ファンタジー短編

八月灯香

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望む世界2

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「…エモニ…皆…しばらく会えなくなるかもしれない…」

ある日少し暗い顔をしてノアが言った。

「でも、来れるときはなるべく来るし…僕…絶対戻ってくるし…その時はまた一緒にいさせて欲しい」

「なんも心配しないでいい、私らはここでノアを待ってるから。」

マァンクがノアの背中を撫でた。

「マァンク…ありがとう。」

スキエンティアも、テメリタースも、ナートゥーラもいつでも好きな時に帰っておいでとノアに声をかけていた。

俺だけが、ノアがこのまま何処かに消えてしまい、二度と会えないんじゃ無いかという不安でいっぱいになり曖昧に笑う事しかできなかった。

ノアが来ない日々は喪失感が心を蝕むようで耐えがたかった。

いつも突然消えてしまう事のあるノアをどうやったら引き止められるかがわからない。

惑わしの草原を見つめていてもノアの居ない日々。

魔物の討伐依頼をこなし、毎日の不安を消す様に危険な物も積極的にこなした。

「…エモニ…荒れてる時にあんまり危険なのに手をつけて大怪我でもしたらノアが帰って来た時悲しむからやめようや。」

ナートゥーラに言われてささくれだった心が少し落ち着く。

そうだ、ノアは必ず帰って来ると約束した。

そこから数日後、ノアは約束通りに戻って来た。

以前より頻繁に会える様になり、ノアの存在が当たり前になった。

不思議に思ってる事があった。

ノアは俺達の前で一切の飲食をしない。

食事を摂ろうとはしないが、俺達が食べている様子をいつも楽しそうに見ている。

「ノア、肉食うか?」

「何も食わねーのつまんなく無いのか。」

「みんなが食べてるの見てるの楽しいから大丈夫。」

と言いながら飲み物にすら手をつけない。

「ノア、お前食べねーからそんなほそっこいんだぞ!エモニを見てみろや。」

よく食うからこんなイカつい身体なんだぞ、とテメリタースがノアの肩に腕をかけながら自分の筋肉を自慢していた。

「マァンクだって僧侶のくせにムキムキだからな。」

ああ、でもノアがこんな生臭ボウズになったら嫌だなぁ。とナトゥーラもマァンクを指しながらゲラゲラ笑った。
マァンクも笑いながら2人の指を叩き落としていた。

スキエンティアは「やめなさい、ノアにだってそうしない理由があるのよ。」と苦笑しながら男共のデリカシーの無さを嗜めた。

後からスキエンティアからノアの居ない時に「ノアは何を食べても味がわからないみたいなの」と聞かされた。

気を遣って「みんなが気にするから僕はいかない、みんなで食べて。」と言いかねないからそれからはその事でノアを揶揄う事は一切しなくなった。

みんな一様に自分達に好意を持って後をついてくるノアが可愛かった。

邪魔に思った事は一度だって無い。

ノアが当たり前のように近くに居て、楽しい毎日が続いた。

ノアがそばで笑ってる日々が一生続けばいいと思った。

モンスター討伐依頼も多くあったが、慎重にやれば難しい物はなかったはずだった。

その日の討伐対象はバジリスク。

数は多くはないが、出てくると人を食い居住地を荒らす。

1匹で小さな集落なら1日で潰してしまうような厄介なモンスターだ、

人里近くまで降りて来てこのままでは近いうちに人間の住む土地を荒らし始めてしまうのをなんとかしてほしいという依頼だった。

身体も大きく、危険度の高い依頼だが当時の俺たちにとっても手こずる様な相手では無い。
周りに請け負える者は無く、俺達が引き受けるのが当然かの様に話が回って来た。

「どうするかな…」

「もうほとんど村の近くまで出て来ちゃってるみたいだな。」

「バジリスクかぁ…めちゃくちゃ金にはなるけどなぁ。」

考えさせてくれなどと言ってられない様子だったが、ノアを危険な目には遭わせたくなくて、全員が渋い顔をした。

ノアを置いていく事は最早誰も考えられ無かった。

「エモニ達なら…」

ノアが言った。

エモニ達ならなんとか出来るよね?

