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中年柔道家、再始動

おっさん、黒帯を取る

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猪口
「瀬能さん 昇段試験受けないんですか?」

昇段、いわゆる黒帯だ、中学1年で柔道から遠ざかっていた俺は未だに黒帯を持っていない・・
中1の時に1級までは取っている、茶帯ってやつだ。
茶帯をわざわざ付けるのも、あれなんで白帯で練習をしている。

「そうだよな・・かっこ悪いかな・・」

北原
「瀬能さんは既に3.4段くらいなら簡単に取れそうな力ありますしね」

柔道の帯について説明しよう。

小学校までは最高位が1級だが2級までが道場の指導者によって与える事が出きる

5級:黄帯
4級:橙帯
3級:緑帯
2級:紫帯
1級:茶帯 審査あり

これが小学生までの帯の色である
ただし1級から絞め技などが加わるので小学生は2級までが実質最高位になる。

中学に上がった柔道キッズはまず1級の審査を受ける、審査に受かれば1級で茶帯の資格を得る。
しかし、殆どが直ぐに初段を受け取得するので茶帯なんか付けない
中学生以上で茶帯を付けているのは、いつまでも初段に受からない弱い者扱いである。

初段から5段までは黒帯
6段から8段が赤白帯
9段10段は赤帯だ。

ただ赤白帯からは27歳以上が条件で尚且つ実績が必要になる。
6段以上に関しては飾りともいえる、実質、黒帯が柔道の世界で一人前の分かれ目だ。

2段以上からは、受ける人口は激減する、昇段に必要な試合を受ける人間も強くなる。

社会人の大会は少ない、次の大会は秋口か・・・試合をしたいなら毎月開催されつ昇段試験だけということか・・・


「猪口さんは、今何段なんですか?」

猪口
「私は3段です」

そうか・・・やはり猪口さんレベルと試合をしてみたい・・・・思えば練習と試合は全然違うからな・・・

よし昇段試験を受けよう!

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昇段試験会場

初段を受ける子は中学生や高校生ばかりだ・・・おっさんの俺は浮いちゃうな・・・

少し恥ずかしい・・・・

まあ仲間に仕事を任せてまで来たのだ、一発合格必須だな

昇段は勝ち抜き戦

3P取得で可を得る、同級者に勝てば1P

神奈川県では月二回ある、片方は2回固定の試合をする方式、この方式は必ず二回以上試合が出来るが
1階で取得は出来ない
もう一つは今回の勝ち抜き方式
いきなり負ければ1Pも取れない、その代わり1回で取得できる。

こういう恥ずかしい思いは少ない方がいい。

会場では俺は目立っている、そらそうだろう

相手は中学生、俺は30過ぎのおっさんだ・・・

型の審査も無事に終え、昇段試合が始まった、各会場で初々しい掛け声が聞こえる。

基本初段昇段試験を受けるような大人は弱い、初心者だが
初段試験を受ける中学生は中学の中ではそこそこ強い存在、警察官になりたての柔道初心者の若者が
中学生に昇段試験でやられるという事はよくある。

だが俺は若手警察官をはるかに超えたおっさんだ・・・目立ってしょうがない・・

お互いに礼!ハジメ!

審判の掛け声と共に相手の子は組んでくる、うん、いい面構えだ、大人相手でも物おじしない、将来有望だ。

だがすまない・・俺も一回で終わらせたいからな・・・

足がそろった所を払いのける、  

1本!

相手の中学生は悔しそうな顔をしていた・・・ごめんね

次の子は大きいな・・・

うん楽しみだ!

お互いに礼!ハジメ!

うん中学生とは思えない力だ、この子も将来有望だ・・・ごめんな!

払い越しで1本。

次の子・・・人は・・おっさんだ・・・

俺と同じくらいか・・ひょろい・・・

昇段試験は体重別にならない残酷だ

お互いに礼!ハジメ!

このおっさんは、驚くほどに弱い・・力も弱いし・・・一生懸命なんだが

すまない・・・おっさん・・・

内股で1本!

俺は黒帯の資格を得た。

おっさんは残念そうな顔をしている・・・

初段証書をもらい、更衣室で着替える、先ほどのおっさんだ

「どうも、先ほど試合した者です」

俺はおっさんに話しかける

*「ああこれはどうも・・私は・・こういう者です・・」

おっさんは名刺を差し出す

山王寺中学校 教師

磯貝 誠

山王寺の先生だったのか、近所さんだ

「ああ私は旭岡の方で住んでる者です、息子は旭岡中なんですよ瀬能といいます。」

磯貝
「おお、そうですか、旭岡といえばサッカーが強いとこですね、確か瀬能君・・・瀬能君?あれ?」

「いや・・・まあ、いいでしょ・・・どうです?昼食一緒に」

磯貝
「いいですね・・是非」

彼は山王寺中学の先生で柔道部の顧問だそうだ・・しかし柔道経験は無く、せめて初段くらい取って子供達に教えようと昇段試験に通うが・・・全く勝てない・・と悩んでいた」

「スポーツは何かやってたんですか?」

磯貝
「いや・・科学部でした」

「そうっすか・・・しかし・偉いですね、子供の為に柔道始めるって」

磯貝
「最初はそうだったんですけどね、柔道は見るの大好きだったんですよ、昔から体が弱くて柔道はやりませんでしたが・・山下・斎藤・古賀・それに郷土の誇り田茂・・憧れたなあ・・・」

磯貝さんとの柔道談義は楽しかった、昼からお酒が入ってしまった、まあ昼なんで明日には残らないだろう。

磯貝
「最近の柔道人口ってわかりますか?」

「どれくらいなんでしよ?」

磯貝
「12万人です」

「それって少ないんですかね」

磯貝
「すくないですよ・・フランスなど50万人いるんですよ・・」

「それは、柔道の国の日本としては悲しいですね・・」

磯貝
「そうです・・だから希望を与える選手を育てたい・・けど・・育てる私が弱くてわ・・・・」

「お互い頑張りましょう・・・ね、中年柔道家でもいいじゃないですか」

磯貝
「そうですね・・こんなんなら私も学生時代柔道したかった・・・親が許してくれなくてね・・体が弱かったし」

「私は逆でしたよ・・・小さい時から柔道柔道の毎日で柔道から逃げてしまった・・」

磯貝
「うん?瀬能・・・・・もしかして瀬能大樹さん?」

「はい・・知ってるんですか私を」

磯貝
「知ってるも何も・・中学1年で全中総体を制した天才・・・瀬能大樹・・柔道好きなら・・特にこの地域の柔道家ならみんな知ってますよ・・・田茂さんの後継者だって言われてましたから・・・」

「お恥ずかしい・・」

磯貝
「瀬能さん・・・まだ30代!組んでわかりましたけど・・次元の違う強さ!・・・まだ遅くないですよ、目指しましょう金メダル!」

瀬能さんはよっているようだ・・・

「はいはい頑張りましょう」

次のオリンピッは来年、どうあがいても無理その次は5年後・・・もうアラフォーだ・・・

磯貝
「大丈夫れふよ・・瀬能しゃんなら・・・・く~」

磯貝さんは寝てしまった、コップ2杯で・・・この有様・・・責任もって連れて帰ろう・・・・

おっさんをおんぶするおっさん、まだ明るい駅では目立ってしまった・・・

今日一番恥ずかしかった・・・








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