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黒猫の幸福4
しおりを挟む「アキッレ…。」
アキッレを受け取って屋敷に戻った。
もし、アキッレを始末する場合は、私がやりますので。
とジョルジョは真剣な目で言った。
上気した頬、涙を溢れかえらせながら苦悶に歪む目元。
いつも美しく光をたたえる灰がかった紫の瞳の瞳孔は開いて焦点は合っておらず、いつもは明るく笑い声をあげる唇も苦しげに呻くばかり。
使用人やメイド達に見つからない様に部屋に戻ってソファでアキッレを膝に抱き、頬を撫でた。
「ひ…ひ………ぃ…ん……ぅ………!っつ………!!!い……や………も…いや………!!」
アキッレが怯えながら嬌声を漏らす。
小柄な身体から震えが伝わる。
身体の中を激しい欲情が発散出来ずに暴れ回っているのだろう。
「ジョル…ジョ、やだ…もう…ころして………ころせ……!しにたい……!!」
錯乱状態にあって自分が誰といるのかの判別もついてない有り様だった。
アルノルフォに知られる前に、と悲しみの声をあげ、唸るようにアキッレの鼻に皺がよった。
暴れる身体を抱きすくめてアルノルフォは「生きて」とキスをした。
唇を舐め、小さな歯が並んだ口の中に舌を差し入れて口の中を撫でた。
暫くそうしていると小さな舌が応えるように動いた。
「ん……ん………ぅ………」
自分の宝物が、こんなにもがき苦しんでいる。
血の味が舌に伝わってきてアルノルフォは泣きそうになった。
ころして、とうわごとの様に苦しんでいたアキッレの目の焦点が結ばれていく。
「…?アル…ノルフォ…?」
「そうだよ。」
「なんで…」
アキッレは顔をくしゃくしゃにした。
アルノルフォが唇を寄せるとアキッレは青くなりながら首を振って拒絶する。
「ダメ。アルノルフォ……こんな事…ダメだ。」
「…僕はアキッレが好きだ。」
大きな目が見開かれる。
「アルノルフォはちゃんと人間の妻を迎えるべきだよ…」
「アキッレ、僕はアキッレと一緒になりたい。」
「おれが…おれが死にそうだから…?」
「そんなわけないだろ。」
「おれは…おれはアルノルフォの子供を産んでやれない…」
「アキッレが居てくれたらそんなのどうでもいい。」
「そんな事…許されない…」
「誰が許さないの?誰がなんと言おうと僕はアキッレがいい。出会った時から、ずっとアキッレを望んでる。
僕が領地を受け継がなくてもエイノとオスカリが居るし、父さんだってまだまだ現役だ。
僕はアキッレと一緒になる。
アキッレが嫌だって言っても、無理矢理でも。」
「でも…」
「アキッレは僕じゃ嫌?」
灰がかった紫色の瞳が大きく揺れる。
目の淵から透明な雫が溢れてゆく。
「……い……やじゃ…ない……」
アキッレはずっと耐えていた。
想いを知られない様に。
大人になりゆくアルノルフォと共に成長しながら、
いつかこの隣にはふさわしい人の女が立つのだろうと思うと胸が痛んだ。
だがそれは仕方のない事。
身体がメスになってしまったのも、理由なんて本当はすぐに理解した。
想いが強すぎてつがいにして欲しいと身体がアルノルフォだけにわかるフェロモンを放ったのだ。
そしてメスとしての発情が現実のものとなり怖くなった。
アルノルフォが人間達から慕われていることは騎士団として帯同していれば嫌でもわかった。
この想いは、種族が違うのに多くの領民からアルノルフォを取り上げる身勝手な事だと思った。
自分達の種族を攫った人間達と同じにならない様に自分は身を引くべきだと。
「アキッレからしてるこの甘いヒヤシンスの匂い、僕しかわからないんだって。
アキッレも僕を選んでるってことだよね。
僕は凄く嬉しいよ。」
何度もアルノルフォはアキッレの唇にキスを落とす。
「キスしてから苦しいの、マシになってるね?」
アキッレは小さく頷いた。
