小説にするには平坦な人生

親が離婚した話

小学生になってすぐの頃、入学式が終わって少ししたくらいの時。

祖父母が買ってくれた赤いランドセルに、交通安全と書かれた黄色いカバーをかけて元気に登校するピカピカの一年生。
早速友だちも出来て、これから勉強頑張れるだろうかと、期待と不安にで胸がいっぱいだった一年生。

私がそんな希望溢れる一年生になって間もなく。

両親が離婚した。

今思い返せば、前触れはあった。
時々喧嘩していた。
会話が減っていた。
たぶん、その頃からもうふたりの間に離婚の二文字はチラついていたんだろう。

祖父母に連れられ一緒に東京に行き一泊したあと、両親が合流しディズニーランドに連れて行ってくれたが、それが最後の家族旅行だった。
当時は何も知らずに純粋に楽しんでいた私だったが、少し大きくなって色々なことをわかり、たくさんのことを感じるようになった頃、祖父母と私が東京に行っている間に両親は話し合いで離婚を決めていたんだと気づいた。

その後まもなくして父は、家を出て行った。

当時住んでいた公団住宅の廊下。
入り口で泣きじゃくる私と無言の母に別れを告げ、部屋を出て廊下を歩く父が一度だけ振り返り、小さく私に手を振ったその姿を、私はいまだに忘れられずにいる。