耽溺 ~堕ちたのはお前か、それとも俺か?~

寺原しんまる

文字の大きさ
上 下
37 / 47

手中に堕ちる

しおりを挟む
 男と男の交わりというものは、男女のソレとは随分と違うものだ。柔く柔軟な女の身体と違って、筋肉と筋肉、骨と骨が打つかるような激しさを繰り返す。


 ヒロトと時貞の交わりも甘いというよりは、激しくもつれ合い絡まるようだった。


 時貞の身体に跨がり激しく腰を上下に揺らすヒロトは、両手をベッドに付けて腰だけ動かしている。時貞からはヒロトの窄まりを出入りする自身の男根が、ガッチリと見えているのだ。


 時貞は上体を起こし、ヒロトの身体に顔を近づけていく。ヒロトの胸の頂点にある小さな突起を口に咥え、舌を使ってレロレロと刺激しだした。時貞の唾液で濡れるその突起は、毎夜時貞によって責められる為に、常にプックリと立ち上がっている。すっかりと敏感になってしまったその器官は、小刻みに揺れて時貞を挑発するのだ。


 時貞がニヤリと笑って突起に歯を立てる。するとヒロトが「んぁ……!」と声を上げて仰け反り、ビクビクと身体を震わせた。瞬間にヒロトの後孔がギュッと窄まり、時貞の巨大な男根を締め上げる。


「くぅ……! おい、食い千切るなよ!」


 時貞はヒロトの首に噛みつく。歯形が付いたその場所を、時貞は癒やすかのように何度も執拗に舐め上げた。時貞はヒロトに傷を付けてはそれを舐める行為を好んでいた。ヒロトには全く理解は出来なかったが、そうされることを嫌とは思わない。寧ろもっと「痕」を付けて欲しいとさえ思う自分に、少し怖いと思っていた。


「ん、あぁぁぁ! 時貞……、はぁはぁ、俺も刺青を入れたい……。一緒のやつを!」


 腰を揺らすのを止めないヒロトは、腰を動かしたまま時貞の背中に手を回し、そこに鎮座する龍を指でなぞる。時貞はニタリと笑って下から激しくヒロトを突き上げた。


「入れたきゃ、入れろ……! 知るかよ!」


 ぶっきら棒に返事をするが、時貞は内心興奮していた。同じ刺青を入れたくなるほどに、ヒロトが自分の手中に落ちてきたのだから。欲望の熱で膨らんだ時貞の男根は、灼熱の凶器となってヒロトの体内を犯し続ける。その激しささえも快楽として受け取るヒロトは、口から涎を垂らしながら嬌声を上げ続けていた。


 時貞の腰の動きが一層速く単調になった時、二人の最高潮の瞬間が訪れる。「ぐ、はぁ!」と声を漏らした時貞の男根から、白い迸りが吹き上げヒロトの腸内を白く染め上げる。同時にヒロトの男根からも、ビューッと勢いよく白濁が飛び出し時貞の顔にかかるのだ。


 顔にかかったヒロトの白濁をベロッと舐める時貞は、「顔に掛けたお仕置き」と称してヒロトの乳首に噛みつくのだった。


****


 同じ刺青をといっても、時貞が入れている「本職」の刺青を流石にヒロトには入れたくない時貞は、自分と同じデザインの黒龍をヒロトの臀部から肩にかけて入れる事を勧めた。腕は綺麗なままで、背中にだけ入れる刺青は、時貞が後ろからヒロトを犯すと綺麗に見える。


 自分と同じ刺青を彫ったヒロトを、完全に自分のモノだと認識する時貞は、ヒロトを可能な限り連れ回し、周囲に見せびらかしているようでもあった。


 すっかりと時貞の情夫として夜の世界に顔が知れたヒロトは、金色のカナリヤとの別名で呼ばれるようになった。時貞に毎夜抱かれて妖艶な雰囲気を纏い、美しい声でバーにて歌うその姿は、多くの人の目に留まる。


「ねえ、マスター。あの歌ってる子、良いね……。紹介してくれる?」

「ヒロト君かい……? 佐々木さん、止めときな。あの子は神閃会の幹部の情夫だよ……」

「へえ……。でも、あの子は逸材だよ。絶対に売れるから!」


 佐々木と呼ばれた男は少し軽そうな容姿で、スーツ姿ではなく私服だった。ヒロトが歌っているこのピアノバーは、以前歌っていた場所から更に進化していて、高級ホテル内のバーだったのだ。上質そうなスーツ姿か高級な素材で出来た服を着ている客が多い中、少しラフな服装の佐々木は目立っていたが、常連客だというのはマスターとの会話で理解できる。


 曲を歌い終わったヒロトが礼をして佐々木が座っているカウンターに近づいてきた。


「マスター、今日はどうだった?」


 ニコッと笑うヒロトの横顔をジッと見つめる佐々木は、二人の会話を遮るように「ねえ、君は良い声をしてるね」とヒロトに声を掛ける。


 いきなり話掛けられて驚いたヒロトは、「ありがとうございます」と丁重に礼をしてマスターとの会話に戻ろうとするが、佐々木が更に食い下がる。


「君は何処かの事務所に所属している? していないなら、うちはどうかな……?」


 佐々木は胸のポケットから高級ブランドの名刺入れを取り出し、中の一枚をスッとヒロトに渡す。ヒロトは少し驚いてその名刺を受け取り、ソッと名刺に視線を移した。


「え……! XXって、あのXX? 滅茶苦茶有名な芸能事務所じゃないですか!」


 思わず大きな声を上げてしまったヒロトは、慌てて口を手で押さえる。そんなヒロトの様子に手応えを感じた佐々木は、「もうちょっと込み入った話をしようか」と言いながら、ヒロトを連れて開いているラウンジ席へと移動するのだった。
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

処理中です...