「アキッレは僕の事好き?」
アキッレはそれにも頷いて「好き」と小さく答えた。
アルノルフォは「よかった…」とアキッレを強く抱きしめた。
「こんなに想いあってるんだから…一緒になろうよ。」
アキッレはアルノルフォの肩に顔を埋めてやっと頷いた。
*
アキッレを包んでいた布をとる。
綿のロングシャツを着ていたが、袖は所々小さく破れて血で汚れている。
股間が当たる部分は濡れて張り付いて陰茎の形がわかるほどだ。
捲り上げてシャツを取り去ると、美しい裸体が出てくる。
腕の噛み傷だけが痛々しい。
アキッレを抱き上げると、素直に首に腕が回ってきてアルノルフォは嬉しくなった。
膝の上にアキッレを乗せてベッドの縁に腰をおろす。
「触っていい?」
狂う程の苦しみが収まっても発情してずっと主張したままのアキッレの陰茎を柔らかく握り込む。
アキッレがギュッと首に抱きつく。
「ぅ………ん…ん……!!」
ビク、と身体が揺れてアキッレの身体からヒヤシンスのにおいが濃く香る。
「顔を見せて。」
そろそろと顔があげられた。
苦悶で歪んだ表情ではなく、アルノルフォに欲情した瞳だった。
アキッレの唇が薄く開き中の舌が揺れている。
「ン…ン………」
必死になってアルノルフォの舌を吸うアキッレをベッドに寝かせて膝を立ててうつ伏せにさせた。
ゆらゆらと尾がゆれ、付け根の双丘の間の窄まりが見え隠れしている。
指に唾液を纏わせて指をあてると入り口が少しだけ抵抗したがすんなり指を押し込められた。
「ぁ………ぅ………」
アキッレの中は熱く滑ってアルノルフォを迎え入れようと蠢いて、内側から粘液が染み出た。
入り口を広げるように指を動かしていると泣きそうな声が上がると同時にシーツの上にパタパタとアキッレの精液が落ちた。
「ひ…….ひ………あ………」
腰を揺らめかせながらアキッレは両手を握りしめてベッドにおでこを押し付けている。
「アキッレ、いい子だね」
優しい、アルノルフォの声。
アルノルフォがアキッレを見つけた時もそうだった。
優しくおいでと手を伸ばしてくれた。
この人がいい。
ずっとこの人といたい。
おれを助けてくれた人。
「アルノルフォ…」
尾を高く上げて誘う。
アルノルフォがスラックスをずらして陰茎を取り出した。
幼い頃、アキッレの裸体を目にした時感じたものはアキッレに対する明確な欲情だった。
アキッレの甘い匂いと嬌声でもう興奮はピークに達している。
手に唾液を吐き出して昂りに擦り付け、アキッレの滑る尾の付け根にゆっくり押し込んだ。
アキッレのなめらかな尾がアルノルフォの腰に巻かれ奥を突いてくれと急かす。
「…はっ……アキッレ…痛くない?」
「ん…あ………!…ぁ…!は……!!」
アキッレは答えられずに首を振りながら嬌声を溢す。
アキッレの中は熱く熟れてアルノルフォの陰茎を飲み込んでいく。
首や背中があからんで色っぽくゆれる。
引き抜こうとすれば引き留めるように肉が巻き、押し込むと肉壁が舐める。
前立腺を亀頭が掠めるたびにアキッレの腰が崩れそうになるのをアルノルフォの手が引き戻した。
「あ…!あ…!あ…!!ん…!!あ……あ!あ!アル…!ア…ル…!!!あ…い…………っ!!ひっ!!!ぁ……ぁ!アーーーーッ!!!!!」
アキッレが絶頂して一際大きく震えた瞬間、アルノルフォを包んで居た肉壁が強烈にうねった。
「ン…!!」
アルノルフォはたまらずにアキッレの胎の中に吐精し、腰を押しつけたまま後ろからアキッレを抱きしめた。
「ァ………は………っ……」
アキッレはアルノルフォの吐精で自分を狂わせる怖い発情が緩やかにおさまって行くのを感じていた。
アルノルフォはもう、2度とアキッレがいなくなるかもしれないという思いをしない様に、繋ぎ止めておこうと強く思った。
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