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クソクズの執着の成れの果て2
しおりを挟む「甲斐君、ご新規なんだけど指名来て貸切希望してるんだけどさぁ…会ってみて嫌だったら新規だしどんな相手かわかんないからすぐ切り上げていいんだけど。どうする。」
出勤したらすぐに店長から言われて、いいですよって応える。
スマホに行くホテルの情報とかがすぐに転送されてきた。
新規客でしかも最後までの貸切希望。
どんな人だろう…
今まで変な相手を引いたことが比較的無くてオッケーしたけど、店長も慎重にしてって言ってたし辞めた方が良かったかもしれない。
ちょっと怖くなってきた…
スマホを見ながら部屋に向かう、部屋番号を確認して部屋の呼び鈴を押すとすぐにドアが開いて、中から知ってる人が出てきて驚いた。
「御子柴君!?」
四年ぶりに会うその人は、周斗と仲良かった人だ。
何回かご飯一緒に食べた事がある。
俺はスマホで店長に大丈夫ですの返事を送った。
「やっぱり瑛士君だ。久しぶり、めちゃくちゃイメチェンしてるじゃん。」
「御子柴君は変わんないね!え…え?御子柴が指名してくれたの?ん?御子柴君もそっち…?彼女いなかったっけ??バイ??偶然…??」
頭の中に疑問符が大量に湧いてくる。
「偶然っちゃ偶然。本当にたまたまネットで瑛士君見つけてびっくりして指名しちゃった。」
御子柴君が俺の手を引いて部屋の中に入れた。
「瑛士君ごめんだけど…」
と言って御子柴君がぱっと部屋を出てドアを閉めた。
御子柴君の行動の意味がわからなくて、驚いて開けようとしても開かない。
オートロックなってるドアだから部屋の中からは簡単に開くはずなのに廊下側から抑えられててびくともしない。
「え!なに!なんの冗談?」
「エージ」
後ろから忘れた筈の声が聞こえて身体が固まる。
部屋に、もう1人居た。
「やだ、やだやだ!御子柴君やだ!!!あけて!!!」
パニックになってドアを引くけど、御子柴君は開けてくれない。
「瑛士君ごめんね。ちゃんと話してやって」
忘れてた大きな手が肩に触ってきた。
なんで。
どうして。
いやだこんなの。
もう、忘れたんじゃん。
なんでこんな事が起きるんだよ。
今まで酷い事起きなかったツケでこんな事になるの?
肩に置かれた手に力が入って振り向く、顔が上げられない。
顔を上げたら、俺より少し背の高い周斗と目があってしまう。
落ち着くために何度か深呼吸をした。
意を決して顔を上げると俺が知ってる頃より顔が痩せて精悍になっている大人になった周斗だった。
俯いて一度瞼を強く閉じると頭が、スッと冷えていく。
仕事だ、これは仕事。
いつもの様に、して欲しい事を聞いて、それに沿ったプレイをしたら終わる、終わるんだ。
そう自分に言い聞かせて息を整えた。
「お客さん、何したい人?風呂、入る?俺に何かして欲しいことある?」
笑顔を取り繕ってって聞くと、周斗は険しい顔になった。
「今日、貸切だから焦らなくてもいいし、暴力以外だったら割となんでもいけるけど、どうしたい?」
やけになって笑いながら周斗の両脇にさがった手に指を這わせる。
突然引き寄せられて苦しいくらいに抱きしめられた。
「エージ…」
なんで泣きそうな声してんだよ、お前が壊したくせに。
裏切られたみたいな顔すんなよ。
そう思ったらどんどん腹が立ってきて、ベッドに周斗を突き飛ばした。
「こういう事がしたいからわざわざ指名したんでしょ?」
ベッドに乗り上げて周斗のデニムの前をくつろげて下着ごと抜き去った。
「気持ちよくしてあげるね。」
