お隣どうしの桜と海

八月灯香

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なんか…

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「海君なんかさぁ…最近エロくない?なんかあった?遂に女の子とスケベした??」

「はぁ?」

朝からエロ男爵矢作が俺を見て「雰囲気がエロい」と言い始めた。

「相手居ないのにするわけねーだろ、お前なんか変な動画送ってくるし変な性癖に目覚めたんじゃねぇだろうな!」

「あだっ!」

思わず矢作の頭を軽くはたいてしまった。

一瞬、ドキッとした。

このエロ男爵が送ってきた、あの嘘百合エロ動画のせいで俺は尻の性癖にバッチリ目覚めてしまっているからだ。

更に言うとあの後、矢作は俺にセクシー女優が男優の尻を開発する動画サンプルまで送ってきて男優の喘ぎ声が聞くに耐えなくて流石にそれは即やめてって返事した。
自分もあんななってんのかなと想像してゾワっとした…
アダルト動画はやっぱりちゃんと女の子があられも無い事になってるのがいい…

あんまりマニアックなの見すぎておかしくなった性癖が更にねじくれ曲がったらもう俺は生きていけなくなる気がするしな。
尻を掘られてる癖に今更だけど…。

童貞を捨てた矢作には本当は聞きたい事はいくつかあった。

お前も彼女に尻触られてんの?とか。

しかもうっかり「矢作素股ってされたことある?」とか聞いたらどうする。

も?って何?え?素股されたこと??どう言うこと??ってなったらもう詰むじゃん。


「お前!自分が彼女とうまくいってるからって俺をおちょくってんのか!怒るぞ!」

「ごめんごめん、俺のセンサーの誤作動だわ。」

「謝るならこないだのセクシー女優を画面から出してくれるか一休殿。」

無理でございます海右衛門殿~じゃねぇんだよ、屏風から絵を出せっつったのは殿様だわ。
誰がケツ顎眉毛だ。
古いアニメの再放送に矢作とハマってそれの真似ばっかしてるんだけど、クラスメイトにはほぼ通じない。


「そういや海君就活どうすんの?どんな仕事したいか決めた?」

「俺は桜んとこの会社に行くのもう決まってる。」

「ぐぁああ!!縁故採用!!!しかもソールバルグさんが上司だったらなんか海君可愛がられてるし働かなくても給料貰えちゃいそう…」

「そんなわけねぇだろちゃんと働くわ…矢作どうすんの?」

「うーん…とりあえず新卒募集してるとこ何件か応募するつもり。」

ちなみに秀一とガンちゃんは大学進学するって言ってた。

俺は全部おんぶに抱っこ状態なのにみんな着実に自力で大人になろうとしてるなぁと他人事の様に思った。





今日は学校終わったらマッハで家に帰る。
BL好きのクラスの女子がめちゃくちゃ良かった、萌えた、最高って言ってた映画を観るためだ。
話題にもなってたし、サブスクの配信リストみたら入ってた。
賞も獲ってるけど、ゲイものはなんか別にいいか、ってなってたやつ。

桜を好きだって自覚してからその作品気になってるし、秀一誘ってみたら三上君も自分達みたいな関係がどう描かれてるのか気になるって言うから3人で俺の部屋で観ることにした。

桜は泊まり練習で居ないし。

主人公は俺と同じ歳くらいの男で、歳上の男の事を好きになるっていう話だった。

エロいシーンで三上君が居るせいで秀一は真っ赤になっていたけど、話が進むにつれて主人公の想いが膨らんでいって…上手くいったかに見えたのに後半は悲恋に変わっていった。

最後は歳上の男に置いて行かれて電話で別れを告げられる。

最後の主人公の涙を流して堪える顔が自分に重なって見える気がした。

その頃になると、俺の気持ちはもうどん底レベルまで落ち込んでいった。

「やっぱこええわ」

と改めて声が出た。

あんなに大事そうに身体にキスしたのに。
あんなに、愛おしそうに触れてきたのに。

身体の関係があっても、それはただの身体の関係で。
想いが通じてるって想って燃え上がっても、相手は大人で分別がある様にみえて、慕ってくる同性の歳下を手のひらの上に乗せて可愛がれる。

そしてある程度楽しんだら、自分だけ常識的な世界に戻っていけるんだ。

一過性の経験で、どこにでも落ちてる話だよ、と納得するにはあまりに身近すぎてすぐには出来ない。

あんまりに落ち込んでいる様に見えたのか「や、海さんこれ映画なんで…」と三上君が言ってくれるけど、映画だから非現実で、現実に起きないなんて、誰もわからない。

「わかってる、大丈夫だよ。」
とうわべだけの言葉だけを返した。

桜を好きな気持ちだけ、今楽しもうと思うのも本心だけど、俺を抱く時以外の桜も俺だけのものにしたいと思い始めてしまっている。


こんな気持ち、やめたほうがいいのはわかってる。
だけど、初めて桜とやった時に見たあの桜の、俺に欲情した目を見てしまった。

セックスした時だけは、間違いなく桜は俺の物だった。

それは映画の中の2人も同じだった。

欲を持って相手に触る時は、付き合っていようがいまいがその瞬間は自分の物なんだ。

それで、いいじゃん。と思う反面、映画の最後みたいに桜が「俺、結婚するんだよね」って言ってきたらと思うと酷い気持ちになった。

桜も俺には凄く優しく接してくれる。
だけどそれは家族愛みたいなもんだ。

勘違いして痛い目に遭うのが、映画を観て更に怖くなってしまった。

だけど、映画の影響も大きくて、性的欲求は強く持ってるから俺は桜と再び身体の関係を持ってしまう事になった。
桜は俺の欲情の空気を掬い取って手を差し伸べてくる。

あの顔と声で「する?」ってきかれてしまうとその手を取ってしまう。

引き返せなくなるからもうその辺でやめとけよ、ってなるのに、桜が俺を触る手や唇が優しくてどんどんぬかるみにハマっていくみたいになった。

そして俺の身体は抱く側じゃなくて抱かれる為の身体になってるのも実感してる。
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