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八月灯香

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運命とかないから。5

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シフトが終わるまで、神山さんは待っていてくれた。
店長も波川さんの事もあったし神山さんに「本来なら俺が送るべきなんでしょうけど、青池君の事お願いしてもいいですか」って何かを察して言ってくれてた。

家に行っていいか、と神山さんが聞いてくるので、いいですよと返したけど…
こないだも神山さんがきた時に思ったけど、俺の部屋は神山さんが来るような部屋じゃ無い。

神山さんが泊まるホテルの部屋に三つも四つも収まるような狭さだ。

バスルームはかろうじてユニットバスじゃないけど、俺も小さい方ではないし、体格の良い神山さんと入ったらギチギチになるくらい。

「俺、シャワー浴びてきます」

神山さんにインスタントのコーヒーを出してバスルームに籠った。

身体を洗いながら、頭の奥底で期待はするなと声がしてくる気がした。
身分が違いすぎる。
あんな美丈夫がフリーなはずはない。
気まぐれに助けてくれただけだ。

ライオンはプライドというメスの群れを持つ。
きっと俺もその中の1人にされてしまう。

波川さんから離れても、神山さん程の大人の権力を持って居たら複数を囲い込むなんて事も容易いのかもしれない、大勢の内の1人にされる。

思考が期待と同時にマイナスの方に動いてしまう。


あの、情熱的な唇がこの体に所有欲をぶつけてくる。
男の印が身体を貫くと、訳がわからない程に乱れてしまう。

一度抱かれていい経験で終わると思って居たのに。
再びあの身体が齎してくる快楽を味わってしまった。

そして今日も、きっと。


バスルームのドアを開けると、神山さんがバスタオルを広げて待って居た。

こんな期待する行動…と髪を拭かれながら顔を見上げてしまう。

「俺もシャワー借りていいかな?」

と言われて頷く。
洗濯機の上に新しいバスタオルを置いて簡単な部屋を着て部屋に戻る。

この部屋は狭いから待って居るスペースがベッドしかない。

別段散らかっても無いけど、ソワソワと物を整えたりしてしまう。

ラグのコーヒーのシミはどうにもならない。

キッチンでお湯を沸かして紅茶を淹れる。
何かしてないと叫び出しそうな程、緊張して居る。

神山さんが、部屋に居る。
口説きたいと言ってきたあの日から、俺の気持ちは神山さんの事で頭がいっぱいになる程になってしまった。

波川さんの時には感じた事のない激しい渇望がある。

「レン」

と後ろから首に唇が押し当てられる。
振り向いて自分から神山さんの唇を吸い上げた。
たくましい腕が背中に周り、身体を持ち上げられる。

すぐにベッドに降ろされ、長い間舌が絡むキスが始まる。

とりあえずで着た部屋着は直ぐに脱がされてしまった。
神山さんが上になって居たのを、俺が上に乗る。
均衡の取れた神山さんの身体が眼下にある。
割れた腹筋に舌を這わせながら腰に巻かれたタオルを外して陰茎に顔を近づけていく。

