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1.目が覚めたら
しおりを挟むあれから、しばらくして私は自分のベッドから起き上がった。
寝る前にあった痛みはなくなり、体が軽くなった気がする。今ならベッドの隣にあるタンスの上に乗れる気がするわ。
軽い気持ちでジャンプするとトンッと軽やかにタンスの上のれてしまった!
ビックリして声を出すと「ミッミャ!」と言う猫みたいな声。
恐る恐る、自分の体を見ると目に入ったのはふわふわと揺れる尻尾。
ふわふわと白く雪のような尻尾を目で追うと思わず手で叩いてしまう。
自分の手で叩いたのに目に映るのは、猫の手でビックリしすぎてタンスからガッタンっとひっくり落ちてしまう。しかし、スタンとちゃんと着地できた。
嫌な予感に毛が逆立つ。部屋の中にある鏡の前に立つと、そこには白いモフモフの綺麗な顔立ちの猫がいた。
鏡の前で手を動かすと、猫も手を動かし、
顔を動かすと猫も顔を動かす。
私はビックリしすぎて、フギャーっ!!と猫が尻尾を踏まれた時のような声を上げた。
私の声に反応したのか、廊下からドタドタと足音が聞こえた。
「サルビア!どうした?入るぞ」
勢いよくドアが開くと、ドアを開けた人物は「ねっ猫!!ぎゃっ」と小さく悲鳴を上げて顔を青くする。
なぜかと言うと彼、ルーカス・マリーナは猫アレルギーで涙とくしゃみが止まらなくなるのだ。
そして、彼はこの屋敷の主人で私のお兄様だ。
「サルビア?サルビアは何処だ?クシュっン
猫が何故ハックシュン!」
「ニャニャにゃ!!」
私は、手を胸に当て自分がサルビアだと伝えるが口から出るのはにゃっと言う猫語のみ。
お兄様が私をみて首を傾げるので伝わらないもどかしさに近くにあった本で爪を研いだ。ガリガリと本が見る影がなくなると少しスッキリした。
「も、もしかして、サルビアか?」
お兄様、何故そこで私と気がつく…。
「癇癪の起こし方が似ていたが、ま、まさかな私の可愛い天使が猫になるわけないよな…あははクシュっン」
頭を掻きながら、苦笑いするお兄様になんとか私と気付いてもらうために机の上にあるインクに手を入れ紙に不格好だが、『サルビア、私』と書いた。
「ん?サルビア?サルビアなのか!!!?」
私を二度見して、驚くお兄様にさらに紙に手で文字を書いていく。約一時間かけてこうなった経緯をお兄様に伝えると頭を抱えて泣き出してしまった。
「君の我儘を許してきた、僕への罰だ!!
もう二度と、君の笑顔も透き通る声も聞けないなんて!!私の天使が、一生猫で生活するなんて!!猫だったら近づけないじゃないか!!」
ちょっと待て、何故私は一生戻れないと思われてるんだ。
しかも、私への心配はゼロじゃないか。
『お兄様、わたしを愛してくれる人を見つけてくださる?』
「君を愛してくれるなんて、僕しかいないんじゃないか?でも、ごめんよ猫は恋愛対象には入らないんだ。」
『真面目にいってますの?引っ掻きますわよ?』
「ひっ!!ごめんよサルビア!でも、君の今までの悪行は知れ渡っているから、難しいと思うんだ。うーん」
顎に手を当てて悩み出したお兄様が、何かを閃いたようで目を輝かせた。
「僕の友達に猫好きな奴がいる!取り敢えずそいつに僕の天使を頼もう!」
「そうと決まれば!」と足早に兄が外へ走り出していった。
取り敢えず、置いていかれた苛立ちをこの紙を破いて落ち着かせることにしよう。
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