耽溺 ~堕ちたのはお前か、それとも俺か?~

寺原しんまる

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原因はお前にある

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「昌代はなあ、お前とセックスするには金がいるって言ってなあ、風俗で働いてたんだぞ。健気じゃないか……。真面目に客に股を広げて奉仕して、それでも金が足りなくなって、ヤミ金から借りまくってなあ……。最後は店の金庫に手を出したんだ!」

 
 ヒロトは「俺はそんな事、全く頼んでない!」と昌代を見るが、昌代はブルブルと震えるだけで何も答えなかった。

 
「昌代がこうなった原因はお前にあるんだぜ? 責任取って借金はお前にも肩代わりしてもらわないとなあ……」
 
「そ、そんな……! 無茶苦茶だ!」

 
 顔面蒼白のヒロトはガクガクと震え出す。余りにも理不尽な提案だがヤクザが言うと、それが当たり前かのような錯覚を起こしてしまうのだ。

 
 周りのヤクザ達が泣き崩れている昌代をベッドから引きずり下ろし、全裸のまま部屋から連れ出した。昌代は全てを諦めたように、黙ってヤクザ達に連行されて行く。これだけの騒ぎになっても、住民は全く外に出てこなかった。この安アパート近辺ではよくあることなのかも知れない。


 残されたスキンヘッドの男は、スマートフォンを取り出して何処かに電話を掛けていた。


『 組長オヤジ、昌代は確保しました。ええ、手筈通りに。それと……、男が一緒でした。はい、了解しました』


 電話を切ったスキンヘッドの男はニタニタと笑いながらヒロトを見る。その不気味な表情を「な、何だよ!」と言いながら、ベッドの上で後退るヒロトは、何とも言えない恐怖を感じる。自分はいったいどうされるのかと。


組長オヤジがお前を事務所に連れてこいだってよ。良かったなあ。面接に受かれば楽して借金返済できるかもな」


 いやらしく舌舐めずりするスキンヘッドの男の顔を、震えながら見ているヒロト。そんな時に入り口から声がし、「おう、今行く」と振り返ったスキンヘッドの男をヒロトは押し飛ばした。


(今だ!)


 ヒロトは部屋の窓を急いで開ける。全裸だろうがお構いなしだった。これを逃せば二度と逃げられないと思ったのだから。窓から飛び降りて走って逃げればとの一縷の望みを持って。


 しかしガツンという音と共に、ヒロトの視界が急降下していった。ヒロトの視線の先には数人の脚が見えている。頭はズキズキと痛みを伴う音を立てていた。


「馬鹿かお前? 逃げられるとでも思ったか? 手間掛けさせるなよ……」


 スキンヘッドの男の言葉を、意識朦朧の中で聞くヒロトは、ゆっくりと瞼を閉じていく。そんなヒロトを男達が担ぎ上げて部屋から出て行くのだった。
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