殺さなくても、なんとかバジリスクを棲家に押し返せたら。

ノアに危険が及ぶ前に討伐してしまえばいい。
討伐対象は1匹だし、俺達はノアをガードしながら討伐を見せてやる事にした。

隊列から離れてはいけない事をくどいほどに言ってしまう。

「うん。わかった…!」

あの時の嬉しそうに瞳を輝かせた表情が忘れられない。

抜ける様な青空で、気温も気持ちのいい日だった。

何の懸念もなく、いつもの様に倒してモンスターの身体の使える部位を剥ぎ取って持って帰って金にする。

それだけ。

バジリスクは体側に4対の脚を持ち、爬虫類の様な皮膚をしているが頭は鶏の面構えをしている。

個体数が少なくて珍しく、全身が何かしらに使えるので欲しがる者は多い。

なので死体がかなりの金額になる。

しかし討伐できる者が少ない。

非常に素早く獰猛で、口から粘りのある炎を吐く。

血を浴びても猛毒なので、討伐の装備にも金がかけられる者に限られて来る。

俺達のギルドはそれぞれの身体スキルが強く、過去にもバジリスクの討伐経験がある。

一応毒避けの護符を全員に持たせた。
ノアには一番効果の高いものを。

「血の飛沫浴びたりしてちょっとでも具合が悪くなったらすぐにスキエンティアかマァンクに言うんだ。」

「毒よけの護符が効かないなんて事は無いと思うけど、そうしてね。」

ノアは素直にわかったと答える。

目撃情報のあった付近の村は一時的に人がみんな避難している。
人が生活している形跡はあるのに亡霊にやられたかの如くどの家ももぬけのカラでかえって不気味に感じた。

村の周りを散策していると、バキバキと小枝を大量に踏み折るような音が近づいて来た。

「…来るぞ。」

ゆっくりと茂みから嘴が露出し始める。

「うぉ………」

ノアがバジリスクを見上げて驚きの声をあげた。

人の気配とにおいを感じ、餌にしてやろうと巨大な身体が開けた場所に踊り出て来た。

「デカいけど色が地味だからメスだな。」

「コレがバジリスク……」

僕が知ってるのは顔もトカゲみたいだったのに…とノアが言う。

どう言う意味なのかわからなかった。
ノアはバジリスクを他所で見たことがあるのか…?
他のモンスターと間違えているのか。

「こいつは防具も効果が無い高温の炎を吐くから、喉の辺りに火袋があるのがわかるか?あれが膨らんだら顔の正面に行ってはいけない。もし正面に捕らえられそうになったら左右どちらかに迷わずにげろ。」

背中の大剣を抜いて戦う意志をバジリスクに伝えた。

「エモニ…右手にもう一体いる。」

ナトゥーラが茂みの奥に潜む一体を見据えている。
ナトゥーラは獣人としての勘を使ってバジリスクの存在を感知したようだった。

「小さいけど間違いないな、バジリスクだ。」

「メスを追っかけて来たオスか…」

「ノア、オスのバジリスクはメスよりもド派手な色してるから、仕留めたら後で見せてやるよ。」

「うん…!」

「ナトゥーラ、こっちは俺とスキエンティアで片付けるから、もう一体なんとか出来るか。」

「余裕だな。」

パッとナトゥーラが茂みの方に向かって駆け出した。

「テメリタース、マァンク、ナトゥーラの援護を」

「ほーい。」
「了解した。」

バジリスクがこちらを見据えて威嚇の雄叫びを上げる。
呼応するかのように茂みからも声が上がり、鼓膜が震える。

目の前のメスのバジリスクの首を大剣で切り付け、その首を地面に落とす。
首を落としても胴体だけになっても暴れるから心臓にも止めをさした瞬間、

後ろで護り魔法の閃光が放たれた。

スキエンティアが発動したものだとしたら、後ろで何かが起きた…。

「ノアァァァ!!!!!!」

スキエンティアの叫び声が聞こえた。
ギルドを組んでから初めての事だった。

素早く後ろを振り向くと、近くに居たはずのノアが居ない。

右を向くと茂みの中から姿を見せずにもう一体が口を開けて炎を吐いた名残りを見せていた。

メスを追いかけて来たであろう極彩色のオス…

まさか同じ場所に3体も出くわすなんて完全に想定外だった。

スキエンティアがノアの居たところに駆け寄り俺は急いで現れたもう一体を討伐しはじめる。

テメリタースとナトゥーラ、マァンクもオス一体を倒して戻って来ていた。

テメリタースの矢がオスの眉間を貫き、大きく口をあけたその中に飛び込む俺にマァンクが防御魔法をかけた。

喉元を大きく切り開き、ナトゥーラが心臓を止める。

スキエンティアの叫び声が聞こえた3人は異変を察知して硬い顔をしていた。

「…ノ…ア…?」

スキエンティアが地面に跪いて震えている。

どうした、何をしてる。

地面に倒れ、手足を力無く投げ出した小さな身体。

「ノア…?」

「エモニ……ノアが…」

まさか気絶でもしたのか…?

