなどないのだから。
提灯がたくさん吊されており、そこから漏れる光はいわゆる日本のお祭りと同じだ。ルーチェにしてみれば、子供の頃に家族で行った近所のお祭りを思い出し、寂しさとワクワクが同居した不思議な気分になっている。
「マスター、危ない! 前を見てくれ」
道で浮かれてクルクル回るルーチェをグッと引き寄せたディアマンテは、もう少しでぶつかりそうだった酔っ払いを冷めた目で睨む。
「ヒュー、お熱いねえ~」
往来で抱き合っている二人を酔っ払いが揶揄う。ルーチェは恥ずかしさからディアマンテを押しのけて一人で歩き出した。そんなルーチェの直ぐ後ろを歩くディアマンテは、ジーッと穴が開くほどにこちらを見つめていた。
「ねえ、ここで御飯が食べたいわ」
指さした店は酒場と書いてあったが、看板に「肉汁滴る骨付き肉のバーベキューが人気!」と書かれている。それを「肉汁……」と譫言のように繰り返し見つめてしまう。
「ああ、マスター入ろう」
店員にテーブルに案内された二人は、早速「骨付き肉のバーベキュー」を注文する。しかし店内には店員以外の女はルーチェだけで、周囲の客がチラチラと二人を見ていた。
「骨付き肉は結構大きいから二人で一個でもいいかも? あ、でもお兄さんは身体が大きいから足りないかしら? ウフフ……」
「俺はいい。マスターの股から出る体液――」
「わーーーー! 彼はお腹が空いていないから大丈夫です」
「そ、そう……? じゃあ飲み物はどうする? うちはこのベルベリが甘くてお勧めよ!」
「じゃあそれください! 彼は……、あそこの人が飲んでいるジョッキの――」
「セルベサのこと? わかったわ」
周りに怪しまれないように、ディアマンテ用にも飲み物を注文する。
「マスター、ここの客層は余り良くない……」
「お酒を飲んでいる人が多いからそう思うのよ。大丈夫だって」
周囲を注意深く見ているディアマンテは、各テーブルで酒を浴びるように飲んでいる者や、酔っ払って店員の女にセクハラまがいなことをしている者達を監視しているようだ。
「アンタねえ、そんなに私に触りたかったら、別料金を払ってくれる!」
「何でえ、けちくせえなあ! 減るもんでもないだろう」
店の中には怪しげなドアが幾つもあり、そこへ向かって店員の女とその女を卑猥に触る男がいそいそと入っていく。そんな店内の様子を真顔で眺めるディアマンテは、「そういうことか……」と小さく呟いた。
暫くしてテーブルに運ばれた骨付き肉のバーベキューを、大喜びで食べ出すルーチェは、全く周りを気にしない。こういう場に来たことがなく、何が行われているかを理解していないからだ。しかし、ディアマンテにしてみればこの店は、木材屋の同僚の無駄話に出てきた酒場兼売春宿だと直ぐに理解できたのだろう。だからこそ周囲の男達がルーチェを品定めでもするように見つめているのを、不快に感じながら静かに威嚇している。
「ねえ、アンタいい男だね。身体も逞しくて強そう。それにその美しく光る瞳が最高だわ……」
ジョッキに入った酒を運んできた店員の女が、ワザと胸の膨らみをディアマンテに押しつける。それを見たルーチェは、飲んでいた飲み物を吹き出しそうになった。
――ちょっと、このお姉さん! 連れが目の前にいるのに、ナンパって酷くない?
「こんなお子ちゃまの子守も大変でしょ? 今夜は私に癒やされたくはない?」
不自然なほどに大きな胸をこれでもかと押しつける店員に、「……止めろ」と冷たく低い声で伝え睨むディアマンテは、テーブルの上に載せてあるルーチェの手をソッと握る。
「俺が性器を挿入したいと思うのは、この人だけだ……。わかったら他を当たれ!」
「な、何よ! この少女趣味変態!」
悔し紛れに悪態をつく店員は、恥ずかしさからか逃げるように店の奥へと入っていく。残されたルーチェの顔は耳まで赤い。周囲の席にいた男達は「ヒューヒュー」「お熱いねえお二人さん!」と野次を飛ばしている。
「もう……、ディアマンテってば何を言っているのよ! 本当にエッチ……!」
ルーチェはテーブルにあった飲み物を一気に飲み干した。
「マスター、それは酒だ……。一気に飲む物では――」
ディアマンテの忠告は既に遅く、コップをテーブルに戻したルーチェの視界はグラリと揺れている。
「は、はれ?? どうひて、へ、部屋がまわってひぃるの?」
自分が注文した物が酒だと知らなかったルーチェは、空になったグラスをジッと見つめる。
「こへぇ、おいちいよ! もう一杯!」
「ダメだ、マスター! 貴方の身体にはこれ以上の酒は毒だ……」
呂律の回らないルーチェを立ち上がって抱き寄せたディアマンテは、骨付き肉のバーベキューを持ち帰り用に包んで貰う。ルーチェを大事そうに抱きかかえながら、酒場から出て宿屋に戻って行くのだった。
夜の盛り場を初めて出歩くルーチェは、目をキラキラさせて辺りを観察している。ジオンが生きていたときは、決して夜の盛り場などに連れて行ってもらったことなどないのだから。
