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8 ゴーレムって高級志向なの?
しおりを挟む 翌日もいろいろとゴーレムを動かす為に試行錯誤をしていたルーチェだが、一向にゴーレムは動かなかった。
「何かが足りない……。でも何かしら?」
床に転がる物言わぬゴーレムを見つめるルーチェは、毛の無いツルツルの頭部をペンペンと手で叩く。そして「あ、毛が無い!」と声を上げた。
「そうか、そうか! 毛が無いから怒って動かないのだね、君は!」
ルーチェは急いで自分の洋裁箱の中に入っていた毛糸を取り出す。現代に住んでいたときには、毛糸で手作りマスコットの髪を作ったことがあった。それを思い出して毛糸を使って髪を作ってみる。
「あれ? 何か変……。ズラっていうより、何とも言えない不細工さ! 美形の顔に毛糸の髪……!」
ゴーレムに毛糸の髪を乗せて、その様子がツボに嵌り笑いだす。笑いが止まらないと声を上げていたが、ゴトッと大きな音が背後の棚からし、ルーチェは驚きからビクッと身体をジャンプさせた。
「お、驚かさないでよ! 何が落ちたの……?」
ルーチェは床に転がる布に包まれた物を拾い上げる。そして「あ……!」と声を出しながら布から中身を取り出した。
「ジオンの遺髪……。どうしてこれが棚から落ちたのだろう。奥に仕舞っていたのに」
ジオンの遺髪を手に取り、それをマジマジと見ていたルーチェはおもむろにゴーレムの頭部に載せてみる。すると遺髪が銀色に光り出して、一本一本素早くゴーレムの頭皮に移植していく。
「う、うわー! これはハゲさん大喜び!」
あっという間にジオンの遺髪がゴーレムに移植され、ゴーレムは美しく長い銀髪を手に入れていた。ルーチェはゴーレムに移植された銀髪を懐かしそうにそっと撫でる。触り心地はジオンの頭髪のままだった。
「へへへ、ジオンの髪だ……」
ルーチェはグイッとゴーレムの髪を引っ張ってみるが、完全に頭皮に取り込まれているようで、頭が髪に着いて移動する。その様子を観察しながらルーチェはジオンの残した書き置きを思い出した。
「そうか……! ジオンの髪には魔力が宿っているんだった。それにこのゴーレムはジオンの息子さんの魂魄が組み込まれているのよね」
頭髪ができたゴーレムは更に人間味をおびたが、まだ動くことはない。しかも角膜は無いままなので、不気味さは増していた。
「これで眼があれば完璧なのかな……? 眼になりそうなものと……」
ルーチェは周囲を見渡すが、特にめぼしい物は見つからない。先ほどのように棚から落ちてくれればと願ってみるが、少しオカルトっぽく感じ「やっぱりいいわ」とボソリと声を出す。
「光る玉的な物よね。光る……!」
ルーチェは手をポンと叩きながら閃いたようなポーズをとり、倉庫へと大急ぎで向かった。木でできたB5サイズの箱を手に取り、そっと箱を開ける。中にはたくさんの光る石が入っており、それを満足げに見て「眼にもってこい」と喜んだ。
箱を持ってゴーレムの前に移動して、中から緑の石を取り出す。それをゴーレムの眼に載せるが、特に何の変化も起きなかった。
「そうかい、君は緑の眼はお気に召さないのだな。じゃあ、青はどうだ?」
ルーチェは青の光る石をゴーレムの眼に置く。石は少し揺れて光るが、シューッと光は消えていった。それを見て「青もダメなの?」と箱の中を物色し、次々と色取り取りの光る石を試す。反応する石もあれば全く無反応の物もあり、結局はどれもゴーレムの中には取り込まれていかない。
「君ってさあ、少しこだわりが強くない? もう、どれでもいいじゃない!」
すると眼球が無いはずのゴーレムがルーチェの耳朶を見つめている気がする。ルーチェはその視線(?)に気が付き「え? これ?」と、自分の耳に付いているダイヤのピアスを指さす。もちろん動くわけない筈のゴーレムだが、ルーチェには首が立てに少し動いたような気がした。
