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ゲートの向こう側
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タカの運転する黒のワンボックスカーは中央自動車道を西に向かって走る。制限速度ギリギリで突き進んでいた。
車は一時間程で福生市にたどり着く。車の中で気が付いたヒロトは、痛む腹部を押さえて窓の外を見た。すると物々しい有刺鉄線に囲まれた広大な敷地が、ヒロトの視界に飛び込んだのだ。
タカはそのままゲートに進んで行く。ゲートの見張り小屋の側で大きな男が立っていた。その男は外国人で、タカの車を停車させる。
「ID Please」
タカは馴れた手つきで身分証を見せる。それは英語で書かれており、ヒロトは何が書かれているか分からなかった。それと同時に何か別の紙を取り出し、それも男に渡すタカは何かを男に流暢な英語で話す。門番はヒロトを見て何かを確認しているようだ。
「OK……」
門の見張りがそう言うと、閉められていたゲートが開いた。タカは「Thank you」と言って車を発進させる。
少し進んで古ぼけた住宅街にたどり着き、タカは車を止めた。車から降りたヒロトは、少しフラつきながら見慣れない景色を確認し、驚いた顔つきでタカに尋ねた。
「なあ、ここって横田基地だよなあ……? お前って何でここに入れるんだ? それに英語が話せるなんて知らなかったぞ」
「俺の実家はココだよ……。俺は半分アメリカ人だ。父親が軍人なんだ……。今は日本には居ないが、この家は残してもらっている」
ヒロトはタカをマジマジと見る。よく見ればタカの目の色は日本人にしては明るい。ビジュアル系バンドマンはカラーコンタクトを付けるので、てっきり偽物だと思っていたのだ。色の白い肌もバンドマンでは珍しいことでは無い。しかし背は日本人平均よりかなり高く足も長かった。神経質そうな顔もよく見れば、海外ドラマに出てきそうな名のある俳優の顔に見えなくもなかった。
「き、気づかなかった……。しかし、何で何も言わなかったんだ?」
「別に必要ないからだ……」
タカは古びた家の鍵を開けて中に入る。中は長く締め切っていたカビ臭い匂いがしており、その匂いがヒロトの鼻に付く。ヒロトは初めて入る米軍基地の住宅に少し緊張して中に入ると、タカがガチャリとドアに鍵を掛けた。
「米軍基地にはヤクザは入って来れない。ここは安全だ! ここで暫く身を隠して、何処かに逃げよう……。何なら軍用運搬機パトリオット・エクスプレスに乗ればアメリカ本土にも行ける!」
タカの提案に「いや、それはちょっと……」と顔色を暗くするヒロトは、今一度、タカと話をしようとグッとタカを見つめる。無理矢理ここに連れてこられてしまったが、ちゃんと話して納得させて時貞の元に帰ろうと思ったのだ。
「タカ……。俺はアメリカには行かない。本当はずっと東京にいたい……。俺、気が付いたんだ。時貞の事をそんなに悪く思ってないんだ。アイツは勝手な奴だけど、何だかほっとけない」
ヒロトの告白を受けて目を丸くするタカは、ヒロトの顔を両手で押さえながら顔を近づける。
「だからそれはストックホルム症候群だって言っただろう? お前はあのヤクザに監禁されて精神的に支配されているんだ! 大丈夫だ、俺が直してやるから……」
タカは顔を更に近づけていき、ヒロトの唇を奪った。驚いたヒロトはタカを押しのけようとするが、タカはヒロトを壁際に押しつけて逃げられないようにする。
口内に潜り込んだタカの舌がヒロトの舌に絡まる。その感触に吐き気を覚えるヒロトは、思わずタカの舌を噛むのだ。
「っツ!」
舌を少し切ったであろうタカがヒロトの口元から離れる。ヒロトはチャンスとばかりにタカをドンっと押して入り口へと逃げた。
「……噛むことないだろう?」
「ふざけんな! なんで男とキスしなきゃいけないんだ!」
ヒロトの台詞を聞いて「はあ?」と声を上げるタカは、入り口に立つヒロトの側に向かう。ヒロトは素早くドアノブを持って鍵を開けようとするが、タカがヒロトの腕を掴み思いっきり室内に投げた。
バタン ドン
大きな音と共に床に落ちたヒロトは、「イテえ……」と言いながらタカを睨み付ける。
「男とキス出来ないのに、アイツとセックスはするのか?」
それを聞いたヒロトは顔を耳まで赤くしていく。自分と時貞の間に肉体関係があることをタカは知っているのだと。
黙って下を向くヒロトの側に近づくタカは、「ヒロトは異性愛者じゃない。同性愛者だ」と口にする。それをブンブンと頭を振って「ち、違う……」とヒロトは否定しているが、それをタカは信じない。
「男に尻を掘られるのが大好きだよなあ……。毎日、毎日、あの男に掘られてたんだろう? 隠しても無駄だぜ。アイツに抱かれるようになって、お前は常に発情している様にフェロモンを出していたんだ。みんな知ってるさ……」
タカは床に倒れたままのヒロトの上に跨がって座る。
「本当は、俺がお前の初めてを奪いたかった……」
タカの指がヒロトの服の上から胸の小さな突起に触れる。そこは時貞に開発されており、プックリと膨れていた。
「コレも、本当は俺が……!」