提灯がたくさん吊されており、そこから漏れる光はいわゆる日本のお祭りと同じだ。ルーチェにしてみれば、子供の頃に家族で行った近所のお祭りを思い出し、寂しさとワクワクが同居した不思議な気分になっている。
「マスター、危ない! 前を見てくれ」
道で浮かれてクルクル回るルーチェをグッと引き寄せたディアマンテは、もう少しでぶつかりそうだった酔っ払いを冷めた目で睨む。
「ヒュー、お熱いねえ~」
往来で抱き合っている二人を酔っ払いが揶揄う。ルーチェは恥ずかしさからディアマンテを押しのけて一人で歩き出した。そんなルーチェの直ぐ後ろを歩くディアマンテは、ジーッと穴が開くほどにこちらを見つめていた。
「ねえ、ここで御飯が食べたいわ」
指さした店は酒場と書いてあったが、看板に「肉汁滴る骨付き肉のバーベキューが人気!」と書かれている。それを「肉汁……」と譫言のように繰り返し見つめてしまう。
「ああ、マスター入ろう」
店員にテーブルに案内された二人は、早速「骨付き肉のバーベキュー」を注文する。しかし店内には店員以外の女はルーチェだけで、周囲の客がチラチラと二人を見ていた。
「骨付き肉は結構大きいから二人で一個でもいいかも? あ、でもお兄さんは身体が大きいから足りないかしら? ウフフ……」
「俺はいい。マスターの股から出る体液――」
「わーーーー! 彼はお腹が空いていないから大丈夫です」
「そ、そう……? じゃあ飲み物はどうする? うちはこのベルベリが甘くてお勧めよ!」
「じゃあそれください! 彼は……、あそこの人が飲んでいるジョッキの――」
「セルベサのこと? わかったわ」
周りに怪しまれないように、ディアマンテ用にも飲み物を注文する。
「マスター、ここの客層は余り良くない……」
「お酒を飲んでいる人が多いからそう思うのよ。大丈夫だって」
周囲を注意深く見ているディアマンテは、各テーブルで酒を浴びるように飲んでいる者や、酔っ払って店員の女にセクハラまがいなことをしている者達を監視しているようだ。
「アンタねえ、そんなに私に触りたかったら、別料金を払ってくれる!」
「何でえ、けちくせえなあ! 減るもんでもないだろう」
店の中には怪しげなドアが幾つもあり、そこへ向かって店員の女とその女を卑猥に触る男がいそいそと入っていく。そんな店内の様子を真顔で眺めるディアマンテは、「そういうことか……」と小さく呟いた。
暫くしてテーブルに運ばれた骨付き肉のバーベキューを、大喜びで食べ出すルーチェは、全く周りを気にしない。こういう場に来たことがなく、何が行われているかを理解していないからだ。しかし、ディアマンテにしてみればこの店は、木材屋の同僚の無駄話に出てきた酒場兼売春宿だと直ぐに理解できたのだろう。だからこそ周囲の男達がルーチェを品定めでもするように見つめているのを、不快に感じながら静かに威嚇している。
「ねえ、アンタいい男だね。身体も逞しくて強そう。それにその美しく光る瞳が最高だわ……」
ジョッキに入った酒を運んできた店員の女が、ワザと胸の膨らみをディアマンテに押しつける。それを見たルーチェは、飲んでいた飲み物を吹き出しそうになった。
――ちょっと、このお姉さん! 連れが目の前にいるのに、ナンパって酷くない?
「こんなお子ちゃまの子守も大変でしょ? 今夜は私に癒やされたくはない?」
不自然なほどに大きな胸をこれでもかと押しつける店員に、「……止めろ」と冷たく低い声で伝え睨むディアマンテは、テーブルの上に載せてあるルーチェの手をソッと握る。
「俺が性器を挿入したいと思うのは、この人だけだ……。わかったら他を当たれ!」
「な、何よ! この少女趣味変態!」
悔し紛れに悪態をつく店員は、恥ずかしさからか逃げるように店の奥へと入っていく。残されたルーチェの顔は耳まで赤い。周囲の席にいた男達は「ヒューヒュー」「お熱いねえお二人さん!」と野次を飛ばしている。
「もう……、ディアマンテってば何を言っているのよ! 本当にエッチ……!」
ルーチェはテーブルにあった飲み物を一気に飲み干した。
「マスター、それは酒だ……。一気に飲む物では――」
ディアマンテの忠告は既に遅く、コップをテーブルに戻したルーチェの視界はグラリと揺れている。
「は、はれ?? どうひて、へ、部屋がまわってひぃるの?」
自分が注文した物が酒だと知らなかったルーチェは、空になったグラスをジッと見つめる。
「こへぇ、おいちいよ! もう一杯!」
「ダメだ、マスター! 貴方の身体にはこれ以上の酒は毒だ……」
呂律の回らないルーチェを立ち上がって抱き寄せたディアマンテは、骨付き肉のバーベキューを持ち帰り用に包んで貰う。ルーチェを大事そうに抱きかかえながら、酒場から出て宿屋に戻って行くのだった。
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