スキエンティアがノアを抱いている様に見える。
なのに、何かが足りない。

どうして…頭が無いんだ。

「ぁ……こん…な……こんな事……」

スキエンティアの悲痛な声。

「嘘だ………」

さっきまで…すぐさっきまであんなにもキラキラした瞳を見せてくれたじゃ無いか…

身体の血の気が一気に引いた。

「ノア………」

血止めなどしなくても、傷口はバジリスクの炎で焼き止められていた…

「こんな…これでは…もうどうにも出来ない……」

余りの高温の炎で焼き飛ばされていて頭は再生させる事が出来ない、蘇生は不可能だとマァンクが言った。

蘇生させるにも、条件がある。

手足が無くとも蘇生は出来る、千切れていても揃っていてすぐであれば魂を呼び戻して蘇生は可能。

絶対条件として頭、心臓は欠けてはいけない。
どんな優れた術者であろうとも、頭と心臓が欠けてはアンデッドにすら出来ない。

誰もが言葉を失った。

連れてくるべきではなかったなどと…そんな事を後になって考えてももうノアは元には戻せない。

事実だけがそこにあった。

唖然としたままのスキエンティアからノアを受け取り、何にもならないだろうけれど癒しの加護のついた布でノアの身体を包んだ。

傷を負った時に必要だからと持ち歩いていた物…

頭を失ったノアの身体は何度かふざけて抱き上げた時よりも軽かった。

「ノアは…家に連れて帰るよ…」

そこからはほとんど記憶がない。

軽いノアの身体を抱いて帰ったのに、

眠れずにノアを抱いたまま夜を越したはずなのに、

ふとした瞬間にノアの身体は跡形もなく消えた。

癒しの布だけが残り、この世界からノアが完全に消失したのだと理解させられてしまった。







何事も無かったかのように振る舞うことはできなかった。

スキエンティアもタッチの差で護りの魔法が間に合わなかった事を悔やんで酷く落ち込んだままだった。

モンスターによる人の死を見た事がないわけでは無い。
マンティコアの討伐に帯同させてくれと言って来た冒険者が居た。

護りながら討伐するのは大変なので自分の面倒は自分で見るならという条件で。

案の定その冒険者はマンティコアにターゲットにされて肉片にされた。

一通り肉を集めて箱に入れ教会に持って行ったがその後どうなったのかはわからないし、全員が自業自得だと思っていた。

しかし……ノアは違う。

ノアが居ない。

俺の世界に確かに存在していたノアが居なくなってしまった。

亡骸が纏って居た服や装備すらも残らずに消えた。

その事が全員に酷く悲しみを齎した。

スキエンティアは形見も無いことに更に酷く落ち込んでいた。

「…ノアは元々が不思議な子だったから…」

と、暗い瞳で呟く様にこぼした。

そう考えても、護れなかった事に変わりはないわね…と虚な表情をしていた。

俺もそうだと思うしか無かった。

焼き飛ばした炎が早過ぎて、きっとノアは苦しまなかったはず。


もしかしたら、と惑わしの草原に何度も足を運んでみたが、ノアは現れてはくれなかった。

精霊達の光だけが、いつもと同じに草の上を漂っている。

痛みは時間が癒すと神官達は言うが、俺達にはそんな言葉は無意味で、生傷の様にいつまでも胸が痛んだ。

聖騎士である以上、王から命じられた土地を護らないといけない。

人が困っていれば助けに出なければならない。

いっそ全て、この世の全てが魔物に喰われて仕舞えばいいのにと願ってしまう…

ノアを失ったのに、どうしてノア以外の、こんな人に頼るだけの奴らを護らなければいけないんだ…

護るのなら、ノアだけを護りたい。

護れ無かった癖に。

怒りが心の中に溜まっていく様だった。

何年かは機械的に仕事をこなすだけの生活になった。

モンスターを討伐しても酒場で笑い合いながら食を共にする事も無くなった。

ノア、ノアに会いたい。
