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手中に堕ちる

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 男と男の交わりというものは、男女のソレとは随分と違うものだ。柔く柔軟な女の身体と違って、筋肉と筋肉、骨と骨が打つかるような激しさを繰り返す。


 ヒロトと時貞の交わりも甘いというよりは、激しくもつれ合い絡まるようだった。


 時貞の身体に跨がり激しく腰を上下に揺らすヒロトは、両手をベッドに付けて腰だけ動かしている。時貞からはヒロトの窄まりを出入りする自身の男根が、ガッチリと見えているのだ。


 時貞は上体を起こし、ヒロトの身体に顔を近づけていく。ヒロトの胸の頂点にある小さな突起を口に咥え、舌を使ってレロレロと刺激しだした。時貞の唾液で濡れるその突起は、毎夜時貞によって責められる為に、常にプックリと立ち上がっている。すっかりと敏感になってしまったその器官は、小刻みに揺れて時貞を挑発するのだ。


 時貞がニヤリと笑って突起に歯を立てる。するとヒロトが「んぁ……!」と声を上げて仰け反り、ビクビクと身体を震わせた。瞬間にヒロトの後孔がギュッと窄まり、時貞の巨大な男根を締め上げる。


「くぅ……! おい、食い千切るなよ!」


 時貞はヒロトの首に噛みつく。歯形が付いたその場所を、時貞は癒やすかのように何度も執拗に舐め上げた。時貞はヒロトに傷を付けてはそれを舐める行為を好んでいた。ヒロトには全く理解は出来なかったが、そうされることを嫌とは思わない。寧ろもっと「痕」を付けて欲しいとさえ思う自分に、少し怖いと思っていた。


「ん、あぁぁぁ! 時貞……、はぁはぁ、俺も刺青を入れたい……。一緒のやつを!」


 腰を揺らすのを止めないヒロトは、腰を動かしたまま時貞の背中に手を回し、そこに鎮座する龍を指でなぞる。時貞はニタリと笑って下から激しくヒロトを突き上げた。


「入れたきゃ、入れろ……! 知るかよ!」


 ぶっきら棒に返事をするが、時貞は内心興奮していた。同じ刺青を入れたくなるほどに、ヒロトが自分の手中に落ちてきたのだから。欲望の熱で膨らんだ時貞の男根は、灼熱の凶器となってヒロトの体内を犯し続ける。その激しささえも快楽として受け取るヒロトは、口から涎を垂らしながら嬌声を上げ続けていた。


 時貞の腰の動きが一層速く単調になった時、二人の最高潮の瞬間が訪れる。「ぐ、はぁ!」と声を漏らした時貞の男根から、白い迸りが吹き上げヒロトの腸内を白く染め上げる。同時にヒロトの男根からも、ビューッと勢いよく白濁が飛び出し時貞の顔にかかるのだ。


 顔にかかったヒロトの白濁をベロッと舐める時貞は、「顔に掛けたお仕置き」と称してヒロトの乳首に噛みつくのだった。


****


 同じ刺青をといっても、時貞が入れている「本職」の刺青を流石にヒロトには入れたくない時貞は、自分と同じデザインの黒龍をヒロトの臀部から肩にかけて入れる事を勧めた。腕は綺麗なままで、背中にだけ入れる刺青は、時貞が後ろからヒロトを犯すと綺麗に見える。


 自分と同じ刺青を彫ったヒロトを、完全に自分のモノだと認識する時貞は、ヒロトを可能な限り連れ回し、周囲に見せびらかしているようでもあった。


 すっかりと時貞の情夫として夜の世界に顔が知れたヒロトは、金色のカナリヤとの別名で呼ばれるようになった。時貞に毎夜抱かれて妖艶な雰囲気を纏い、美しい声でバーにて歌うその姿は、多くの人の目に留まる。


「ねえ、マスター。あの歌ってる子、良いね……。紹介してくれる?」

「ヒロト君かい……? 佐々木さん、止めときな。あの子は神閃会の幹部の情夫だよ……」

「へえ……。でも、あの子は逸材だよ。絶対に売れるから!」


 佐々木と呼ばれた男は少し軽そうな容姿で、スーツ姿ではなく私服だった。ヒロトが歌っているこのピアノバーは、以前歌っていた場所から更に進化していて、高級ホテル内のバーだったのだ。上質そうなスーツ姿か高級な素材で出来た服を着ている客が多い中、少しラフな服装の佐々木は目立っていたが、常連客だというのはマスターとの会話で理解できる。


 曲を歌い終わったヒロトが礼をして佐々木が座っているカウンターに近づいてきた。


「マスター、今日はどうだった?」


 ニコッと笑うヒロトの横顔をジッと見つめる佐々木は、二人の会話を遮るように「ねえ、君は良い声をしてるね」とヒロトに声を掛ける。


 いきなり話掛けられて驚いたヒロトは、「ありがとうございます」と丁重に礼をしてマスターとの会話に戻ろうとするが、佐々木が更に食い下がる。


「君は何処かの事務所に所属している? していないなら、うちはどうかな……?」


 佐々木は胸のポケットから高級ブランドの名刺入れを取り出し、中の一枚をスッとヒロトに渡す。ヒロトは少し驚いてその名刺を受け取り、ソッと名刺に視線を移した。


「え……! XXって、あのXX? 滅茶苦茶有名な芸能事務所じゃないですか!」


 思わず大きな声を上げてしまったヒロトは、慌てて口を手で押さえる。そんなヒロトの様子に手応えを感じた佐々木は、「もうちょっと込み入った話をしようか」と言いながら、ヒロトを連れて開いているラウンジ席へと移動するのだった。
 
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