短編集

八月灯香

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ぼくのヒーローたちのしっと

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⭐︎ぼくのヒーローたちのお話⭐︎


「ゥ………?」

綾が目を開けるとまだ部屋は暗く、優仁も椿もまだ眠っている。

今日はヒーローショーを観に行く予定だ。
一番好きな作品に出ていたスーツアクターが出るとあって先月からずっと楽しみでソワソワしている。

「…綾…?」

優仁と椿に挟まれて寝ているので、綾は足元までずり下がってからベッドを降りようとした。

「ぁ…ゆうじんくんおはよう。」

椿が眠っているので綾はぽしょぽしょと小声でおはようの挨拶をした。

優仁が頭の上の時計を見ると4時前を指している。

普段は起こしても起きてこないのに、楽しみなことがあると綾はスッと起床する。

椿の手が隣に居るはずの綾を探す。

「んん……綾ぁ…あんまり早く起きるとショーの時眠くなっちゃうよ…」

優仁がちゃんと時間に起こすから寝てよ。
とずり下がった綾を背中から椿が綾を抱きしめて上げた。

「眠くなるの困る…」

「ほら、寝な。」

「だって…。だって、遅刻しない?」

「しない。俺がちゃんと起こす。」

「ほんと?」

「綾、あんまりそういうの言うとフラグ立って本当に遅刻しちゃうかもよ。良い子だから目閉じて。ね?」

「ん…」

背中の椿の熱が呼水になり綾はすぐに眠りに落ちていった。



「綾、起きろ。出かける準備するぞ。」

「ゥ………ン…」

「綾~、朝ごはん食べないと。」

「ちこくしちゃうぅ…」

「顔洗ってこい。」

「ん。」

二人は先に起きて綾の出かける準備と朝食の用意をしてくれている。

ショーはお昼過ぎからなのだが、せっかくだから午前中に出て近辺の商業施設も楽しむ予定なのだ。

日の出ていないうちに一度目を覚ましたからなのか眠さが強い。

なんとかベッドの淵まで這いずってふちに座ることは出来たが眠い。
目が開かない。

「綾ー?」

「つばきくん…」

寝癖で頭もボサボサで身体を揺らして眠気と闘う綾の頭を軽く撫でただけでも眠りに引っ張られていってしまう様だ。

正面にしゃがんだ椿の首に抱きついた。

「ぅ……。」

「起きなー。」

椿はトントンと強めに叩いたり撫でたりしてみる。

このまま寝かせたい気もするがあれだけ楽しみにしていたイベントをキャンセルすれば落ち込むどころの騒ぎでは無くなる。

特撮ヒーロー関連は綾の揺るぐことの無い一番大好きな事なので一喜一憂は激しい。

高校一年生の時に、綾が一番好きなヒーローシリーズの変身グッズの限定品リアルサイズ玩具が出た。


綾は母親と予約しに行って受け取りを楽しみにしていて、毎日二人にもうすぐ僕のものになると報告をしてそれは嬉しそうだった。

何度もお店の人に確認して「絶対大丈夫ですよ。」と言って貰っていた。

だが受け取り当日になって予約対応した店員と違う店員が、間違えて商品を違う人に売ってしまった。

予約して買えるはずだった故に「無いからもう仕方ない」が納得できず、強い苦痛になった。

綾の落胆ぶりは凄まじく「仕方ないの…?」と言いながら目が溶けるんじゃ無いかという位泣いて落ち込んだ。

毎日クローゼットから啜り泣きが聞こえていた。

クローゼットで散々泣いて、二人の顔を見てさらに泣いて。

ボロボロになった手に入るはずだったおもちゃのチラシを握りしめながらしがみつかれ、耳元で泣かれて二人はもうたまらない気持ちになった。

綾のイラストを扱っている雑誌社の人がその一件を聞いて探してくれ、綾のファンの人が保存用に購入した物を贈ってくれるというミラクルが起きて事なきを得た事がある。

あの時の喜び様はとても愛らしかったが、その前の落ち込みはもう本当に見てられなかった。

楽しみにしていたヒーローショーが観れなかったとなればあの時あのまま起きておけばとしばらく毎日大号泣確定になる。

ここは心を鬼にして起こさねばならない。

「洗面台まで抱っこしてあげる。」

「ん。」

椿の甘やかしにしめたと綾は椿の腰に足を巻き付けてしがみついた。

「…!」

ギュッと綾がしがみついてきて、椿はある事に気がついた。

「綾も元気な男の子だね。」

「…?」

綾はなんのことかよく分からずに椿の肩に頭を乗せたままにした。

ぐ、と椿が綾を抱いた腕に力を入れて自分の身体に押し付ける様にした。

「…ンッ」

綾が椿の耳元で甘い声をあげる。
 
「つばきくんぎゅってしたらぼくのちんちんあたる…」

「あたっちゃうねぇ。」

椿は上機嫌で洗面台の前で綾を下ろした。

椿がわざと刺激する様に抱いて歩いたので完全に勃起してしまい、まっすぐ立つと布に当たってしまうので綾は腰を引いて立った。

半分寝ぼけて腰を引いて立つ姿はなんともマヌケなのだが、椿にはその様が可愛くて仕方ない。

「綾、朝立ちなんとかしてあげようか?」

「?あさだちって何?」

「これ。」

椿がスリ…と指で主張する股間の表面を撫でた。

「ぁ…触ったらだめ…」

「でも治るの待ってたらショーに遅刻しちゃうかもよ?」

「ぅ…」

「ね…綾…」

なんて事ないように椿が綾を言いくるめていく。

椿は綾を性的に触れるこういうタイミングは絶対に逃さない。