まだ何も反応してないそれを手に持ち、戸惑う事なく口の中に入れて愛撫してやるとあっという間に勃ち上がった。
裏筋にピアスのついた舌を押し付けて引き抜くように吸ってやるとビクビクと震える。
お前と付き合ってた時はえづいてばかりで根元まで飲めなかったけど、今はちゃんと喉も使えるようになったんだよ。
無理しなくていいよってお前は俺に言ってたけど、こういう仕事だとそうもいかないからな。
お前が知ってるお前に依存する俺じゃない。
周斗の顔を見上げると愕然とした表情をしてた。
「何、どうしたの?勃ってるけど気持ちよくない?」
下手じゃないと思うんだけど、と慣れた手つきでコンドームを被せてやった。
店のホームページみただろ。
ウチの店は生は禁止されてんだよ。
店のシャワールームでこっちは後ろもちゃんと
支度してるから、安心しろよ。
ボーイは怪我しないようにしっかり指導受けてるから、客が無茶しても大丈夫な自衛策はとってる。
呼び出していきなり準備もしてないのにいきなり突っ込みたがる奴が少なからず居るからだ。
自分で下を脱いで、周斗の腹に跨って持ってきたローションを手に垂らしてわざわざ見せつける様に後ろの穴に指を飲ませる。
コイツの顔なんて見たくない。
一回やって終わらせて、もう二度と会わない。
早めに切り上げて店には二度とこの客とらないでって言う。
これはただの作業なんだ。
「挿れるね。」
後ろ向きで周斗の剛直を自分であてがってから腰を下ろした。
何でもない事みたいに終わらせたかったのに…
信じ難いことに自分でも驚くほどの快感が上がってきて、何も反応してなかった俺のペニスが一気に上を向いた。
嘘だろ…
どんだけ頭が忘れたくても、身体が周斗を覚えてる。
四年前、俺が甘やかされて散々溺れた身体だ。
自分が感じるところを避ける様に抽挿してもダメだった。
腰を揺らすといろんな事が思い出されて涙がぼろぼろ出てくる。
なんだよ、四年も隠れられたのに、今になって、なんでだよ。
何とか、何とかコイツをイかせなければ。
「ん…ん………!!」
我慢しきれない声が漏れ出る。
やめたい、もうやりたくない。
気持ち良すぎて頭おかしくなる。
どうしよう、客より先に自分がイくわけにはいかないのにどんどん追い詰まる。
「い………っ………!!!!」
あらがっても腹の中から快感が背骨を駆け上がって絶頂に押し上げられてしまう。
精液が噴き出て、その後は締まり無くダラダラと溢れ漏れた。
「あ…ァ……ッ!!」
勝手に腹が震えるのを叱咤して歯を食いしばり再び腰を持ち上げて打ち付けようとした瞬間、体制が入れ替えられてベッドに押し付けられた。
「あ…や!!!や!!!だ!!!やだ!」
主導権を取り返すかのように首の後ろを周斗の手が押さえ込んでペニスが引き抜かれる。
すぐにあてがわれた時、ゴムを剥ぎ取った生々しい肉の感触がすぐに押し入ってきた。
「やだ…やだ!!ゴムしてない!中に出さないで!!やだ!!!!あ…あ……あ!や!!!」
後ろから押しつぶす様に腰を押し付けられ、無遠慮に剛直が腹の中を埋めてくる。
肉を打つ音が部屋に響き、うわ言の様に周斗が俺の名前を呼んでくる。
「エージ…エージ」
この声も、手も、大好きだった。
バチン!と一際強く打ち付けられた後、腹の中に熱いものが放たれる。
「やぁ………やだ………ぅ…う…」
逃げようとしても身体を押さえ込まれて、一際奥に吐精された。
体格も力も差がある事を思い知らされてしまう。
そして再び周斗が抽挿をはじめる。
「やだ…いや…!!!や…!!!やだぁ!!!」
泣いて拒否の声をあげてもやめてくれない。
「エージ、ごめんエージ。ごめん…ごめん…!」