恐る恐る耳に手をやりピアスを外し、ソッとピアスをゴーレムの眼球に載せる。すると目映い光を放ってダイヤモンドのピアスは眼球に変化していく。
「あーー! お爺ちゃんの形見なのにーー!」
ゴーレムの眼球になってしまった形見のピアスは、もちろん取り外すこともできない。「酷い!」と絶叫したルーチェだったが、ゴーレムに誕生した美しい眼球を見て息を飲んだ。瞳孔は黒いが角膜はシルバーで、虹彩は正しくダイヤモンドの用にキラキラと光っているのだから。
「き、綺麗……!」
ルーチェはゴーレムの顔を覗き込む。髪も生えて目もあるのですっかりと人らしくなっている。美しい顔を間近で見たルーチェは、急に恥ずかしくなり顔を少し赤らめる。こんなに間近で若い成人男性の顔を見たことなど、無いのだからしょうがない。パッと手を離して横を向くルーチェは、チラチラとゴーレムに視線を送った。
「今なら動くかもしれない……?」
ルーチェは急いで床に魔方陣を書き出す。ジオンの部屋で見つけた禁忌の人型ゴーレム用の魔方陣は、何度も書いているためにルーチェは全てを覚えてしまっていたのだから。
書き終わった魔方陣の上にゴーレムを載せ、ゆっくりと禁忌の呪文を唱えていった。
「×○☆□××$○$□$!」
ルーチェの呪文が形となって空中に浮き、そのままゴーレムへと流れ込む。稲妻のような光を放ったゴーレムと、虹色に輝く魔方陣が宙に浮かぶ。魔方陣がゴーレムに吸収されていき、突風が突き抜けて、同時に目が開けていられないような猛烈な光を放った。
「せ、成功? ジオンでもできなかった人型ゴーレムの魔法! 目に使ったダイヤモンドの力と遺髪のおかげ?」
目映い光が収まり。少し浮いていたゴーレムは地面に落ちていく。先ほどまでのただの粘土人形だった物は、明らかに人体の皮膚に変化していた。しかしゴーレムはジッと停止したま動かない。
「変化したのに動かないの? 何が足りないのよ……!」
もう粘土人形ではなくなったゴーレムを、大きな溜め息を吐きながらルーチェは見つめているしかなかった。
「何かが足りない……。でも何かしら?」
床に転がる物言わぬゴーレムを見つめるルーチェは、毛の無いツルツルの頭部をペンペンと手で叩く。そして「あ、毛が無い!」と声を上げた。
「そうか、そうか! 毛が無いから怒って動かないのだね、君は!」
ルーチェは急いで自分の洋裁箱の中に入っていた毛糸を取り出す。現代に住んでいたときには、毛糸で手作りマスコットの髪を作ったことがあった。それを思い出して毛糸を使って髪を作ってみる。
「あれ? 何か変……。ズラっていうより、何とも言えない不細工さ! 美形の顔に毛糸の髪……!」
ゴーレムに毛糸の髪を乗せて、その様子がツボに嵌り笑いだす。笑いが止まらないと声を上げていたが、ゴトッと大きな音が背後の棚からし、ルーチェは驚きからビクッと身体をジャンプさせた。
「お、驚かさないでよ! 何が落ちたの……?」
ルーチェは床に転がる布に包まれた物を拾い上げる。そして「あ……!」と声を出しながら布から中身を取り出した。
「ジオンの遺髪……。どうしてこれが棚から落ちたのだろう。奥に仕舞っていたのに」
ジオンの遺髪を手に取り、それをマジマジと見ていたルーチェはおもむろにゴーレムの頭部に載せてみる。すると遺髪が銀色に光り出して、一本一本素早くゴーレムの頭皮に移植していく。
「う、うわー! これはハゲさん大喜び!」
あっという間にジオンの遺髪がゴーレムに移植され、ゴーレムは美しく長い銀髪を手に入れていた。ルーチェはゴーレムに移植された銀髪を懐かしそうにそっと撫でる。触り心地はジオンの頭髪のままだった。
「へへへ、ジオンの髪だ……」
ルーチェはグイッとゴーレムの髪を引っ張ってみるが、完全に頭皮に取り込まれているようで、頭が髪に着いて移動する。その様子を観察しながらルーチェはジオンの残した書き置きを思い出した。