今だけ、この瞬間だけでいい。
この瞬間だけ、神山さんが自分の物であれば、他はもういい。
この後の事は今は考えない。

神山さんが、大きな手で頭や耳の後ろを撫でてくる。
指先が皮膚に触れるたびに甘い刺激が走って下半身を刺激した。

「ン………ン………」

太い血管がどくどくと脈打つのが舌に伝わってくる。
長大なそれを喉の奥に迎えようとしても、波川さんのとは勝手が違って不可能だった。

舐めて口淫して居るだけなのに、自分の陰茎も酷く疼いて先走りを溢している。
これに貫かれ、もたらされる快感を知っている。

たまらずに手を前から回して後ろの孔に指を入れると、快感が駆け上がってきてしまった。

早く、身体の中に欲しい。

涎でベトベトになった神山の陰茎から口を離してその上に跨る。
後ろの孔をほぐそうと神山さんの手が伸びてくるのを止めた。

「さっき…お風呂で自分でしたから…」

鋒を当てがい、腰を少しずつおろす。
期待に震える肉は貪欲に口を開いて神山の陰茎を舐める。
先を飲み込むとずりずりと身体の中を神山さんのそれが押し開いた。

刺激を受けて揺れてしまう身体を支えるのに首に腕を回す。

神山さんと目が合う、俺がどんな顔をしているのかをじっと観察されている気がした。

「ぁ…あ………あ?あ…!……だめ……い………く」

神山さんの腹の上に座り込んだ瞬間、急激に膨らんだ快感が爆ぜた。
神山さんの割れた腹の上に白濁を撒きながら、腹の中でも絶頂して震える。

「ぁ…あ……ぁ……」

顎が上がって甘く痺れる身体に呆然としてしまう。

神山さんの手が伸びて来て子供をあやす様に抱きしめてくれた。





レンが腹の上で絶頂している。
挿入だけで達した自分に愕然として居るのが愛おしい。

抱きしめて背中を撫でてやると、肩口で熱い息を吐いて居る。

ベッドに寝かせ、顔中に唇を押し当てる。
薄く開いた口に舌を差し入れると反応が返ってくる。

少しずつ腰を揺すると、こちらを見たまま、レンの口からひっきりなしに甘い嬌声が上がる。

「あ…あ……きもちい……ん………ん………」

とば口まで引き抜いて奥まで強く押し込むと、レンの腹の中はビクビクと震える。

「あ……それ……すぐイくから……あ……」

泣きそうな目を向けてくるのが堪らない。

「何度でもイくといい」

ストロークを早めて追い詰めてやるとギクンと身体を撥ねさせて射精せず絶頂する。
腹の中がうねり、たまらずに俺もレンの中に射精した。

「ア…ア……あつ…い………ぃ………」
 
ヒクつくレンを落ち着かせる様にキスをする。
レンの腹の中は居心地がいい。

床に置いたネクタイを取り、こちらを見つめたままのレンの目を隠す。

そろそろアイツがくる頃じゃないか。

あの様子ではおとなしく引き下がったわけではないだろう。

目隠しされたレンは、皮膚感覚が研ぎ澄まされるのか、更に大きく乱れ始める。
身体のどこを触っても甘い声をあげた。

両脚を持ち上げ突き上げると大きく身体を揺らしながら顎を天に向けている。

嬌声と濡れた音が部屋に響く。

「ア…ァ…!!クリス…クリス…あ……ん……!!」

俺の名前を呼びながらガクガクと震える。
かわまずに突き上げると絶頂の最中に責められて泣き始めた。

「や…あ!まって!!!ぁ………あ!!!まっ……!!クリスまって!まってぇ…!!!」

逃げを打つ腰を掴み押し当ててやる。
レンは翻弄されて俺の身体にしがみついている。
俺のスマートフォンの画面が一度光った。

玄関から続く短い廊下から、この部屋に入る為のドアが音もなく開く。
嬌声はこの部屋に続く短い廊下にも届いていだだろう。

一際強く突き入れた瞬間に俺もレンの中に欲望を吐き出し、レンは強烈な絶頂を迎えて潮を噴き上げた。

「ぁ………ぁ………ひ…………」

下腹が目に見えて波打つ。
緩く揺さぶり続けると、レンは熱に浮かされた様に俺の名前を呼び続けた。

耳元に顔を近づけてもうやめるか聞いてやると

「あ…や………やだ…やめないで…クリス…クリスもっとして…もっと……ん…」

と首を振ってレンが答える。

見ろ、この痴態を。
お前の前でこんなにも乱れた事があるか?
お前のセックスなど、どうせもっとしたいとねだられても自分が満足したら終わるつまらない物だろう?
レンが絶頂するたびに色気が増していって壮絶な物になるのを知らないだろう。
レンはもう、俺の物だ。

「ン………ン……!!ア!ぁ……!!あ!!」

どうせ言葉でどうにもならないなら身体を繋いで聞かせようとしたのだろうが目論見が外れたな。

膝の上に抱き上げると、レンは俺の首にしがみついてキスを強請ってくる。

自分の手の内に居たはずの相手が、第三者の手で乱されて居るのを見るのはさぞ辛いだろうな、執着して居る相手ならば尚更だ。

見せつけるように蓮の身体に跡をつけた。

波川は怒りとも悲しみともつかない顔でこちらを見ていた。

ザマァない。

「あ…んん……!あ…!ア…!アぁ……!は…ん…イく……あ…イく…イ………く…!!!ぁ!!!」

下から突き上げられてレンが背を逸せる、倒れない様に抱き込んでやるとガクガクと腰を震わせている。

波川の後ろから黒服の男が2人入って来て音もなく波川を連れ出した。
お前が来る事は予測済みだ、だから今夜あえてこの部屋に上がり込んだんだ。

この部屋の鍵はレンから複製させてもらっている。
波川の来訪を予測してSP達を待機させ渡しておいてあった。

この後は法的に接近禁止などの措置が取られる。
俺の物に近づいたら今度はこれだけでは済まさない。

出会ったあの日、あの瞬間。
もしレンにパートナーが居ても横から攫ってしまおうと決めていた。

幸い、波川は子供まで居る既婚者だった。
関係が悪く無くてもその事実をうまく使って別れさせる事が出来ただろう。


この身体は、俺だけの為に作られた物だ。





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