謝らなくていいから、聞きたくない。
やめて、もう離して。
周斗の手が、慰める様に動く。
「いやぁ…!!」
熱く熱を持った手が俺のペニスを握り込んでくる。
酷く勃ち上がって感じてるのがバレバレだ。
後ろで安心するみたいなため息が聞こえる。
もう嫌だ。
シャツが首元まで捲られて、ハチドリのタトゥーを指でなぞられる。
幸彦さんに「辛いならレーザーで消せるよ」って言われても、ノリで入れたタトゥーだったけど、周斗がお揃いだと言ったせいで意味を持ってしまっていて出来なかった。
「エージ、好きだ…好きなんだ…エージ、ごめん…」
涙声がして背中にポタポタと雫があたる。
「ん…!や…!あ………!あ…!あ………ひ…ぃ…!!」
タトゥーにキスされて、後ろから奥を何度も突かれて喉から悲鳴が上がった。
時々背中を吸われて跡をのこされてるのを感じる。
泣き声で何度も好きだと言われて、快感まで暴れて感情が、ぐちゃぐちゃになる。
涙が止まらずに頭がガンガンする程熱い。
何がごめんなんだよ、
俺はもうあんな目にあいたくない。
あいたくないのに。
「…や…ぁ………!!あ………や!いや…あ…っ!」
ビクンと腰が周斗を押し返すように跳ねた。
腹から起こった強い快感に全身が絶頂に押し上げられて震える。
シーツに顔を押し付けて耐えていると、突然ひっくり返された。
腹の中を捻られたと思ったら、ドン、と深く突き入れを食らって再び中に射精された。
「いっ………あ…!やめて……もうやだ…なんでこんな事すんの…もうやめて…やめてよぉ…」
もう、訳がわからなくて子供みたいに泣いてしまう。
顔なんて見たくない。
頭を撫でてこようとする手を払いのけようとした両手を押さえ込まれて、周斗の息が顔に近づいてくる。
そらせた顔をもう片方の手で掴まれて唇を塞がれた。
食いしばって拒否してもお構いなしに唇を舐めてくる。
「ん…んん!!!」
ギュッと目と口を閉じて拒絶すると、前から腰を責められる。
「ん…あ……!」
突かれて思わず口が開いた隙に舌が入り込んできた。
なんで…!
思わず頭に来て舌を思い切り噛んでやった。一瞬周斗の身体がびくりとしたが、構わずに口内を蹂躙し始めた。
噛んで切れた周斗の舌から血液が染み出て唾液とともに飲みこませられる。
舌が引き抜かれて上がった息が整わないうちにぼんやりと眼を開けると、切ない表情の周斗がじっとこっちを見ている。
「…なんでこんなことすんの」
睨みつけて言った瞬間自分の顔がくしゃっとしてしまう。
なんで、俺の好きな顔で、俺の好きな声と身体でまたこんな事してくんの。
時間かけてやっとの思いで整理したのに、なんで。
「わざわざお前の事手離してやったのに。なんで」
ドン底に悲しかったあの瞬間、お前にわかるのかよ。
「お前が、俺をいらないってしたんじゃないのかよ」
どんな思いであの部屋を出たと思ってんだよ。
「お前が…周斗が俺をいらなくなったくせに」
「なってない。」
「なったよ!!!なってた!!!」
「なってないよ…!」
「じゃあなんで…!!!なんで何回も女連れ込んでわかってて!!!俺がやだってわかっててなんでやったの!!」
「エージ…」
「やだ!!!やだぁ!!!もうやだぁ!周斗なんて嫌い!いや!!!」
言葉が続かずに悔しくて叫びながら両腕をクロスして顔を隠した。
ジクジクと腹の中で脈を打つ周斗のペニスを追いだそうと腹に力を込めたけどその意図に気がついた周斗が腰を尻に押し付けてくる。
「ひ…も…いやってぇ………」
もう自由もきかないし泣くしかない。
「本当にごめん、傷付けてごめん。俺は間違った。ごめん。いらなくなんてなってない。俺、本当に今もエージの事好きなんだ。