君は俺の心を今でもこんなにも捉えているのに。

悲しみが度を越しすぎて涙が出てくることも無く、1人で居ると虚無が支配してくる。

苛立ちを討伐対象のモンスターにぶつけてしまい、金に出来ない程に損壊してしまう。

それでもみんな何も文句は言ってこなかった。

…わかっている。
モンスターを滅多うちにしても、ノアは帰ってはこない。






「…エモニ…こんな事を言うのはどうかと思って黙ってたんだけど、ナトゥーラもそうじゃないかって言ってる事があって。」

モンスター討伐に向かう途中、テメリタースが小声で言う。

マァンクは落ち込むスキエンティアとよく話し込んでいた。

「あのさ…変な期待させんのはいけないと思ってんだけどさ……ノアのにおいがする時があんだよ…」

テメリタースが何を言ってるのか一瞬わからなかった。

「ナトゥーラはにおいがした時に、ノアにそっくりな人物を見てる、特殊能力なのか魔法なのかなんなのか姿はすぐに追えなくなるんだけど実は俺も時々見てる。」

最初は言っている事が理解出来なかった。
気が立って居ると討伐について来てるような気配がする時が増えて来てる。

…もしかしたらノアの亡霊なのかもしれない。

獣人は人間よりも嗅覚が鋭い。
そしてあれだけ一緒に行動していた2人がそう言うのだ。

2人はスキエンティアにもその事を話した。

「…亡霊だとしても…ノアはどうして私達の前に来てくれないのかしら…惑わしの草原の精霊達にもなんとかノアに会わせて欲しいとお願いしたけどダメだったのに…。」

でも、ノアは近くに居るのね。そう言ったスキエンティアの瞳は輝きを取り戻していた。

討伐に出た時に、テメリタースとナトゥーラが「いる」と耳打ちをしてくる時が増えた。

スキエンティアは話を聞いてすぐに能力無効魔法を会得していた。

「フフ…ノアったら自分を上手に隠す能力があるのね。でもわたしは魔法が上手だから…
あなたに気付かせないであなたを見つけられたわ…ノア…」

ついて来てるノアは亡霊なんかじゃないわ。

とスキエンティアが嬉しそうに笑った。

スキエンティアが何処からか1人の召喚術師の男を連れて来た。

ソイツは身なりも汚く、1人で辺境に住みほとんど誰とも交流をしていないが強欲で、金貨を見せ、成功報酬もあると言うと、濁った眼を歪に細めた。

「のたれ死んでも誰も気に留めない様な召喚術師よ…。」

湿地にモンスター討伐に行くふりをして出向いた。

ノアは俺達の誰かに少しでも危害が及そうな時、積極的に援護をしてくれる。

ノアには悪いがそれを利用する。

ついて来るのを喜ぶのではなく、俺は実物のノアをこの手に抱きしめたい。

湿地の中頃まできた時、小石が跳ねる様な音がした。

全員が後ろを振り返ると、水から出た触手に小柄な人物が捉えられて居た。

フードを取られ、色の白い顔が露わになり、全員が捕らわれている人の顔を確認した。

「本当に…ノアなのか…!?」

マァンクが驚きの表情をしている。

抵抗し、もがいて居たのがびくりと怯えるように跳ねて身を硬くしたのが見える。

召喚術師の男がニヤニヤとしながら捕らえた人物を品定めして居た。

「ァ………い…いやだ…いや………」

小さな声が聞こえた。

「ノア…!!」

間違いない、ノアの声だ。

「…あの男…ノアを魔物で弄んでる…」

スキエンティアが嫌悪と怒りの表情を浮かべた。
スキエンティアの言葉を聞いて、自分が殺気立つのを感じる。

それはその場にいる全員が同じだった。

「テメリタース」

「言われずとも!」

テメリタースが炎の矢を放つのと同時に俺は駆けはじめた。

召喚術師がハッとして眼を見開いた。

矢が到達するのと同時に触手はノアを空中に放り投げた。

ノアは飛行魔法は使えない。
空中に投げ出され落下していく。

この高さは落としたらまずい…!

