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俺のモノ

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「よう、どうだ……? Mのお前にはご褒美のシチュエーションだなあ」


 ヒロトはまだあの恥ずかしい恰好のままで手足を拘束されている。ポッカリと顔を覗かせる窄まりを、ジッと見つめる時貞は、太股の正の字を数えた。


「二〇回って何だ? 二〇回突っ込まれたのか?」

「んぁ……、ちげえよ……。ど、ドライでイッたかず……だ」


 ブルッと震えるヒロトを見て「ドラッグを喰わされたな」と時貞は冷たく呟く。しかし一向にヒロトの拘束を解かない時貞は、上からヒロトを見下ろしているだけだった。


「な、なに……してんだよ! 早く解いてくれ……って」

「……そのままでいいだろう? 解いたら、お前はまた逃げ出すんじゃないのか? そのまま若い衆に頼んで運んで貰う」


 それを聞いて時貞ならやりかねないと思ったヒロトは、「や、やだ……!」と悲痛な声を上げる。その様子を見て嗜虐心が擽られてゾクゾクする時貞は、ヒロトの後孔を靴でグリグリと踏むのだ。そんな屈辱的な刺激でさえも、セックスドラッグで敏感になっているヒロトにはご褒美だった。


「んぁ……! やぁ……。うぅぅ」


 腰をくねらせるヒロトは熱の籠もった瞳で時貞を見つめる。時貞は「お前は俺のモノだ! 二度と逃げんじゃねえぞ……」と言いながら、結束バンドをポケットに入っていたサバイバルナイフで切り落とす。


 ようやく手足が自由になったヒロトは、男根に付けられていたリボンを外し、震える手で近くに置いてあった下着を身につける。


 まだ腰がガクガクして起き上がれないヒロトに、「手間掛けさせやがって!」と時貞が引っ張って起こしてやる。足下がふらつくヒロトを支えて歩く時貞は、ヒロトの臀部を鷲掴みにしてニヤついていた。その様子を見てヒロトは「エロオヤジの顔だ」と溜め息を吐いていたが、ギュッと時貞の腕に掴まり無意識に身体をすり寄せていた。


「なんだ? 今、突っ込んで欲しいのか? ちょっとぐらい待てよ……」

「はあ? ちげえし! そんなんじゃ、ねえよ……。身体が熱いから。アンタの身体が冷たくて気持ちいいんだ……」


 じゃれ合う二人が玄関のドアから出ようとした時に、グサッと肉を刺す鈍い音が響く。ゆっくりと痛みの先を見る時貞は、「……そうきたか」と吐き捨てる様に言った。

 
 時貞の太股に包丁が突き刺さったのだ。二人の背後にはタカが立っており、「やった! 刺してやった!」と声を上げてフラついた脚で遠ざかる。


「時貞!」

「イテえじゃねえか? すっかり気絶してると思ってたよ。俺が甘かったな……」


 刺さっている包丁を引き抜いた時貞は、包丁を顔の横に持ってきて、包丁から垂れる自分の血をペロリと舐めた。


「ヤクザを刃物で刺すってことは、タマ取りに来たっつうことだ。その落とし前はちゃんとつけさせてもらう!」


 時貞から放たれる威圧は、横で立っているヒロトにも伝わり顔色が青ざめていく。既に顔色が悪いタカは震えながら時貞を見ていた。死を覚悟したのか何か分からないが、諦めたように口をダラリと開けて立っているのだ。


 パーン


 乾いた衝撃音と火薬の匂いがヒロトの周囲に漂う。その音の後にはドーンと大きな音と共にタカが地面に沈んでいく。ヒロトの目前に見える黒い鉄の塊は、サプレッサーが先端に取り付けられた銃だったのだ。血飛沫が飛び散る中で、ヒロトはその情景を呆然と見ている。


「おい! 入ってこい!」

 
 時貞のその声を聞いて、外で待っていた組員が室内にドカドカと入ってきた。どうやら時貞の命令を受けて外で待っていたらしい。


組長おやじ! 大丈夫ですか」

「……ああ、これぐらいいつもの事だ。後は任せた……。ヒロト、行くぞ!」


 時貞はヒロトの肩を抱き寄せる。しかしヒロトは「え? こ、殺した……のか?」とうわずった声で時貞に尋ねる。


「殺しちゃいねえよ……。まあ、この後の落とし前の結果、そうなっちまうかもなあ」

「だ、駄目だ……。そんなことすんなよ……! アイツは時貞を刺した。だから警察に突き出せばいいだろ?」


 歩いていた時貞はピタリと止まってヒロトの顔を見る。その表情は月明かりに照らされて、背筋が凍る程に美しく恐ろしかった。瞳には何も映っていないかのように、ユラユラと揺れている気がする。ヒロトは「あ……」と小さく声を漏らし、この後に自分に起こる事を想像してしまう。少し震える身体を片手で押さえているヒロトは、身体の奥深くで疼き出す「何か」の存在に気が付く。それはヒロトの身体を熱く滾らせた。


「てめえ……。あの男に惚れてるのか?」

「ち、ちげえよ……。と、友達だったから……。あぁぁぁ! やめぇろ……」


 時貞はヒロトの長い金髪の髪を引っ張りヒロトを地面に投げる。髪を引っ張られてバランスを崩していたヒロトは、無様に地面に転がるのだ。そのヒロトを更に蹴る時貞の表情は怒りに満ちているようだった。蹴られて痛い筈のヒロトだったが、時貞が見せる嫉妬に仄暗い嬉しさを湧き上がらせる。


「俺以外の男の心配なんかするな! いいか! お前は俺のモノだ……!」


 時貞の声は暗闇に響いていく。すると暗闇の先から、カツンカツンと革靴の足音が聞こえてくるのだった。


 
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