「そうか……! ジオンの髪には魔力が宿っているんだった。それにこのゴーレムはジオンの息子さんの魂魄が組み込まれているのよね」
頭髪ができたゴーレムは更に人間味をおびたが、まだ動くことはない。しかも角膜は無いままなので、不気味さは増していた。
「これで眼があれば完璧なのかな……? 眼になりそうなものと……」
ルーチェは周囲を見渡すが、特にめぼしい物は見つからない。先ほどのように棚から落ちてくれればと願ってみるが、少しオカルトっぽく感じ「やっぱりいいわ」とボソリと声を出す。
「光る玉的な物よね。光る……!」
ルーチェは手をポンと叩きながら閃いたようなポーズをとり、倉庫へと大急ぎで向かった。木でできたB5サイズの箱を手に取り、そっと箱を開ける。中にはたくさんの光る石が入っており、それを満足げに見て「眼にもってこい」と喜んだ。
箱を持ってゴーレムの前に移動して、中から緑の石を取り出す。それをゴーレムの眼に載せるが、特に何の変化も起きなかった。
「そうかい、君は緑の眼はお気に召さないのだな。じゃあ、青はどうだ?」
ルーチェは青の光る石をゴーレムの眼に置く。石は少し揺れて光るが、シューッと光は消えていった。それを見て「青もダメなの?」と箱の中を物色し、次々と色取り取りの光る石を試す。反応する石もあれば全く無反応の物もあり、結局はどれもゴーレムの中には取り込まれていかない。
「君ってさあ、少しこだわりが強くない? もう、どれでもいいじゃない!」
すると眼球が無いはずのゴーレムがルーチェの耳朶を見つめている気がする。ルーチェはその視線(?)に気が付き「え? これ?」と、自分の耳に付いているダイヤのピアスを指さす。もちろん動くわけない筈のゴーレムだが、ルーチェには首が立てに少し動いたような気がした。
恐る恐る耳に手をやりピアスを外し、ソッとピアスをゴーレムの眼球に載せる。すると目映い光を放ってダイヤモンドのピアスは眼球に変化していく。
「あーー! お爺ちゃんの形見なのにーー!」
ゴーレムの眼球になってしまった形見のピアスは、もちろん取り外すこともできない。「酷い!」と絶叫したルーチェだったが、ゴーレムに誕生した美しい眼球を見て息を飲んだ。瞳孔は黒いが角膜はシルバーで、虹彩は正しくダイヤモンドの用にキラキラと光っているのだから。
「き、綺麗……!」
ルーチェはゴーレムの顔を覗き込む。髪も生えて目もあるのですっかりと人らしくなっている。美しい顔を間近で見たルーチェは、急に恥ずかしくなり顔を少し赤らめる。こんなに間近で若い成人男性の顔を見たことなど、無いのだからしょうがない。パッと手を離して横を向くルーチェは、チラチラとゴーレムに視線を送った。
「今なら動くかもしれない……?」
ルーチェは急いで床に魔方陣を書き出す。ジオンの部屋で見つけた禁忌の人型ゴーレム用の魔方陣は、何度も書いているためにルーチェは全てを覚えてしまっていたのだから。
書き終わった魔方陣の上にゴーレムを載せ、ゆっくりと禁忌の呪文を唱えていった。
「×○☆□××$○$□$!」
ルーチェの呪文が形となって空中に浮き、そのままゴーレムへと流れ込む。稲妻のような光を放ったゴーレムと、虹色に輝く魔方陣が宙に浮かぶ。魔方陣がゴーレムに吸収されていき、突風が突き抜けて、同時に目が開けていられないような猛烈な光を放った。
「せ、成功? ジオンでもできなかった人型ゴーレムの魔法! 目に使ったダイヤモンドの力と遺髪のおかげ?」
目映い光が収まり。少し浮いていたゴーレムは地面に落ちていく。先ほどまでのただの粘土人形だった物は、明らかに人体の皮膚に変化していた。しかしゴーレムはジッと停止したま動かない。
「変化したのに動かないの? 何が足りないのよ……!」
もう粘土人形ではなくなったゴーレムを、大きな溜め息を吐きながらルーチェは見つめているしかなかった。
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