お隣どうしの桜と海

八月灯香

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お隣同士の海と桜 ふうふ編

おかしいって。

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今日は職場に2人お客さんが来た。

桜が前にモデルをした事あるハイブランドの会社の人が2人…

今、俺の職場の来客スペースの作り物みたいな人間偏差値が天元突破している。

グンナーおじさんに桜、そして客の二人…

なにここ。

ハイスペびっくり人間の祭典か。
なんでこうも会社にくる人間の顔面の造りも良ければ身長もデカいんだ。

あと二人揃ってやらしくない高級品の匂いをさせてる。

schwarzer Edelsteinっていうハイブランドが並んでるエリアで良く見るとこの最高経営責任者の神山クリスティアンさんとそこの専属モデルとかもやってる青池蓮さん…

2人とも俺より長身で、神山さんは桜より少し身長デカい。
声が低くて神山さんはなんか桜と同じ様な雰囲気の強みのある男前で、グンナーおじさんと同じくらいの身長あって威圧感が凄い。

青池さんは男から見ても目元の黒子が色っぽくて色気あって脚がこれまた長い。
同じ身長の人が横に並んだら腰位置が違うと思う。

自分と比べると股下ってなんだっけ?ってなるわこんなん。

「青池さんはランウェイ歩く程は身長が無いけど写真映えするんだよ。」

とか桜が言ってたけど、現物の青池さんめちゃくちゃ美人だしなんか毛穴がない気がする。

神山さんがもともとグンナーおじさんのグラフィック作品のファンで、schwarzer Edelsteinの商品に作品を使わせて貰えないか、っていうメールが来たから一度顔合わせをという事になった。

そういう交渉にまさかブランドの上の人が直接来ると思ってなくてびっくりしてしまった…

海外にも店舗あるし、海外セレブなんかもパーティーで着てるようなブランドだったから最初は詐欺メールかと思ったけど、桜がアドレスとかチェックして「あ、これ上の人から直接連絡来てる」って言ってたから返事を返した。

そしたらとても丁寧な文章でグンナーおじさんの作品のファンである事とか桜へのお礼が書かれていて好感度凄く上がった。

桜がモデルをした時はグンナーおじさんの父親だとは思って無かったんだって。


「海君、僕思うけどこの職場なんか本当にどうかしてるよね。」

先日、うちの会社に新しい社員が入社した。

エロ師匠矢作だ。

ヤバすぎるパワハラを受けてちょっと精神と体調を落ち着けるのに静養して、ようやく仲間入りとなった。

大丈夫っていうけどドン引きするくらいクマが出てる矢作を見てしまってたから、ちょっとずつお試し出社してもらった。

矢作は仕事はテキパキ型でカンがいいし物覚えもいいからめちゃくちゃ一緒に働きやすかったから、一昨日から本格的に出勤して来てもらっている。

そんな矢作が俺の隣でため息をついた。

矢作は飲食の会社に就職したんだけど、いい人だった店長が急病で辞めて本社から来たエリアマネージャーが店長になったら突然職場がブラックになって他のスタッフがじゃんじゃん辞めてって仕事があまりに激務すぎて死が見え始めたから転職先探してるっていってて。