四年前も、今もずっとエージが好きだ。
初めのは4人くらいで遊びに来たうちの一人が面白がって寝室に口紅投げ入れたんだよ、でもあの時お前が俺に捨てないでって言ってきたのが堪らなく気持ちよく感じたんだ。」
お前が捨てないでって言ってきたのが、俺の事を好きなのが確認出来て気持ちよかったんだ。
それが癖になってエスカレートしたんだ。
エージ以外の誰の事も好きじゃない。
エージが縋ってくるのに興奮してたんだ。
って泣きながら周斗が言ってくる。
ふざけんなよコイツ。
どう言う神経してんだよ。
「酷い」
やっとのことで絞り出した声を聞いて、周斗がごめんを繰り返しながら腕をどかせて額を俺の額にくっつけてくる。
「本当に悪い事した。エージが連絡全部切って出てったあの日、全部後悔した。何回怒っても許してくれたのに。玄関の壊れたスマホ見て本当に後悔した。
どう頑張っても連絡取れないし、坂口さんには何回頭下げてもエージとは絶対に連絡取らせないって言われたし。
4年間必死でエージの事探したんだ。
そしたら御子柴がたまたまエージの事見つけたって…出張風俗に所属してるって。
あんだけ傷付けたから会うのはやめとけって言われたけど、どうしても俺が諦め切れなかった。
エージがあの時感じてた気持ちがこんなに酷い物だなんて思ってなかった。」
ごめん。
そう言って苦痛の表情になって、周斗は再び泣き始めた。
なにそれ。
知らないよそんなの。
そうつき離したいのに、俺はこの人の事を大好きな事をすっかり思い出してしまった。
「やり直したい。」
周斗が真剣な声で言ってきたけど、返事なんてかえせなかった。
「やり直させてよエージ」と再び腹の中をゆすられて、燻った欲望はあっという間に火がついた。
もう、喘ぎ声しか出せなくて、懇願してくる周斗の身体にしがみついて何度も絶頂に押し上げられて、何度目かでふっつりと意識は途切れた。
次に目を覚ますと、隣に周斗の寝顔があった。
ああ…この顔本当に好きだなぁ…。
起こさない様に身なりを整えて急いで部屋を出た。
こんな酷い事、幻で充分だよ。
*
家に着いて、すぐにバスルームに篭った。
周斗に抱かれた事を思い出すと再び身体の熱が上がりそうになった。
適温のシャワーを浴びると少しずつ冷静になってくる。
店には昨日の客は今後無しでお願いします、と伝えると「了解」と返ってきた。
酷い事されてないか心配の連絡もきたけど{大丈夫、相性が悪かっただけです}と、返事した。
周斗に店もバレたけど、今の俺は生きていく為にこうやって働くしか出来ないから、拒絶してやり過ごす事にしようと思った。
腹の中はある程度掻き出されてた。
俺が意識ないうちにしてくれたのかな…
緩慢な動きで風呂を出た。
寝る為だけに借りてる狭い部屋なのに酷く広く感じて苦しい。
ベッドに潜ると、引き摺り込まれる様に眠りに落ちた。
「エージ」
と周斗が笑って手を伸ばしてくる。
嬉しくなってその手を取る。
ああ。あの花火の時の周斗だ。
暗いしみんな上見てるからわかんねーよって、花火見てるフリして何回もキスしたんだ。
「バカだなぁ周斗」
俺は嬉しさと恥ずかしさで絡められた指を少し強く握り返した。
周斗がニヤニヤ笑ってこっちを見てる。
幸せしかなくて、ずっとこの夢の中に居たい。
「エージ好きだよ」
「今度葉山あたりの海行こうかエージ」
「エージ今日俺のシャツ着ていけば」
本当はえいじなんだけど、周斗はエージって間延びさせて呼んでくるのがくすぐったかった。
「そのままでいいのよ。アンタはアンタでいなさい。アンタ好きな男と一緒にいられる幸せったらないんだから」