指でギューッとヒロトの突起を摘まむタカに、ヒロトは「やぁめてくれぇ……」と熱の籠もった声を上げるのだった。
車は一時間程で福生市にたどり着く。車の中で気が付いたヒロトは、痛む腹部を押さえて窓の外を見た。すると物々しい有刺鉄線に囲まれた広大な敷地が、ヒロトの視界に飛び込んだのだ。
タカはそのままゲートに進んで行く。ゲートの見張り小屋の側で大きな男が立っていた。その男は外国人で、タカの車を停車させる。
「ID Please」
タカは馴れた手つきで身分証を見せる。それは英語で書かれており、ヒロトは何が書かれているか分からなかった。それと同時に何か別の紙を取り出し、それも男に渡すタカは何かを男に流暢な英語で話す。門番はヒロトを見て何かを確認しているようだ。
「OK……」
門の見張りがそう言うと、閉められていたゲートが開いた。タカは「Thank you」と言って車を発進させる。
少し進んで古ぼけた住宅街にたどり着き、タカは車を止めた。車から降りたヒロトは、少しフラつきながら見慣れない景色を確認し、驚いた顔つきでタカに尋ねた。
「なあ、ここって横田基地だよなあ……? お前って何でここに入れるんだ? それに英語が話せるなんて知らなかったぞ」
「俺の実家はココだよ……。俺は半分アメリカ人だ。父親が軍人なんだ……。今は日本には居ないが、この家は残してもらっている」
ヒロトはタカをマジマジと見る。よく見ればタカの目の色は日本人にしては明るい。ビジュアル系バンドマンはカラーコンタクトを付けるので、てっきり偽物だと思っていたのだ。色の白い肌もバンドマンでは珍しいことでは無い。しかし背は日本人平均よりかなり高く足も長かった。神経質そうな顔もよく見れば、海外ドラマに出てきそうな名のある俳優の顔に見えなくもなかった。
「き、気づかなかった……。しかし、何で何も言わなかったんだ?」
「別に必要ないからだ……」
タカは古びた家の鍵を開けて中に入る。中は長く締め切っていたカビ臭い匂いがしており、その匂いがヒロトの鼻に付く。ヒロトは初めて入る米軍基地の住宅に少し緊張して中に入ると、タカがガチャリとドアに鍵を掛けた。
「米軍基地にはヤクザは入って来れない。ここは安全だ! ここで暫く身を隠して、何処かに逃げよう……。何なら軍用運搬機パトリオット・エクスプレスに乗ればアメリカ本土にも行ける!」
タカの提案に「いや、それはちょっと……」と顔色を暗くするヒロトは、今一度、タカと話をしようとグッとタカを見つめる。無理矢理ここに連れてこられてしまったが、ちゃんと話して納得させて時貞の元に帰ろうと思ったのだ。
「タカ……。俺はアメリカには行かない。本当はずっと東京にいたい……。俺、気が付いたんだ。時貞の事をそんなに悪く思ってないんだ。アイツは勝手な奴だけど、何だかほっとけない」
ヒロトの告白を受けて目を丸くするタカは、ヒロトの顔を両手で押さえながら顔を近づける。
「だからそれはストックホルム症候群だって言っただろう? お前はあのヤクザに監禁されて精神的に支配されているんだ! 大丈夫だ、俺が直してやるから……」
タカは顔を更に近づけていき、ヒロトの唇を奪った。驚いたヒロトはタカを押しのけようとするが、タカはヒロトを壁際に押しつけて逃げられないようにする。
口内に潜り込んだタカの舌がヒロトの舌に絡まる。その感触に吐き気を覚えるヒロトは、思わずタカの舌を噛むのだ。
「っツ!」
舌を少し切ったであろうタカがヒロトの口元から離れる。ヒロトはチャンスとばかりにタカをドンっと押して入り口へと逃げた。
「……噛むことないだろう?」
「ふざけんな! なんで男とキスしなきゃいけないんだ!」
ヒロトの台詞を聞いて「はあ?」と声を上げるタカは、入り口に立つヒロトの側に向かう。ヒロトは素早くドアノブを持って鍵を開けようとするが、タカがヒロトの腕を掴み思いっきり室内に投げた。
バタン ドン
大きな音と共に床に落ちたヒロトは、「イテえ……」と言いながらタカを睨み付ける。
「男とキス出来ないのに、アイツとセックスはするのか?」
それを聞いたヒロトは顔を耳まで赤くしていく。自分と時貞の間に肉体関係があることをタカは知っているのだと。
黙って下を向くヒロトの側に近づくタカは、「ヒロトは異性愛者じゃない。同性愛者だ」と口にする。それをブンブンと頭を振って「ち、違う……」とヒロトは否定しているが、それをタカは信じない。
「男に尻を掘られるのが大好きだよなあ……。毎日、毎日、あの男に掘られてたんだろう? 隠しても無駄だぜ。アイツに抱かれるようになって、お前は常に発情している様にフェロモンを出していたんだ。みんな知ってるさ……」
タカは床に倒れたままのヒロトの上に跨がって座る。
「本当は、俺がお前の初めてを奪いたかった……」
タカの指がヒロトの服の上から胸の小さな突起に触れる。そこは時貞に開発されており、プックリと膨れていた。
「コレも、本当は俺が……!」
指でギューッとヒロトの突起を摘まむタカに、ヒロトは「やぁめてくれぇ……」と熱の籠もった声を上げるのだった。
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