「店長がずっと俺ら店舗の人間守ってくれてたんだよなー。
本社から来た人もうめちゃくちゃよ…。」
って言ってた時の矢作は目が完全にどっかいってた。

とりあえず労おうかなってお茶にいったら桜も行くっていうから一緒に行ったその場で採用になった。
採用になったきっかけもご飯食べててウチの会社の話になった時に、

「うちの職場は会社の人間も周りの人間もモデルやらなんやらの関係者が多くて顔面偏差値どうかしてる。
俺だけ普通なのに。」

って言ったら

「でたでたこれだよ…海君そろそろ自分の見た目の事自覚した方がいいよ。
学生の頃から何度も言ってるけどその顔面偏差値どうかしてる中に海君入ってるからね。」  

とか矢作が言い始めて。
そしたら桜が突然「矢作君転職するならうちに就職する気ない?」とか言い始めて。

矢作は間髪入れずにしたいですって即答してた。

でも今俺に外見の自覚をしろと言ってた矢作も流石に今日のメンツの顔面見て無になっている。

「これは海君の感覚バグるのわかるわ…」

人間なのに本当に光を放ってる…と職場のキッチンでコーヒー淹れる手伝いをしながら矢作が呟いた。

「だから言ったろ。」

「海君も高校の時に散々可愛いとか綺麗な顔してるとかいっぱい言われてたけど、ここの大人みんな輪をかけてファンタジーの住人すぎるわ。」

矢作は菜奈ちゃん見た時もびっくりしてた。
わかる、めちゃくちゃ美少女感あるもんな。
シグルドの母でーすアラフィフでーすとか言われて更にびっくりしてたな。

「うちの母親より歳上なのが信じられない…」

って唖然としてたから笑ってしまった。
まぁ桜の家は血的に純日本人居ない上に種類が違う美形一家だもんな。

矢作のお母さんは肝っ玉系で面白い人だ。

ハンドドリップで細く挽いた豆にコーヒーケトルから細くお湯を落とす。

沸かしたてのお湯はすぐ使わないでコーヒーケトルに移して温度を下げてる。

近くに豆を好みに焙煎してくれる店を見つけてしまってここ最近コーヒー淹れるのにハマって仕事してる時もハンドドリップで淹れている。

インスタントコーヒーの淹れ方もわからなかったようなのが良くもここまでするようになったもんだ。

トレーに四人分のカップと牛乳、砂糖を乗せて矢作に渡す。

「矢作のぶんもあるからとりあえずこれあっち持ってって。」

「はーい」

飲食で働いてた矢作は接客が上手なのでお茶とか持っていってもらうと来客時に凄くスマートにこなしてくれるから助かる。

そして矢作は真面目さも待ち合わせているので仕事もサボったりしないし、空気を読んでくれるからやりやすい。

矢作が入社してくる時、メッセージで
"あらかじめ言っとくけど海君が冬に膝に座って来そうになったらマジで叩くから。"
って入ってた。

そう、これは絶対やめないといけないやつ。
多分今の桜の前でうっかり暖を取ろうと矢作の膝にライドオンしたら桜は怒ると思う、理不尽に矢作を。

今後の俺の要注意事項…

因みにもう矢作からは「俺、消されたくないから」とオススメアダルト動画プレゼンは完全に無くなっている。
桜から矢作には別に何も言ってない。


矢作がすぐに戻ってきてしばらく二人で雑用とかしてたら桜が「海ちょっと来て」って呼びに来た。

「仕事の話終わったよ。
青池さんが海と話したいって。」

ハイスペが俺になんの話だよぉ…

来客スペースがキラキラ光ってて怖い…

俺の癒しのグンナーおじさん居なくなってるし。

神山さんも青池さんもめっちゃこっち見てくる…
右手と右足が一緒に出そうになる。

愛想よくしないととは思うんだけど、神山さんの放つ圧が凄くて思わずちょっと桜の後ろに隠れ気味になってしまう。

桜が俺の背中に優しく手を添えて前に押し出す。

「夫の海です。」って桜が言ってるから思わず桜の顔を見てしまう。

「お…夫の夏野です?」

って思わず疑問系になってしまった。

「あ、海君、畏まらないでほしいな。
緊張させてごめんね。
コーヒー海君が淹れてくれたって聞いてこんな美味しいのお店でもなかなか飲めないからびっくりしちゃって。」

青池さんがにこやかにコーヒー褒めてくれる。
ぐぉ…この人の笑顔色っぽくてやばい。
目元の黒子って色気がダダ漏れになるな。

神山さんと桜がじっとこっち見てるからなんか余計に緊張が増してしまう。

「ちょっとクリス、やめてあげて見すぎ。
海君大きい人居ると怖いから二人で喋ろうよ。」

ガチガチになってる俺に気がついた青池さんが立ちあがって言うので、キッチンスペースに折り畳み椅子を二つ持ってきて向かい合わせで並べた。

「もう少しコーヒー飲みますか?
紅茶もありますけど…」

「やった!コーヒー貰っていい?」

先程と同じ様に淹れて青池さんに渡すと、嬉しそうにカップに口をつけていた。

「はー!うま…最高。」

「お口にあってよかったです。」

「海君堅苦しいのやめよ。
俺海君と友達なりたいんだよね。
神山さんはおハイソだけど俺もともと全然おハイソじゃないの。
ソールバルグ君から海君お酒飲めるって聞いたんだけど、今度一緒に飲みに行かない?
飲み友なってほしいな。」

砕けた喋りでめちゃくちゃキラキラした笑顔で言ってくるじゃん…

これは人たらしの予感…!

「あと、俺と神山さんも海君とソールバルグ君と同じ意味のパートナーだから。」

神山さんの青池さんへのそぶりでなんとなくそうじゃないかなと思ってたけど…!

桜が嫌がらずに紹介してきたって事は友達になっても大丈夫って事だろうし、いっぱい喋ろって言われて連絡先を交換した。

堅苦しい人じゃなくて明るくて、実際に兄貴が居たらこんな人がいいなって思った。

「海君また連絡するね。」

来週二人で飲もうって青池さんと約束して、二人は帰っていった。

「なんかお兄ちゃんできたみたいで嬉しい。」

桜は「よかったね」って笑ってた。





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