上 下
15 / 45

適当に歩き始める。

しおりを挟む
 僕らはしばらく黙ったまま並んで歩いた。たまに僕の手が彼女の手に触れ、その度に鼓動が速くなった。僕は平然を装った。僕は彼女の手を握りたいと思ったが、できなかった。
 しばらく歩くと知らない住宅街に着いた。向かい合った団地の間には一本の真っ直ぐな道があり、その真ん中には一定の間隔で大きな木が植えられていた。空を覆うほどに茂った葉が緑のアーケードを作っていた。
「こういう道って素敵よね。終わりがないみたいで。」
やはり彼女は意味深なことを言う。
「私の母はね、動物保護施設で働いているの。」
しおりを挟む

処理中です...