いつか言われた言葉。
好きな人といられて本当に幸せだったよ。
…でも、苦しかった。
目が醒めると枕は涙で濡れていた。
ぼんやりと見慣れた天井を見る。
酷く狭くて、なのに今は一人では広すぎる。
今何時だとスマホを見ようとしたらインターホンが鳴った。
通販してた物が届いたのかとドアを開けたら、周斗が立ってた。
「なん…で…」
と驚いた瞬間に部屋に押し込まれて抱きしめられた。
「ごめん。逃げられると思ったからエージの寝てる隙にポケットにGPS入れた。」
昨日からごめんばっかじゃん。
こんなのもうキツいって。
突然現れて周斗とあんなことあって、夢でも周斗出てきて、起きてもこんな事する周斗が家に来んのなんなんだよ。
「エージ、自分勝手なのはわかってる。
でも諦めたくない。好きなんだ、もう絶対あんな事しない。エージ、許してくれとは言わないから…」
ぎゅうぎゅうに抱きしめて周斗が俺の肩に顔を埋めて懇願してる。
胸が締め付けられて痛い。
何この人、俺なんて居なくなってもパートナーなんて選び放題なのに、なんで四年もかけて追いかけて来てんの。
なんでそんなに俺のこと好きって言うの。
バカだなぁ周斗、
本当にバカだな。
でも、そのバカな周斗の事俺も好きなんだって。
「もし…もし次おんなじ事したら、俺次は自殺して逃げるから。」
堪えたけど、涙が溢れてくる。
本当に、この手を再びとっていいのか。
昨日もあんなに泣いたのに、無限に湧いてくるのかな。
「絶対しない。」
そう言って周斗も泣いてる。
スマホが震えて着信を伝えて来た。
幸彦さんだった。
『朝早くにごめんね、甲斐君無事かな、御子柴君から久しぶりに連絡あって周斗君に甲斐君の事教えたって真美が聞いてパニック起こしとるんやけど。
大丈夫!?』
幸彦さんの後ろから真美さんが何かワーワーと言っている。
「あ…大丈夫です…あの…ご心配おかけしました、あの……周斗、いまウチに来てます。」
『…は?』
その後の幸彦さんはだいぶ怒りを堪えて、今日今から行っていいかな、と言って来た。
この4年間、坂口夫妻とはやり取りしてて、時々家にも行っていた。
ここのアパートの住所もわかってる。
今から行くから周斗くん逃がさんと一緒におるんやで。と釘を刺された。
30分くらいで二人がアパートに来た。
幸彦さんも真美さんも目付きがすわっていた。
「周斗君、よく甲斐君の前に顔出せたねぇ。」
面白い事してくれるやん。と真美さんが怒りを堪えた声で周斗に言った。
周斗は床に座って真っ直ぐに正座していた。
バチン!と平手で真美さんが思いっきり周斗の顔を打った。
「アンタ!次あんなナメた事したらこんなもんじゃすまんからな!!!」
とご近所にも聞こえたんじゃないかっていう大声だった。
幸彦さんはまぁ、叩かれて当然、と言う顔をしていた。
周斗はしっかりと頭を下げて
「二度としません。」
と一言だけ発した。
「このアホぉ…甲斐君、本当、ええん?」
と真美さんが俺に向き直って抱きしめてくれた。
坂口夫妻には頭が上がらない。
ずっと、見守ってくれた。
俺が出張風俗に所属するって言った時も、心配してくれた。
俺が周斗を諦めようと頑張ってるのをずっと支えてくれて。
「はー良かった。ほいじゃ邪魔者は帰るわ。
馬に蹴られたらかなわんからな。
甲斐君も周斗君も今度またウチ遊びに来てよ。
チビらも甲斐君甲斐君煩いから。」
まぁ、暫くは周斗君の事はチビら敵やと思ってると思うけど。と言って帰って行った。
周斗の顔には真美さんの手形がくっきりついていて「無茶苦茶効いた」と周斗が真顔で言った。