神経を研ぎ澄ませて落下点の下に直行し、腕の中にしっかりとノアを受け止めた。

すぐ側に化石化した木が突き出て居て後一歩、足一つ分でもずれて居たらノアの死を再び見ることになっていたかもしれなかった。
全身から安堵の汗が噴き出てくる。

受け止めたノアは、俺を見て「エモニ」と小さく名前を呼んですぐさま気を失った。

「…逃げられると思ってるの?」

召喚術師は慌てて背を向けて逃げるのをスキエンティアが拘束魔法で捕縛し、魔物はナトゥーラとマァンクが仕留めた。

「おばかさんね…欲をかくなんて本当に愚か。」

「グッ…!」

スキエンティアが召喚術師を尋問して深い水位の穴に沈めて居た。

溺れゆく召喚術師は小さな水中に無数に居る肉食の魔物に食われながら絶命していった。

「ノアにした事、身をもって償いなさい………。」


魔物の粘液塗れにされたノアを見てマァンクもテメリタースもナトゥーラも信じられない物を見る目だった。

「本当に…こんなことが…生き返らすにも身体に欠損があってはそこは元には戻らないはず…なのに…こんな……」

マァンクは喜びと困惑の声をあげる。

「でもにおいは完全にノアのだもんなこれ…」

「間違いない。」

獣人2人のお墨付きが出てスキエンティアは興奮した目でノアを大判の布で包んだ。

「すぐに帰りましょう。このままではあの魔物の毒が回ってノアがどうにかなってしまうかもしれないわ…エモニ、すぐ屋敷に、話があるの。マァンク、3人でエモニの屋敷に跳ぶわ。」

マァンクとスキエンティアが協力して空間移動魔法を発動させ、屋敷に俺とノア、スキエンティアが飛ばされた。

「ノアをすぐにお風呂に入れて。粘液が皮膚からも吸収されちゃう。」

ごめんね、ノア、と言いながらスキエンティアがノアの服を脱がして暖炉で焼いた。

「あのローパーは拷問にも使われる種族。粘液には強い催淫作用があるわ…そんなに時間が経ってるわけじゃないから今すぐ綺麗にしてやれば問題は無いはず…。」

湯船に早急にお湯を張り、ノアの身体を浸けた。

「色の白い事…商売女達が嫉妬しそうね…」

ノアの性器が勃ち上がっているのが見える。
スキエンティアは見ない様にタオルをかけた。

「意識が無いのに仕方ないとは言え、見てしまってごめんなさいね、ノア。」

解毒魔法をお湯にかけているが、どれだけの粘液が身体に吸収されてしまったかがわからないわねとスキエンティアは呟いた。

「あの召喚術師…私たちが追ってる人物なら、私たちが支払う依頼料や謝礼金よりもっとお金になると思って引き受けたのよ。
そしてノアを見てノアの事を闇オークションにかける気になった。」

ノアは不思議な雰囲気を持っているし、肌の色も高級娼婦より白い。

この世界で見ることの無い黒い瞳。

あの召喚術師はそう言う目でノアを見て横取りしようとした。

「エモニ…今すぐじゃなくてもいいのだけど…貴方ノアを抱けないかしら?」

スキエンティアがエモニを見る。

「ノアをここの世界に留める方法。
ノアを抱いてノアの身体の中に貴方の精液を入れて。
…私、二度とノアを失いたく無いの、エモニ、貴方だってそうでしょう。
だけど私はそそぐ側ではないからノアを抱く事はできない。
…貴方の場合はずっとノアをそう言う意味で想っていたでしょう。」

ノアはこの世界の人間じゃ無い。
人物鑑定の出来る師匠筋に調べてもらったの。

魂がどこからかこの世界に迷い込んできたのを、精霊達が気に入ってしまってノアの魂を引き止めようとノアの身体を具現化させた。

いつも消えてしまうのは存在が不安定だから。
食事をしないのもそう。

こちらの物を口にしてしまえば、ノアはこの世界に徐々にとどめられてしまう。

男である貴方の性をノアの身体に入れてしまえば、より強くノアをこの世界に結びつけられる。

「ノアが…それでいいって言ったらの話だけど…。貴方が出来ないのなら、マァンクにお願いする事になるわ。」

彼はそういう気持ちじゃ無くてもノアを抱けるから。

テメリタースとナトゥーラは完全にノアと種族が違うから成功しないかもしれないから頼まない。

スキエンティアが決まっている事かの様に言った。





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