「ヒーローに綾のちんちん勃ってるの見られたら困るでしょ?」

「…いやだ!」

綾は困った表情で顔を横に振った。

「そしたらなんとかしちゃおうか。」

「…ん。」

「転けないように僕の肩に手置いてて。」

軽く音を立てて唇にキスをしてから椿は綾の足元に膝をついた。

「ぁ…なめるの?」

「手でやると飛んじゃって汚すでしょ?」

「…ん。」

「僕に任せておいて。」

「ん……ん…………ぅ……」

綾のズボンと下着をおろし、椿が妖艶に笑って綾の陰茎に舌をつけた。

ぐっと表皮をおろされ、ウブな色の亀頭が剥き出しにされる。

椿の口内は熱く、滑る舌が綾の陰茎の敏感な所を這い回って綾の腰がカクカクと揺れた。

「綾、舐めててあげるから好きに腰振ってみる?」

ジュ…とわざと椿が音を立ててきて綾のお腹が震えた。

「んぁ……ァ………つばき…く……ぅ………」

自分じゃ上手く動けない。
もどかしさが膨らむばかりになった。

お手本の様に足の根本を掴まれて動かされるが、止められるとどうしようもできない。

「や…ゃ……できな……よぉ……」

「おい、朝飯っつって……」

洗面台に行ったまま二人が来ないので、優仁がじれて呼びにきた。

「ぁ……ア……ゆじ……く……」

「は?なんでそんな事なってんの?」

「つばきく…が…あ… ぁさだ……ちっだよ…て……ぇ!」

綾がなんとか答えているのに、椿が強く吸いながら口を離した。

「ぁ………あ……」

「そゆこと、おさまるの待つより出したげたほうがいいじゃん?」

もうすぐ射精出来そうだったのに、口淫をとめてしまったので綾の陰茎が椿の鼻先で濡れて揺れている。

「ぅ………う………」

やるにしても手で抜いてやれば良いんじゃねぇのかと優仁は思ったが、寝癖がついたまま椿の口淫で淫らな顔つきになった綾はなかなかそそるものがある。

「ぁ…ぁのね………つばきく……ぼく…せ…し…出したいぃ……」

「いいよぉ」

椿は再びもじもじとする綾の陰茎を舐め啜った。

「ぁ…あは……ぁ………」

「綾こっち向いて。」

優仁の指先が綾の顎を捉える。

「…えろ…」

「ゆぅじ…く………」

「俺とはキスしてような。」

「ん…」

優仁に口の中を舐められ、椿には陰茎を舐められ、あっという間に綾は射精した。

「ごちそうさま。」

椿が下着を履かせて身支度を促した。

朝立ちは治ったが、二人がやらしい舐め方をしたせいで腰がざわついて自力で立っていられなくなり、洗面台に激突しそうになって危ないので優仁が後ろから身体を支えて身支度をなんとか整えた。

朝ごはんを食べて家を出る頃にはシャンとして出かけられた。


電車の中で綾は楽しみでソワソワしっぱなしだった。
商業施設にはイベントのポスターが各地に貼られていて、いちいち気を取られて足がとまった。

「ぼくこれ観れる!」

綾の機嫌の良い声は二人にとっても気分がいい。

会場は大人から子供までが座席にぎっしり座っていた。

舞台が良く見えるセンターブロックの前の方の席を当てられたので綾はショーを余す事なく堪能した。

「よく出来てるな。」と優仁も感心した声を上げた。

『それでは間も無く握手会に移らせていただきます。握手券をお持ちの方はどうぞ前方の方にご移動ください。』

会場アナウンスが流れ、綾の瞳がパッと輝いた。

「椿くん握手券なくしてない?」

「ちゃんとあるよ。」

特撮ファンの大人や子供達と並び、憧れのスーツアクターと握手し、ファンアートを渡し、舞台上で写真まで撮ってもらい綾はご機嫌全開で帰宅した。

その日は夜遅くまで興奮して綾は眠れなかった。

後日、アクターがSNSで綾の絵を載せたのがまた綾の喜びに火をつけ、しばらく口を開けばその話になった。

「やっぱり凄くかっこよかったぁ」

優しかったしかっこいいし憧れる。やっぱりぼく大好き、と綾がツーショット写真を見ながらうっとりとした顔でいう。

いつでも見ていたいから、と写真印刷してフォトフレームに入っている。

写真に映る二人は「大好きです」と伝えたからなのか肩に手まで置かれている。

「流石にあんだけうっとり言われると腹立つな。」

「あんなおじさんに負けてられない…。」

「他の来てた大人にあんな対応してなかったよな…肩抱いてるの本当何…。」

「綾かわいいから…。」

二人はひとつも面白くない気持ちになった。

「僕らめちゃくちゃ嫉妬してるね…。」

「そんなもんするだろ…みてみろ綾のあの顔…。」

もう少しでキスしてしまいそうな距離でうっとりと綾が見ている。

「…。」
「…。」

それからの二人は闘争心に火がついてトレーニングにいそしんだ。

二人はバク宙が出来るようになり、スーツアクターの動きをトレース出来るまでになった。

「わ…わ……!!二人とも凄い!かっこいい…!」

動く為に引き絞った身体はヒーローみたいだと綾は歓喜し、目の前で繰り広げられる二人のアクションにメロメロになった。

「綾はヒーロー2人の奥さんだね。」

と椿がいうと綾はもうとろけんばかりの顔になる。

ショーを観に行った後から躍起になっている様子を察した母親達に「あんた達どこ目指してんのよ…二人でもういっそスーツアクターにでもなれば?」と呆れ顔で言われた。
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