ベッドに座らせて冷凍庫から保冷剤を出してタオルで包んで周斗の顔にあててやる。
その間も、ずっと周斗が俺を見てくる。
向かい合う俺の腿裏を自分の方に寄せて膝の上に俺を座らせた。
「エージ、本当にちゃんとやり直させて。
絶対エージの事一生自殺なんてさせないから。」
そう言って俺を抱きすくめてくる。
「うん」
俺の大好きな顔と、大好きな声と身体。
「俺、御子柴から聞いた時も、ホテルでエージが慣れた感じだったのもめちゃくちゃキツかった…
自分があんな事しておいて言える事じゃ無いのわかってるけど、今の仕事辞めて欲しい。」
「うん」
この身体に抱きしめられる事がこんなに安心するなんて。
忘れてたな。
「あのさ、一昨年から御子柴と一緒にユニット組んで映像の仕事始めてさ、それが上手くいっててエージ一人食わせる事できるくらい稼げてるんだ。」
御子柴君と周斗は映像の専門学校の同級生だ。
エージの事見つけたら何かあっても囲い込めるくらいじゃないと、ダメだって御子柴に言われたからエージ側に居なくて滅茶苦茶しんどかったけど頑張ったんだ。
って。
ダメだったらどうするつもりだったのって聞いたら、いいって言うまで軟禁しようと思ったって。
どんだけ…
店にはその日のうちに、もう身体使う仕事は出来ない事を伝えた。
店長は甲斐君が辞めちゃうのは痛手だけどよかったね!っていってくれた。
むしろ何も言わずに飛ばないでくれてありがとうって言われたよね…
こういう世界に生きてる人は何も言わずに何処かに消える人も多いもんな…。
馴染みで連絡先のわかる人には辞める旨を伝えて連絡先を消した。
中には会うたびに「瑛士君、恋人なろうよ」っていう人も居たから、その時はちょっと手が止まったりした。
「この人、俺と付き合いたいって言ってたな」と言うと、周斗は不安そうな困った顔をしていた。
「でも、誰とも付き合うって俺なんなかった。」
俺は周斗の事を忘れたつもりで、忘れられてなかったんだ。
御子柴君が夜、俺のアパートに来ていの一番に周斗にゲンコツをくらわしてた。
地味に痛そうで俺まで首が引っ込む。
「俺は話し合えとは言ったけど無理やりヤれとは言ってない」
って。
もしこれで瑛士君が訴えでもしたらお前と一緒に仕事も俺も終わってたわ。
って。
昨日、ホテルでドア越しに俺がヤられてるのなんとなくわかったけどもうドアはオートロックで開かなくなってるしやばい事なったかもって青ざめたみたい。
ホテルのスタッフ呼ぼうかと思ったけど、大事になっても困るし、周斗の事信じる事にして坂口さんと連絡取ったって。
「電話口だったけど俺、マジで坂口さんに殺されるかと思ったよ…」
坂口さんに連絡を入れた時、俺になんかあったら周斗の事も御子柴君の事も許さないからな、と言われたらしい。
「瑛士君信じられないかもしれないけど、コイツ…今だからバラすけど瑛士君とお揃いのタトゥー入れる前から瑛士君の事好きになっちゃってしょうがなかったんだよ。
バイト先になんか凄い可愛い子来るって。
その子に冗談で付き合おって言われてるけど、どうしようって飯に呼び出される度に俺言われてたんだから。」
いざ付き合ったら好きが異常な方に転がって、あんな事したけど気持ちに嘘がない事は保証できるから、いつかできたら許してやってって言われた。
なんだよそれ。
「バカだなぁ周斗」
俺は御子柴君の言葉を聞いて涙が込み上げた。
何してんの本当。
周斗、本当にバカ。
お前のせいで酷い目に遭った。
苦しくてしんどかった。
だけど今、目いっぱい幸せだよ。
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